暴食の子

シロ。

文字の大きさ
7 / 8
第1章 再会

第7口 暴食《ベルゼビュート》。

しおりを挟む
 男に向かって歩き出すブラン。

「なんだ? やる気になったか?」

 男が楽しげにそう問う。
 そう言いながらブランの動きを警戒していると、突如として男の視界からブランの姿が消える。
 ──刹那、地面を蹴った轟音と共に、男の視界にブランの拳が迫り来る。


 速ッ───


 凄まじい轟音と共に、ブランの振りかぶった拳が男の顔面に直撃する。
 そのまま男の体は数m先まで吹き飛ばされる。

 吹き飛ばされた男はそのまま数秒の間 地面に倒れていると、そのままニヤリと笑い、軽やかな動きで起き上がる。
 そして男はブランの方を見て口を開く

「なるほど……それが暴食ベルゼビュートか……面白ぇな」

 その言葉に驚いた様にブランが答える。

「なんで……これも知ってるんだ 」

 男がそれを聞くとさらに楽しげに笑い答える。

「さぁ なんでだろうなぁ」


 その様子をジョーヌは驚愕した様子で見守る。そんなジョーヌに声をかけてくる者がいた。

「大丈夫!?」

 ジョーヌが声の主の方を見るとそこには、銃を手に持った1人の女性が居た。
 その女性の背にはスーロスが担がれて居た。

「スーロス!? 大丈夫なの?」

 ジョーヌが驚いたように問うとスーロスは疲れた声で答える。

「大丈夫じゃないですよぅ」

 スーロスはそう言って優しく笑い、続けて

「それより、ブランの方が大丈夫じゃないですよ」

 スーロスはそう言ってブランの方を見る。
 ジョーヌが何かに気づいたようにスーロスに問いかける。

「そういえば! さっきブランに噛まれたんだけどあれなんなの?」

「あぁ、あれはブランの才能 暴食ベルゼビュートだよ」
「人を食べると一時的に身体能力が上がる才能らしいですよ」

 スーロスがそう言うとジョーヌが納得したように答える。

「なるほどねぇ……」

 ジョーヌがそう言うとスーロスの事を背負っている女性が話し出す。

「あなた達、逃げるわよ」

 女性が冷静な声で2人にそう話しかける。
 ──だが、スーロスが少し申し訳なさそうに苦笑しながら答える。

「すみません……友達を置いては行けません。2人で行ってください」

 その言葉を聞いたジョーヌも頷くように答える。

「私も、仲間を置いては行けないわ」

 少し頬を赤く染めながらそう言う。
 そんな2人の様子を見て、諦めたかのように女性は話し出す。

「……分かったわ でも、あの子が負けたら私は2人を背負って逃げる、いい?」

 その問いに2人は無言で頷く。


    ◇◇◇


 時は少し遡り、男がブランの問いに答える。

「さぁ なんでだろうなぁ」

 楽しげに笑いながらそう答える。
 男はそのまま血で剣の様なものを作り、ブランに話し出す。

「今度は こっちから行くぞッ」

 男がそう言うと地面を蹴り、ブランの下に接近する。
 そして、血で出来た剣で切りかかる。
 ブランも刀を両手で持ち、その斬撃を迎え撃つ。

 斬撃を防がれた男はニヤリと笑い「血針ッ!」と叫ぶ。
 突如、地面から針が突き出す。
 ブランは針が突き刺さる前に地面を蹴り上げ、5m程の跳躍を見せる。

 男はブランが跳躍した方向に手を伸ばし「血槍!」
 と唱える。
 ブランの方に3本ほどの血で出来た槍が飛びかかる。
 それらの槍をブランは1本残らず剣で叩き折る。

 そのまま地面に着地したブランは、男の方へ勢いよく走り出す。
 そのまま、抜き身の刀を躊躇なく振るう。
 対する男も、血で出来た剣で向かい撃つ。
 双方の武器が交差し合い、力比べのように武器を押し付けあっていると、男が突如としてブランの腹を蹴り飛ばす。

「クッッ!」

 ブランが苦しみの表情を浮かべ、2m程後方に飛ばされる。

「ハァ……ハァ……」

 呼吸が荒くなっているブランが顔を上げると、男が血で出来た剣をとき、楽しそうにしている姿が見えた。
 男は笑顔を浮かべながら言う。

「いいねぇ……だが、その様子、体力の消耗が激しいんだろう? 殴り合いで蹴り付けよぅぜ」

 そう言いながら腕の先に血を集中させる。そして──

血闘戦線けっとうせんせんッ!」

 男がそうつぶやくと男の全身に血の文様のような物が浮かび上がる。

 ブランはその男の問いに答えるように刀を投げ捨て、呼吸を荒くし、シャワーを浴びた後の様に汗を滴らせながら拳を構える。

「じゃあ……行くぞ───」

 男がそう言うと同時に地面が砕ける轟音が轟く。
 そして、先程までとは比べ物にならないような速さで飛び出し、ブランの顔を目掛け、拳を振るう。
 それをブランは間一髪で避け、そのまま男の腹を目掛け拳を入れる。
その拳は、男の腹に直撃する──
 しかし、蹴りが直撃したハズの男は平然としてその場に佇んでいた。

 そのまま男がニヤリと笑い、ブランの顔を目掛け拳を振るう。
 ブランは瞬時に顔を覆うように左腕を前に出すが、男の拳が当たると同時に左腕は完全にへし折れ、折れた先からは骨が飛び出してしまっている。

「ッ!!」

 ブランは苦悶の表情を浮かべ、そのまま3m程後方に飛ばされる。

「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ」

 ブランの呼吸はさらに荒くなり、滝のように汗が吹き出している。

 男がさらに追撃をしようとすると、突如、別の場所から物音がする。

 男が警戒しながらそちらの方に視線をやると、そこにはスーロス達と両手で銃を持ち、構える女性の姿があった。

 女性はそのまま男目掛けて銃を発砲する。
 男は身を捻り、左腕を盾のように前に出す。
 女性が放った弾丸はそのまま男の左腕に着弾する。
 だが、着弾した左腕は血闘戦線の影響なのか、弾丸が少しめり込む程度でさほどダメージにはなっていなさそうである。

「チッ!!」

 それでもウザったいと言わんばかりに舌打ちし再び女性の方に目を向ける。

 ──だが、突如として前方から物音がしてそちらに振り向く。
 そこには、走りながら右腕で刀を拾い上げ、こちらを睨むブランの姿があった。
 彼はそのまま口を開けて

「あ"りがとうッ!!」

 喉に血が溜まっているのかガラガラの声になりながらそう叫ぶ。

 彼はそのまま男に向けて走り出し、刀を持った右腕を掲げるように上げ、男目掛けて振り下ろす。

 ──だが、振り下ろした右腕は難なく男に掴まれてしまう。
 そして、男は腕に力を込め、ブランの右腕を握り潰す。

「ッッ! ァアァアアァアア"ア"ア"」

 苦悶の表情を浮かべながらそう叫ぶ。
 ブランは叫びながら地面を強く蹴り、そのまま男の首元に食らいつき噛みちぎる。

「グゥッ……!」

 男は痛みに顔を歪ませながら、ブランのことを蹴り、引き剥がす。
 男は必死に首元に手を当てるが、噛みちぎられた首元からは血が滝のように流れ出てしまっている。
そして、先程まで男の体から舞っていたハズの花弁がいつの間にか消えている。

「がぼッ、がばぼぼぼ 」

 必死に何かを話そうとする男だが、血が喉に溢れ、まるで溺れているかのような声を出してしまっている。

 その様子を見た女性が男に向かって銃を構え狙いを定める。

 だが──
 突如として男の背後に軽く見積もっても100人は居るであろう才花人の群れが出現する。
 中でも中央に佇む1人の女性が目に留まる。
 その女性は白髪に赤眼で正に美しいという言葉が似合う様な人だった。
 体から10種類は有るであろう花弁が舞い、その綺麗な体を包み隠すように大量の花弁が舞っていた。その様相が、その女性の異質さを醸し出していた。


 だが、ブランにはその女性は見覚えがあった──


 今でも逢いたいと願い、夢に見るほど焦がれた、あの日、亡くなったはずの──

















「お母さん……?」





 その言葉にスーロス達3人は驚いたように声を出す。

「「 お母さん!?!? 」」


 そんな事はお構い無しに女性はブランの方を見て話し出す。

「ごめんね……私の仲間が迷惑をかけたわ」

 ブランは困惑の表情を浮かべ、「なん……で」と、
 1人で呟いている。

 女性はそのまま話し出す。

「ふふ、久しぶりに我が子の顔も見れたし、今日は帰るとするわ」

 女性はそう言ってブランの方を見るとスーロス達3人の方を見て、優しく笑いながら言う。

「ふふ、またね」

 そう女性が優しく言い、手を振る。

 そして───

空間転移くうかんてんい

 女性がそう言うと100人程居た才花人達は一斉に何処かへ消える。

 その場に取り残されたブランは疲れが溜まっていたのか、眠るように気絶してしまった。

「ブラン!?」

 ジョーヌとスーロスが驚き駆け寄る。

「ブラン? ブラン!?──」

 ブランを取り囲む様に2人が必死に声をかける──


    ◇◇◇



 巨大な建物の中に突如として100人程の才花人が出現する。

「よぅ アイツらの様子はどうだった?」

 先の女性にその様に声をかける男が居た。
 その男は黒髪に赤メッシュでやたらと筋肉質な風体をしていた。

「そんなに心配なら、貴方も来れば良かったじゃない? 海翔 」

 女性がそう言うと海翔は少し呆れて言う。

「俺が行ったらバレるだろーがよ……」

 海翔がそう言うと、先程まで戦っていた男が床に倒れ苦しそうに咳をする。

「ごぼッ、ごぼッ」

「あー……悪ぃ……もぅ無理だ……」

ブランの母親がそう言う男の方を向き、悲しそうに呟く。

「ありがとう お疲れ様」

その言葉を聞き、男は笑顔で口を開く。

「おぅ……先に"向こう"で待ってるわ……」

男はそう言ってそのまま目を閉じ、息を引き取った──



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

処理中です...