暴食の子

シロ。

文字の大きさ
6 / 8
第1章 再会

第6口 善戦。

しおりを挟む
 ブランが血を操る才花人に対面している最中、神喰隊も発生した異常事態の対応に追われていた。
 先程降り注いだ血槍の影響でほぼ全てのロボットが破壊されており、ロボットに内蔵されていたカメラも破壊され、試験会場の様子が分からなくなっていた。

「隊員!! まずは人命救助が優先だッ!! 1人でも多くの命を救い出せッ!」

 男は凄まじい剣幕で隊員に命令を下す。その命令を聞き、隊員たちは大急ぎで試験会場に赴く。
 そして男は独り言のように呟く。

「何がどうなってやがる、クソッ、隊長も副隊長もいない時に!」

 男がそうボヤくと、後ろから声をかける女がいた。

「状況を簡潔に説明して」

「試験会場が襲撃されたッ、生存者数が分からねぇ……」

 女の問いに男が荒々しく答えると、女は冷静な声で言う。

「なら、私も行くわ」

 彼女はそう言いながら部屋を後にするのだった。


  ◇◇◇


 「君がブランかな?」

 空から降ってきた男がこちらを向いてそう問いてくる。

「なんでッ……僕の名前を知ってるんですか?……」

 ブランが冷や汗を垂れ流しながら男にそう問う。
 その問いに、男は少し驚いた様子で答える。

「そうか……何も知らないんだもんなぁ」

 そう言うと男はニヤリと笑う。

「少し……遊んでやるよ」

 男が楽しげにそう言うと、徐にジョーヌが前に躍り出る。
 ジョーヌはブラン達の方を一瞥して言う。

「私が1秒でも時間を稼ぐからあんた達は逃げなさい!」

 ジョーヌが凄まじい剣幕で言うと、先程まで遠くにいた筈の男が、いつの間にか目の前まで迫り言う。

「逃げられちゃ困るんだけどなあ」

 男が座り込むブランを見下しながらそう呟く。
 男が呟くと、ジョーヌが男が目の前に居ることに気づき、思いっきり戦斧を男に向け、振りかぶる。
 男は降りかかる戦斧を片手で受け止めるとジョーヌの方を一瞥し言う。

「君はあんまり強くないなぁ……もぅ死んでいいよ」

 男がそう言うなり、ジョーヌに向け拳を振るう。
 その拳がジョーヌの顔に当たる直前──スーロスの蹴りによって弾かれる。

 拳を弾かれた男は嬉しそうに笑う。

「君は……少しはやれそうだな」

 男がそう言うとスーロスは冷や汗を垂れ流しながら口を開く。

「ジョーヌッ! 2人でやりますよッ!!」

 凄まじい剣幕でそう叫ぶスーロス。彼はそのまま手持ちの銃を男に向け撃ち放つ。
 男は目の前に血で出来た盾のような物を作り出すと、弾丸を難なく防ぐ。

「これが銃か……初めて受けたが中々の威力だな……」

 男が驚いた表情でそう呟く。

「やはり……銃は効きませんか……」

 暗い声でそう呟くスーロス、彼は銃が通用しないことを悟ると銃を地面に放り投げ、前に拳を構え戦闘態勢に入る。

「ハハッ いいねぇ面白い!」

 男はそう笑いながら言うとスーロスと似たような構えをとり、スーロスの行動を待ち構える。
 スーロスが男に向かい、走り出し攻撃を仕掛ける。拳を繰り出し、足を繰り出す。──だがその全ての攻撃は男によって難なく流される。

「まぁ 人間にしては良くやってるよ」

 少し退屈そうに男が言うとスーロスはニヤリと笑った。
 そして、男の両腕を掴むと突然叫び出す。

「ジョーヌッ!!」

「分かってるわよッ!」

 ジョーヌがそう答えると男の後ろから戦斧を縦に振りかぶる。
 ──だが、振りかぶった戦斧はあっさりと血の盾によって防がれる。

「だから無駄だって 」

 そう言いながらジョーヌの方に目を向ける。
 だがジョーヌは全く別の方向を見ていた。
 男が警戒するように其方に顔を振り向ける。そこには──
 先程、地面に放り投げられたはずのスーロスの銃を持ち、狙いを定めるブランの姿があった。

 (ッ!? まずいッ……血盾ちだてが間に合わないッ!)

 男はスーロスから無理やり片腕を引き離し、顔を隠すように腕で覆う。
 ブランが狙いを定め引き金を引く。
 銃から放たれた弾丸は男の腕に直撃し、腕を弾き飛ばす。

ッてェえぇえッ!!」

男は歪んだ表情でそう叫ぶ。
そんな男の様子を見て、スーロスが叫ぶ。

「今ですッ!!」

その声を聞いてブランとジョーヌが一斉に動き出す。
スーロスは顔に蹴りを。
ジョーヌは戦斧を振りかぶり。
ブランは銃を捨て、手持ちの刀に持ち替え、男に向け走り出す。

腕を抑え、苦悶の表情を浮かべている男は口を開く。

血針けっしんッ!!」

男がそう叫ぶと、突如として地面から血で出来た巨大な針が飛び出す。

ジョーヌは戦斧を盾にして防ぎ、ブランは距離が空いていたので避けることが出来た。
──しかし、スーロスの腕と脇腹の辺りに血針が突き刺さる。
スーロスは血を吐きながら驚愕の表情を浮かべる。
スーロスが視線を上げると怒りに満ちた表情をしながらこちらを睨む男の姿があった。

「痛ってえなァ!!」

男はそう言うと血針を解き、スーロスの事を思い切り蹴り飛ばす。
蹴られたスーロスはそのまま10数m吹き飛びそのまま大岩にめり込む。

「「スーロスッ!!」」

2人がそう叫び、ジョーヌが男の方を見ると男の腕と弾き飛ばされた方の腕が血で繋がり、再生されようとしていた。

「こんなの……誰が勝てんのよ……」

絶望の表情を浮かべ地面にへたり込むジョーヌ。

そのまま男はジョーヌの方に視線をやると腕の先を血で鋭利な形にし、そのままジョーヌの方へ向ける。

ジョーヌはそのまま諦めたかのように目を瞑る。


一方で、大岩まで吹き飛ばされたスーロスは必死に起き上がり思考を巡らせる。

(どうする!? "使うか"? いや、見殺しにしますかね……?)

そんな思考を巡らせているとジョーヌの目の前まで血で出来た手が迫る。
スーロスはその様子を見て「チッ!」と舌打ちをして口を開く。

「才──」

「才花ッ!!」

スーロスの声は別の者の声によってかき消された。

スーロスが驚き顔を上げると。
そこにはジョーヌの事をお姫様抱っこで抱き抱える、才能人になったブランの姿があった。

「ひゃっ」

ジョーヌは赤面し、情けない声まであげてしまっている。
そんなジョーヌにお構い無しにブランは口を開く。

「ごめんね……少し我慢してね」

そう言ってジョーヌの顔に顔を近づけるブラン。

(え!? 嘘! そんないきなり!? キ、キスなんて心の準備が!!)

顔を真っ赤にしながらそんなことを考えるジョーヌ。だが彼女の思惑は外れ、ブランは彼女の首元まで顔を近づけるとそのまま噛み付き、血を吸う。

痛みと驚きが混じったような表情をするジョーヌにブランは優しく語りかける。

「ごめんね……少し休んでて」

そう言って彼女を優しく地面に下ろすとすぐに振り返り男の方に顔を向ける。

男は嬉しそうに口を開く。

「なんだ? やる気になったか?」

そんな男とは対称的にブランは悲しそうな表情をしている。


ブランはそのまま男に向かって歩き出すのだった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

処理中です...