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黒尽くめは言った。言う事きかないと祓っちゃうぞ、と

じゅう!

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「はは、零君と奏ちゃんは仲良くやれそうだね。よかったよかった」

玄関の外で巫と雨は、零と奏の会話を見守っていた。笑顔の巫とは対照的に、雨は不機嫌だという事を隠そうともしない。

【はっ、よく言うわ。お前、最初から零を狙っとったんちゃうんか?】

「……なんでそう思うの?」

【最大の理由は狩眞を知っとった事や。あの時代から狩眞は祓い師を近づけんように幾重にも重ねに重ねた、厳重な結界と情報操作で祓い師としての狩眞を隠し護ってきた。それやのに、なんで祓い師のお前が、狩眞を知っとる?零の事も、ほんまは零を手中に収める事で狩眞を利用したかったんと違うんか?返答次第では、殺すぞ?】

「あははー、全く信用されてないねぇ。まぁ仕方ないかなーこの場合。僕にとっても今零君が食人鬼になる事は予想外だし。狩眞に近づきたかったのは否定しないよ。でも、君達を貶めるような目的じゃない事だけは信じてほしいな。それと、狩眞の事は祓い師は全く勘付いてないよ。全くもってね。僕が狩眞に近づきたかったのは、全くの私情。狩眞に、助けてほしいことがあるからだよ」

常人ならば腰が抜け立ち上がる事も儘ならぬような殺気を真正面から受けながら、飄々とした態度を巫は崩さない。

【…………ふん、零と契約している以上、とりあえずは信じたるわ。だけどな、現当主であるあいつの両親がお前をどう判断するかは知らんぞ。案内はしてやる。その後の事は自分でどうにかせぇ】

殺気を隠す事を遂にはしないまま、踵を返す。

「案内はしてくれるんだ。優しいね。つくづく凄いね狩眞は。僕でさえ見つけられない結界があるとは思わなかったよ」

【……狩眞を舐めるなよ。有象無象の祓い師とは志も、覚悟も違うんや】

「…………うん、有象無象っていうのも実力や覚悟もないのは認めるよ。だけどね、あんなクソ共と一緒にされるのは我慢ならないかな」

【はっ、よく言うわ。お前が信用出来るかどうか、これからたっぷり見たるわ】
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