女になった俺と、

六月 鵺

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魔法回路と代償

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赤き月の輝きが森に降り注ぐ中、ニヤニヤと嫌らしく笑う男が一人、眠るルーゲルに近づく。

【……地獄の侯爵とあろう者が、なんの用だ?】

頑なに口を閉ざしていた黒き狼が口を開き、男を睨みつける。

【マルコシアス、ですか。私は貴方ほどの魔獣が人間に懐く方が、不思議ですがねぇ?】

男は狼の威嚇を物ともせず、ただ微笑む。肩まで伸びた赤紫の髪。エメラルドグリーンに輝く瞳。非の打ち所がない整った顔立ち。全てが美しい。

【貴方こそなんの目的があって、その少年に近づくのです?彼の方の邪魔となるのならば、遠慮なく消させていただきますが?】

男は持っていた扇を広げ、狼に向ける。狼は立ち上がり、呻りながら牙を剥く。
その静寂を、驚きを隠さない切羽詰まった声が破った。

【な…お前、メフィストフェレス……!?】

【おや、ハイズではないですか。久方ぶりですねぇ。少年を心配して来たのですか?駄目じゃないですか。こんな狼を寄せつけるなど】

あくまで嫌らしい笑みを崩さぬまま、ハイズに笑いかける。

【あいつと私の利害は一致してる。だからルーゲルの傍にいさせてるんだ。敵じゃない。私にとっては、だけどな】

【そうですか。貴方がそう言うのなら、見逃すとしましょう】

ぱちんっと音をさせ、扇を閉じる。殺気は未だに消えてはいないが。

【それより、なぜお前がここにいる?ルーゲルをどうするつもりだ?】

ハイズは敵意を剥き出しにし、メフィストフェレスを睨む。

【ふふ、そんな怖い顔で睨まないでくださいよ。貴方と私の仲じゃないですか。貴方の堕天を、私が手伝ってあげたと言うのに】

【……それとこれとは別だ。質問に答えろ】

【ふふふ。ハンドミンの血の重要性は、知っているでしょう?天の血に連なる者に産ませた、悪の種。人の中で育まれた、悪の血。しかし、天の血とひとつとなることは叶いませんでした】

そして愛おしげにメフィストフェレスは、ルーゲルを見つめる。

【しかし、決して相入れぬリアゲートとハンドミンの血がこの子の中で一つとなったどころか、自ら種を芽吹かせてくれました。遠い昔の悲願が、やっと叶ったのですよ?ふふ。彼の方も、喜んでくれるでしょう。貴方も喜んでくださいよ。貴方が堕天した理由を忘れたのですか?ハンドミンの血を守るためでしょう?】

【…………】

【まぁいいでしょう。この子はいずれ、悪の血に従わざるを得なくなるのですから。悪の血に背くことは出来ないのです。必ず、私達の手を取る日が来ますよ。その時、貴方はどうするのか見物ですね】

風が吹く。その風に溶け込むように、メフィストフェレスの姿は消えた。
狼は静かに佇み、ハイズはただ、悔しげに唇を噛みしめる。
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