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魔法回路と代償
六
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「相変わらず、美味いなぁ」
アリサが帰って、一人で食べながら呟く。ぶっちゃけ母さんの料理より美味いし。
不器用だったから、よく焦がしたり調味料間違えたり、いろいろしたなぁ。母さんがいたら、こんな寂しい思いをせずに済んだのかな。
確かにここは居心地がいいし、ワンリアや他の魔獣達が世話を焼いてくれるから、孤独だと感じることはない。
でも、時々寂しくなる。傍に誰もいないのが。
ルーゲル・ハンドミン。それが俺の名前。
絶対ハンドミンの名を名乗るなと言われた。理由は分かるよ。けど名前だけが、俺と母さんを繋ぐものなのに。
俺はいつまで、偽りの名前でいなきゃならないんだろう。
回路を開いて魔法使いになれば、ハンドミンの名前を名乗れるようになるのかな。
……もう考えるのはよそう。窓の外を眺める。月が赤く色づいて、輝いてる。
魔獣達の、歓喜の雄叫びが森を揺らしてる。
マナは魔獣の命の源。それが際限なく溢れてるんだから、喜ばないはずがない。
俺も、そろそろ準備しよう。
♢♢♢♢♢♢♢♢
森の中心部、木々が開けた草むらの上で、月が登り切るのを待つ。右腕には、機嫌のいい魔道書〈リーガル・ランドベア〉。
ここまで機嫌がいいんだから、制限なく力を貸してくれるだろ。
いきなりガサッと音がして、音の方を見ると、
「お、お前か。どうした?」
黒くてデカい狼の魔獣が、俺を見つめて立ってる。上半身を起こして隣をぽんぽんとしたら、大人しく座った。
この狼は何を考えてるのか分からない。
喋れるほど知能も位も高い魔獣なのに、喋ってくれないから名前さえまだ知らない。だから勝手にアスって呼んでるけど。
撫でると、柔らかい毛並みが気持ちいい。
「俺さ、魔法回路開いて魔法使いになろうとしてるんだ」
なんで、こいつに喋ってるんだろ。答えなんて返ってこないのに。
空を眺めると、月が遂に真上に来た。
「さてっと……やるか」
立ち上がって、〈リーガル〉を開く。アスは、静かに俺を見つめてる。
その途端、俺の周りにマナが纏わりついてきた。〈リーガル〉が力を貸してくれてるみたいだ。
「――我、魔法回路を求める者、我が身に呪いを宿し、我に魔法を扱い回路を寄越せ。
我が身にマナを――――」
呪詩を唱え終わった途端、異様な感覚が膨れ上がって、身体を駆け巡る。
「うあ、あ……あああああああああ!!」
絶叫しながらのたうち回る。
痛い、熱い、痛い痛い痛い熱い痛い痛い熱い。
こんな苦しい思いをして、更に代償まで取られるなんて。しばらくのたうち回ってたら、やっと痛みと熱さが引きてきた。
苦しみの余韻のせいで、起き上がれない。相変わらず、アスはただ俺を見つめてる。
瞼が下がってくる。もうこのまま、眠っちゃおうか。
そのまま意識を手放した。
アリサが帰って、一人で食べながら呟く。ぶっちゃけ母さんの料理より美味いし。
不器用だったから、よく焦がしたり調味料間違えたり、いろいろしたなぁ。母さんがいたら、こんな寂しい思いをせずに済んだのかな。
確かにここは居心地がいいし、ワンリアや他の魔獣達が世話を焼いてくれるから、孤独だと感じることはない。
でも、時々寂しくなる。傍に誰もいないのが。
ルーゲル・ハンドミン。それが俺の名前。
絶対ハンドミンの名を名乗るなと言われた。理由は分かるよ。けど名前だけが、俺と母さんを繋ぐものなのに。
俺はいつまで、偽りの名前でいなきゃならないんだろう。
回路を開いて魔法使いになれば、ハンドミンの名前を名乗れるようになるのかな。
……もう考えるのはよそう。窓の外を眺める。月が赤く色づいて、輝いてる。
魔獣達の、歓喜の雄叫びが森を揺らしてる。
マナは魔獣の命の源。それが際限なく溢れてるんだから、喜ばないはずがない。
俺も、そろそろ準備しよう。
♢♢♢♢♢♢♢♢
森の中心部、木々が開けた草むらの上で、月が登り切るのを待つ。右腕には、機嫌のいい魔道書〈リーガル・ランドベア〉。
ここまで機嫌がいいんだから、制限なく力を貸してくれるだろ。
いきなりガサッと音がして、音の方を見ると、
「お、お前か。どうした?」
黒くてデカい狼の魔獣が、俺を見つめて立ってる。上半身を起こして隣をぽんぽんとしたら、大人しく座った。
この狼は何を考えてるのか分からない。
喋れるほど知能も位も高い魔獣なのに、喋ってくれないから名前さえまだ知らない。だから勝手にアスって呼んでるけど。
撫でると、柔らかい毛並みが気持ちいい。
「俺さ、魔法回路開いて魔法使いになろうとしてるんだ」
なんで、こいつに喋ってるんだろ。答えなんて返ってこないのに。
空を眺めると、月が遂に真上に来た。
「さてっと……やるか」
立ち上がって、〈リーガル〉を開く。アスは、静かに俺を見つめてる。
その途端、俺の周りにマナが纏わりついてきた。〈リーガル〉が力を貸してくれてるみたいだ。
「――我、魔法回路を求める者、我が身に呪いを宿し、我に魔法を扱い回路を寄越せ。
我が身にマナを――――」
呪詩を唱え終わった途端、異様な感覚が膨れ上がって、身体を駆け巡る。
「うあ、あ……あああああああああ!!」
絶叫しながらのたうち回る。
痛い、熱い、痛い痛い痛い熱い痛い痛い熱い。
こんな苦しい思いをして、更に代償まで取られるなんて。しばらくのたうち回ってたら、やっと痛みと熱さが引きてきた。
苦しみの余韻のせいで、起き上がれない。相変わらず、アスはただ俺を見つめてる。
瞼が下がってくる。もうこのまま、眠っちゃおうか。
そのまま意識を手放した。
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