女になった俺と、

六月 鵺

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魔法回路と代償

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ワンリアとしばらく話した後、明日必ず会おうと約束して、家に帰ってきた。

「あ、ルーゲルさんお帰りなさい。ご飯もうすぐ出来るので、たっぷり食べてくださいね!」

ドアを開けたら美味しそうな匂いと、アマネの侍女のアリサージュの元気な声が飛び込んできた。
そして、綺麗に肉を削がれた熊の毛皮。

「ありがとう。……てかアリサ、この熊って…」

「ああ、低級魔獣のくせに身の程を弁えずに襲ってきたんで、調理してやりました」

「そっか……。相変わらずすごい怪力だな」

魔法を使わず怪力だけで魔獣をぶっ倒すんだから、その細い身体のどこに、そんな怪力が眠ってるんだと不思議になる。

「力だけは誰にも負けませんよ!それに精霊様が守ってくれるので、魔法使いにも簡単に負けるつもりはないですから!」

アリサはディンディアナ一の戦闘部族の末裔で、古くから精霊を祀り、その精霊の厚い加護を受けている貴重な部族の出身だ。

「いつもありがとう。でも、こんなしょっちゅう来て、ホントに大丈夫なのか?」

「大丈夫ですよ~。私には精霊様がいますから。それに、私はアマネ様の侍女ですよ?あんないけ好かない威張り腐ったクソ兄やクソ姉や愛人共が私に手出し出来ると、私が負けるとお思いですか?」

笑顔でリアゲートの関係者を言葉でぶった斬るアリサ。笑顔は可愛いけど、敵には絶対回したくない相手だ。

「それで、あの……ルーゲルさん…」

「何?」

眩しいくらいニコニコと笑ってたのに、伏せ目がちに少し小さな声で訊いてくる。

「あの……ホントに魔法回路を開くつもりなんですか?」

「……うん。今日の夜、開くつもりだよ。今日しかチャンスはないんだ。これを逃したら、もう二度とチャンスはないし、アマネと会うことも出来なくなる。安全なんていらないんだ。俺は、アマネと一緒にいたい」

「お二人の気持ちは分かってますよ。お二人が結ばれたら、それ以上嬉しいことはないです。でも、代償のこともありますし……」

アリサの心配してくれる気持ちは分かる。誰よりも思いやりの強いアリサが、不安にならないなんてあり得ないことくらい分かってる。

「絶対大丈夫だなんて言えないけど、でも、代償如きで死ぬ訳にはいかないんだ。意地でも忘れないし、魔法使いになって、アマネのところに行く。だから、アマネと一緒に待っててくれ」

「そう……ですよね!大丈夫ですよね!なんだか私、ルーゲルさんが魔法使いになったら、手の届かない遠くに行っちゃうような気がして…。アマネ様でさえ届かない遠くに……」

今にも泣きそうな顔をして言う。
精霊に何か、よくない未来を告げられたのか?

「俺がアマネを置いてどこかに行くはずないだろ?」

「そうですよね!私ったら何言っちゃってんでしょう!」

「アマネにはまだ、秘密にしといてくれ。絶対反対するに決まってるから」

「分かってますよ~。侍女が主に隠し事なんて、本来は侍女失格ですけど。さっ、ご飯出来たんで、たーんと召し上がってください!グラタンとデザートにアップルパイ、そして日ノ本の国の料理、いもぼうです!」

「……いもぼう?」

日ノ本の国は何かの本で書かれたのを覚えてるけど、なんだいもぼうって。

「キョウトという土地にしかない料理みたいですよ?すっごい手間かかりましたけど。後はスシとかトンジルとかナラヅケとか、いろいろ聴いたので、また作りますね!」
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