to be Continued  ~ここはゲームか異世界か~

秋乃ヒダマリ

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1章 秋山とソレガシ

プロローグ2

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 ――ヤバい、このままだと死ぬ!!



 早朝五時を回ったころ、青年――秋山あきやまいちは、かれこれ一時間近く目の前の敵との戦闘を続けていた。

 そして今まさに、秋山は死ぬ直前であった。


 ――クソッ! 躱しきれない!!

 とっさにガードのコマンドを連打する。
 敵――カムイと言う名の天狗に似た人型モンスターは待ってなどくれない。

 無慈悲にも繰り出されたカムイの攻撃は、何ともチート級な貫通全属性レーザー。寸でのところでガードはしたものの、秋山のHPは半分ほど持っていかれてしまった。


 ――ふぅ、危なかった。あれは反則だろ……


 幸いにも、カムイはレーザーの反動か、クールタイムの為か牽制攻撃のみで脅威となる攻撃は、今のところ仕掛けてくる様子はない。
 HP三割を切った時に起こる行動パターンの変化と高火力攻撃――おそらくは、あのチートレーザーで仕留めることを前提とした作りなのだろう。
 実際、初見殺しもいいところな速度と威力で、反射神経に自信のある秋山ですらガードするのが精一杯だった。……いや、ガードできたのも半分マグレだった。



 ――いま、プレイしているのは《ゼノシスストーリーオンラインⅡ》通称ゼノストと言うPC専用MMORPG、秋山はこのゲームの配信当初からのプレイヤーであり、現在は世界ランク四位の実力者だった。
 ランキングは毎月、討伐数と貢献度ポイント、総合ステータス値で決まる。ランキング上位の二十位以降は入れ替わりが激しかったが、十位から二十位ともなれば、多少の前後はあるものの顔ぶれは安定していた。
 当然だが、ランキング十位以内に入っている所謂いわゆるランカーと呼ばれる上位者は、装備もさる事ながら、技術的にも圧倒的な強さを持ち、余程の事がない限りランキングの前後すらも無い。
 特に、秋山を含む上位五人に関しては、ここ三年間一度もランキングは変わっていない。まぁ、それ程に戦力の差は大きいという事だ。


 そして、今日はゼノストプレイヤー数《二千万人突破記念》のアップデートの日。
 今回のアップデートではレベルキャップ解放や新装備実装など、様々なイベントが追加されていた。
 中でも秋山が最も注目したイベントが、今回から導入された、毎月一度ランキング上位四十位限定で配布される事になった、《特別ボス出現チケット》だった。
 新ボスで、しかも月に一度きりしか挑戦できないこのイベント。通常ならば攻略情報が出回るまでに解放されたレベルを上げて、ボスのギミック情報を元に装備を整えてから挑むのが定石なのだが、今回のような上位四十人限定で月に一度しか挑戦出来ないとなると、解析が出回らない可能性が高い。
 なにせ、上位ランカーにとって情報は生命線だ、そう易々とライバルに情報を与えたりはしないだろう。

 それに――

 秋山の狙いは別にあった。





 ――《初回討伐者限定報酬》


 大きなイベント、それも上位ランカー限定ボスのドロップ品ともなると、その価値は凄まじい。
そんなボスの初回討伐限定報酬なら言わずもがな、だ。
 恐らく、常連の上位ランカーの殆どが、今を持って秋山の狙いと同じくボスに挑んでいるだろう。
 そんなこんなで、秋山も事前にボスのギミックを予想し準備を行い、メンテナンス終了と共に特別ボス、《カムイ》に挑んでいたのだ。そして今に至る――




 レーザーを寸でのところでガードしたものの、秋山の残りのHPは一割を切っていた。
 持ってきた回復ポーションも既に底を尽きていた。
 このまま攻撃を躱し続けても、次の周期のレーザー確実に死ぬだろう。 しかし、今の秋山には次の攻撃までに、カムイを倒せるほどの技も力もない。おまけに、唯一残っている武器の刀も耐久値は残りわずか――
 対するカムイのHP残量は二割強といったところ、……勝負を賭けるなら此処しかない。


 ――“アレ”を……使ってみる……か?


 “アレ”は、つい先日ひょんなことから入手した見たことも、聞いた事も無い、使いきりのアイテム。
 切り札……と呼べる物なのかすら解らない謎のアイテム。射程範囲が短く、使うことはないとインベントリに死蔵していたアイテム。

 新発見の貴重なアイテムなので少し勿体無い気もするが、なりふり構っては居られない程に秋山は既に手詰まりなのだ。……なにより――


 ゲーマーとして、少しでも可能性があるのなら、やらずにはいられない‼


 カムイから放たれた電撃を躱し、武器を構えて――秋山は全速力でカムイに向かって走り出した。


 二十メートル――カムイの周囲に風が吹き荒れた、と同時に、土魔法で形成された岩を風魔法で加速させた弾丸が秋山に襲い掛かる。秋山は持ち前の反射神経で、速度を落とすことなく刀で左右に捌く。

 十五メートル――即座に放たれた炎と氷の矢の一本が秋山の左頬を掠めたが、大したダメージはなく、構わず走り続ける。


 十メートル…ビュンッ……九メートル……八…――

 秋山は、インベントリから取り出した黒い球体のアイテムを構える。
 “アレ”――《刻》という名の謎アイテム。レア度Ⅴ、《一定時間、時を止めることが出来る》
という何ともチート臭いアイテムなのだが、射程距離が二メートルしかなく、肝心の時間表記が存在しない、いくら調べても情報が全く見つからなかった使い物になるかどうかも解らない未知のアイテムを――


 七……六…ザザァーッ…五メートル――



 ――四…あと少し……ここだ!!


 遂に、射程範囲にカムイを捉えた。


 一拍の間も置くことなくアイテムを発動する。刹那――

 画面が……視界が黒く染まり、文字が現れた。





 ――“Toトゥー Beヴィー Continuedコンティニュー#”



 「……はぁ?」


 その言葉を理解する前に、秋山の意識はその場から

 消えた…――

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