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宵闇あやかし草紙
宵闇あやかし草紙(03) “あやかし”とは、ひとに非ざるモノである
しおりを挟む日ノ本の律令格式に描かれた法に従うと、あやかしを母とすればあやかしであり、人を母とすれば人と定められておりました。
綾姫様は、あやかしの血を宿す、嵯峨源氏源融が流れ、渡辺綱の末裔であります。
先の上皇様の皇女であり、八十島の祭祀で神々に舞を納め、浪花宮斎様の娘でもあります。綾姫様は、やんごとなき血筋でもあり、浪花の渡辺荘官家の頭領、渡辺綱の直系、五位の武家である渡辺家当主との間に生まれました。綾姫様は、紛れもなく人として、この世に生まれたのです。
しかしながら、蒼い肌に鱗紋が浮かび、薄い蒼の長い髪、金色の縦に割れた瞳、ボンと大きな胸乳《おっぱい》に薄紫の乳首、キュッと絞り上げた腰、ボンっと蒼い桃尻な妖艶な女性であるために、人としてではなくあやかしとして扱われ、不遇な幼少期を過ごしていました。本性としての姿が、人のように見えるけれど、蒼い肌に鱗紋が浮かび、金色の縦に割れた瞳を持つ妖艶な女性に育ってしまった綾姫様は、法的に人という形でしたが、なかなかに難しい立場でありました。
日ノ本では、神話伝承の時代、女系社会の末子相続であり、親族で末子を大切に祀ることが、一族隆盛の証でありました。しかしながら、大陸より長子相続の流れが伝わり、男系男子を相続対象としたことが固まってしまったのは、光明子皇后が、皇族に迎えられながら、女東宮となった孝謙帝に、配偶者を見つけられなかったことにあります。道鏡という配偶者を見つけられ、皇族にしようとして反対され、一族郎党すべてが“ひとあらざるもの”として帝に捧げ、支える一族となったのです。
結果として、日ノ本では、長子相続に代わったけれど、男女には関係なく相続することは可能でした。
つまり綾姫様は、渡辺綱の本家長女として、亡くなった父渡辺充の後を継いで、渡辺綾として継承するはずでしたが、あまりにも強くあやかしの色が強く出たために、渡辺綾は霊代として継承し、弟達の中から次代の渡辺当主を決める立場になったのです。
そんな綾姫様が、一寸法師と出逢い、三日三晩を一代として愛し合って、契り盃として三々九度の盃を交わして、婚姻の契りとします。京洛に船で浪花から遡上して、京洛の検非違使となった綾姫様と一緒に、京洛に溢れる瘴気に喰われた、魔物を退治するのを仕事とします。
京洛での瘴気に喰われた、魔物退治をしていくなかで、一寸は生気と瘴気を喰らって化生することで、五尺の姿に成長することができるようになりました。
五尺に成長した一寸が、六尺の綾姫様と愛し合うと、一晩で元の一寸法師姿に戻ってしまいました。
「すまぬな一寸、妾が、喰らってしまったようじゃ」
「良い、この姿でないと、綾から貰った打刀が、差せぬからな」
元の一寸に戻った一寸は、綾姫様に笑って腰に差した、打刀の柄を軽く叩いた。
綾姫様が佩くのは、嵯峨源氏の宝で、一条戻り橋で茨木童子の腕を斬った、鬼斬りの太刀にして天下五剣の大業物“童子斬安綱”であり、一寸が腰に差す打刀は、住吉の刀鍛冶、渡辺綱の妻となった茨木童子の一族、一角が鍛えた、大業物でありました。
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