宵闇百鬼夜行・・・心得の上・・・

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宵闇あやかし草紙

宵闇あやかし草紙(02) 千年白狐“|葛葉《くずのは》”

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宵闇あやかし草紙(2) 千年白狐“葛葉くずのは
 安倍晴明が母親として知られる、大妖怪あやかし、白狐の葛葉様は、和銅元年708年に創建された信太稲荷の神眷属しんしです。和泉のやしろであり、熊野街道沿いに建てられた稲荷社は、神功帝が行幸された府社を含めて、浪花宮の管轄となりました。

 葛葉の物語は、昔話というだけでなく、平安期に良く知られた恋物語でありました。1699年歌舞伎「しのだづま」で、葛葉という名が刻まれました。

 和泉の国、信太の杜でのこと。妻の病気を治すため、石川悪右衛門は、野狐の生き肝を得ようと、信太の杜で狐狩りをしていた。霊験あらたかな白狐を射って、捕えようとしたが、逃げられた石川悪右衛門は、妻の病を治すために、必死で追いかけていた。逃げ出した白狐は、信太明神にお参りに来た、安倍保名に救われて、逃げることができた。

 白狐を逃がしたことを、罪に問われて、悪右衛門が保名を斬ろうとした時、悪右衛門の檀家の和尚が訪れて、殺生を咎めて保名を助けた。この檀家の和尚は、逃げ出した白狐の化生けしょうした姿であり、本生ほんしょうである白狐に戻り、保名を逃がしたのであった。白狐に気に入られた保名は、女性に化生した白狐の葛葉を、三日三晩愛して一代ひとよを過ごして「契り盃」を交わして、夫婦めおととなった。

 二人の間に、子供が生まれて、童子丸と名付けられた、この者のちの安倍晴明である。

 童子丸が七つの時、葛葉は、女性の化生けしょうを童子丸に破られ、本生ほんしょうとなって別れることとなった。人を母とすれば人、あやかしひとあらざるものを母とすればあやかしひとあらざるものは、天朝様の定めた法であった。
 あやかしひとあらざるものは人では無い故、父の後を継ぐことができないが、童子丸は長じて、父の後を継いで安倍晴明を名乗り、陰陽寮の博士となり、陰陽師として朝廷に仕えることとなった。

 宵闇の葛葉は、時を経て、清和源氏の頭領となった源頼光が検非違使となり、嵯峨源氏の頭領源綱と一緒に、大江山の鬼退治に向かうこととなる。“祀ろわぬ民”丹波の国、かつて大丹波を治めた丹の国ニのくにが主、大江山の酒呑童子は、御首みしるしを綱に斬られて、丹の国ニのくに最後の隠れ里と共に、滅びることとなった。

 京洛で嵯峨源氏の頭領源綱は、葛葉を妻に迎えて、上町台地の北端、摂津の国渡辺荘に居を構えることとなる。

 渡辺綱の正妻となった葛葉は、五位鷺を神眷属しんしとする坐摩いかすり神社に、客分として入ることとなる。上町台地は、神功帝の御代から、浪花宮が築かれて、即位の際に八十島の祭祀を司る、生國魂神社があり、三韓征伐の軍を発した、住吉湊には住吉大社が築かれていた。

 葛葉は、稲荷大社の白面金毛九尾妖狐、玉藻御前と共に、日ノ本の稲荷社いなりに棲まう神眷属しんしとして知られるようになる。一つの巨大な白い尾をした、白狐が葛葉御前であり、九尾の金毛白面妖狐が玉藻御前である。平安末期には、京洛だけでなく、全国各地に御狐燈篭勧請によって、神眷属しんしが派遣されて湯女狐となり、杜湯御厨もりのゆみくりやと呼ばれて、一回六文銭で入れる銭湯が広がっていった。

 戦国の世を駆け抜ける中、上町台地の北端渡辺荘は、三好長慶と共に畿内を制覇し、一つの時代を築く。されど、歴史の流れに夢と消え、長慶の遺児三好義興を護って、京洛を征した織田信長との戦によって、渡辺荘は灰燼に帰した。渡辺荘は浪花宮の東に、坐摩いかすり神社と共に再建され、義興が遺児夢丸と共に葛葉が移り住んだ。

 浪花宮と再建された坐摩いかすり神社は、織豊時代を駆け抜け、21世紀となった世に伝わる神話伝承の社として知られるようになった。

 日ノ本のやしろは、調べるに能わずあたわずと伝承され、多くのやしろが、古代いにしえの風景を残して、現代に伝えられる。
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