24 / 24
歴史記述「欧州宵闇史」
欧州宵闇史03 霊法の都、コンスタンティヌス
しおりを挟む初期のキリスト教は、様々な既存宗教が組み入れられて、様々な分派が生まれていた。
日ノ本に天平期に伝わった最初のキリスト教は、ネストリウス派の景教であり、ゾロアスター教やマニ教と共に、日ノ本に伝わったとされる。マタイによる福音書の「山上の垂訓」の漢訳書「世尊布施論」が、本願寺に所蔵されていて、唐で流行していた教義は、当時命懸けで留学して学んだ僧侶たちに、影響があったことは確かである。
キリスト教が問題となるのは、異端を許容できず、排斥する流れである。これは、国教という形で、統治システムと宗教が一体化した結果である。
ローマ帝国の初期は、キリスト教を排斥する側であり、殉教者を多く出した時代を経て、ローマ帝国が分裂し、混乱の時代を経て、コンスタンティヌス1世(在位306年-337年)がキリスト教を許容としたことに遡る。カトリックでは、コンスタンティヌス1世(在位306年-337年)がキリスト教を国教にしたように描かれるが、許容したまでであったとも言われる。
「哲理の流れとして、唯一の“真理”が存在し、思惟が分派する」
この考え方は、プラトンの「実在するのはイデアのみ」という考え方から、「イデア≒神」という考え方であり、万物と森羅万象は、イデアの現身に過ぎないとする流れであった。
日ノ本における天之御中主神から高皇産霊尊と神皇産霊尊という造化三神とする考え方もまた、「実在するのはイデア」から、八百万神々として森羅万象が派生する流れともなる。
様々な教義が許容された、コンスタンティヌスの時代から、ユリアヌス帝の時代には、非常に多くの宗教がコンスタンティヌスに集まっていた。ユリアヌス帝以降は、多くの宗教や宗派が、都市に同居することとなり、皇帝は偉大なる調停者の立場となった。
ましてキリスト教は、非常に多くの伝道者によって伝わり、様々に変化していった宗教であり、宗派そのものが多かったのは事実である。
皇帝が、偉大なる調停者として確立され、宗教間での対立が激化し、武力闘争になることを防ぐため、平等なる立場での対応が求められるようになった。歴代の東ローマ皇帝は、宗教的な寛容性から、平等を掲げることとなり、宗教的な中立を守る立場となった。宗教は、皇帝に「従う」限り、認められる形となったのである。
ローマ帝国は、分裂と崩壊の中で、権威の確立を図り、皇帝は偉大なる調停者として、審問者となったのである。ローマでは、皇帝に「従う」宗教であるか、「従わない」宗教であるかによって、追放処分を受ける形となった。
西ローマ帝国は、他宗教を組み入れていく形で、「哲理の流れとして、唯一の“真理”が存在し、思惟が分派する」中で、教皇の地位となり、正義の審問官の立場となった。本来は、全ての宗教を総括する立場であったが、西ローマ帝国は、徐々にキリスト教に偏るようになっていったのである。西ローマ帝国内では、霊法の研究が、様々な戦乱と疫病の蔓延で失われていった。コンスタンティヌスの霊峰研究についても、十字軍の略奪を受けた1204年に多くが散逸し、1261年による東ローマ帝国の奪回以降に再興されたが、経済力の低迷した東ローマ帝国では、研究は大きく後退したのであった。
「実在するのはイデアのみ」という起点から、宗教の比較研究が進み、実在する「唯一神」を起点として、様々な神々が生まれたとする考え方が、コンスタンティヌス帝の頃に生まれ、ユリアヌス帝の時代には、大きく浸透していったのである。「至高なる神」を頂天として、マリアや聖人を神々と称える形で習合し、正教会の在り方が確立していったのである。
「霊気」を探求対象として、キリスト教だけでなく、多くの宗教組織が探求の為に研究機関を構築したのである。しかしながら、ローマ帝国の分裂と崩壊の中で、コンスタンティヌスの霊法研究機関は、12世紀まで生き残ることとなる。
ローマ帝国が分裂と崩壊していく中で、東ローマ帝国は、コンスタンティヌスを都として、東欧から東地中海沿岸を勢力圏として維持していたのである。ペルシャとの戦いによって、大きく勢力圏の影響を受けるが、コンスタンティヌスを千年以上護り抜き、千年帝国としての礎を築いた。コンスタンティノープルのキリスト教会は、東ローマ帝国最大の宗派であり、正教会の地位を誇っていた。
1452年に始まった、イスラム国家オスマン帝国の侵攻を受け、2年に及ぶ攻防戦でコンスタンティノープルが陥落し、東ローマ帝国が滅亡した。1453年以降は、オスマン帝国皇帝が偉大なる調停者となって君臨したのである。霊法研究機関は、そのままオスマントルコに引き継がれ、イスラムの科学・技術を発展させていくことになる。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます
なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。
だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。
……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。
これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
1つだけ何でも望んで良いと言われたので、即答で答えました
竹桜
ファンタジー
誰にでもある憧れを抱いていた男は最後にただ見捨てられないというだけで人助けをした。
その結果、男は神らしき存在に何でも1つだけ望んでから異世界に転生することになったのだ。
男は即答で答え、異世界で竜騎兵となる。
自らの憧れを叶える為に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる