琉球お爺いの綺談

Ittoh

文字の大きさ
242 / 525
宵闇胡蝶綺譚:はじまりの転生者 渡辺綱

宵闇胡蝶綺譚:はじまりの転生者 渡辺綱 理《ことわり》、知識チートは、現実の技術に悩む

しおりを挟む

 ことわり

「郷に入りては、郷に従え。だな」

 白漆喰ローマンコンクリートの作り方は、北宋から来た船が修理に使ってたのを見て、水夫から教わった。羅馬ローマに生まれた、白漆喰ローマンコンクリートの製法は、宋から日ノ本へ伝わった。船には、羅針盤も付けられていた。

 難波の港に訪れる、宋船には、国を逃れた者も居て、そのまま難波に住み着く者も多かったのである。大型船を使って、瀬戸内から集まる荷を、難波に届けるだけでも、かなりの収益であった。石灰や貝殻だけでなく、米や海産物の多くが、難波に集まっていたのである。

  白漆喰ローマンコンクリートが、造られなくなったのは、石灰岩や貝殻を1000度の高温で焼き上げる燃料確保ができなくなった結果と言われます。日本で白漆喰ローマンコンクリートを普通に作っても、焼くのに必要な炭の確保で四苦八苦することになります。鬼火の力を使い、高温での焼き上げを可能にすることで、白漆喰ローマンコンクリートは、日本で実用化できます。貝殻を砕き、鬼火の窯で焚き、生石灰から消石灰を作り、白漆喰ローマンコンクリートで固められたブロックで、木津川に堰を築くことで、難波港に砂を流入させず、水門を潮汐に合わせることで、水深を保てるように工夫したのである。

 露天神社の南には、晴明を含めた陰陽寮を出て、天文方として高楼を築いて、天文観測や川筋の調査を行なって、潮汐や季節、河川管理用に地図の作成を進めたのである。高楼には、鐘付堂が建てられ、太陽が南天に達した時、午前と午後を分ける、昼に鐘を九つ鳴らしたのである。夜明け前に、六つの鐘を鳴らし、日暮れ後にも六つの鐘を鳴らした。
 練り香の燃える時間が一定であることを利用して、時香盤と練香が作られていて、1日を計時していたのである。

「どうした綱。時香盤が珍しいかや」

「葛葉は、知ってたの」

「昔、大和におった頃は、良く主上が作らせておった」

「最近は、使わないのかな」

「夜が明けて働きに出て、日暮れに帰って休む。あまり、人は時を気にせぬからの」

「田植えとかは、季節の行事だよね、葛葉」

「そうじゃな。季節は、日の長さによる故、暦とは合わぬ。晴明も苦労しておった」

「だから、季節候は、暦とは違うんだ」

「暦に加えて、季節候を記すのは、陰陽師の仕事じゃ」

「でも葛葉、季節って、場所によって、結構ズレるよね」

「冬至、春分、夏至、秋分が合えば、それぞれの土地に合わせるのは、各地の社が務めじゃぞ、綱。占って、祭事を決めねばならぬ、それも司の仕事じゃ。日ノ本は、広すぎて、統一などできぬからの。わらはは、日時計ひどけいの方が、楽じゃのう」

「それが、祀り事なんだ」

「ほほほ、綱とて、条苗を入れて、稲の収穫を増やしたではないか」

「俺のは、夢で見たやり方を、伝えただけだよ」

「それでも、皆は、そなたに感謝しておるぞ」

 大規模な治水事業を進めて、墾田を拓いて、米の量産を進めながら、畑を拓いて粟や稗だけでなく、大豆や里芋などの生産も始めていた。天王寺で行なっていた、薬樹園から、生姜やヨモギといった薬樹になるモノも、作り始めたのである。薬樹についても、七草粥のように、薬樹や鍼灸が、医心方は、主上に奉納されたが、薬樹や鍼灸は、伽話の形で世に広まっていた。

 また、和泉の浜で、塩の量産ができたことで、醤油や味噌も作れるようになり、食卓の幅も広がっていったのである。

 絵巻物は、貴族の娯楽であったが、「日本霊異記」に始まる民間伝承は、様々な噺を組み入れて、広がって後に「今昔物語」と纏められていったのである。

 綱は、広がっていた、様々なお伽噺を、版木に起こして、刷って草紙にしては、最初は寺社に売っていた。寺では孤児や浮浪者を集めて、子供には読み書き算を教えて、浮浪者には、港湾荷役や川筋モノとして、働かせていったのである。

 読み書き算を学んだ後は、町役や商売を始めて、算額に秀でる者は、天文方の大学寮へ入って、船長や水先として、日ノ本を巡る、廻船に載せたのである。渡辺党が、大きく広がったのは、廻船で各地の港に住み着くようになったからである。

 十年もすると、様々な絵草紙も生まれて、版木を何枚か使った多色刷りも、始まっていたのである。寺だけでなく、商家や武家でも、買う者が増えていったのである。

「そういえば、綱。この前、大陸の話を書いていたの」

「夢で見た話で、一番好きだったから、書き留めたんだ。葛葉」

「水の滸りの噺は、大陸のことじゃな。売れておるそうじゃな」

「例え、悪臣はびころうと、渡辺党は、主上に尽くす、そんな武家でいたいからな」

「難波が、噺に出てくる、梁山泊かや」

「悪臣に従わぬが、主上には叛かぬ。そんな、漢達を描いた本だよ」

「渡辺党は、梁山泊のように、滅ばぬであろうの、綱」

「渡辺党は、勅命以外で、戦はせぬ。多田源氏、頼光様の惣官家。日ノ本各地に広がった渡辺党は、根が残れば、渡辺党は消えないよ。葛葉」

 大川や淀川を使った、京洛への荷役を請け負い、瀬戸内の荷の流れを、難波港に集約する渡辺党は、莫大な利益を上げていた。難波御厨は、河内の大江御厨と共に、主上に寄進された財源であった。

 廻船を用いて、北は蝦夷、南は琉球、東は伊豆大島、西は大陸と、各地に水運を拓いていったのである。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...