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宵闇胡蝶綺譚:はじまりの転生者 渡辺綱
宵闇胡蝶綺譚:はじまりの転生者 渡辺綱 理《ことわり》、知識チートは、現実の技術に悩む
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「郷に入りては、郷に従え。だな」
白漆喰の作り方は、北宋から来た船が修理に使ってたのを見て、水夫から教わった。羅馬に生まれた、白漆喰の製法は、宋から日ノ本へ伝わった。船には、羅針盤も付けられていた。
難波の港に訪れる、宋船には、国を逃れた者も居て、そのまま難波に住み着く者も多かったのである。大型船を使って、瀬戸内から集まる荷を、難波に届けるだけでも、かなりの収益であった。石灰や貝殻だけでなく、米や海産物の多くが、難波に集まっていたのである。
白漆喰が、造られなくなったのは、石灰岩や貝殻を1000度の高温で焼き上げる燃料確保ができなくなった結果と言われます。日本で白漆喰を普通に作っても、焼くのに必要な炭の確保で四苦八苦することになります。鬼火の力を使い、高温での焼き上げを可能にすることで、白漆喰は、日本で実用化できます。貝殻を砕き、鬼火の窯で焚き、生石灰から消石灰を作り、白漆喰で固められたブロックで、木津川に堰を築くことで、難波港に砂を流入させず、水門を潮汐に合わせることで、水深を保てるように工夫したのである。
露天神社の南には、晴明を含めた陰陽寮を出て、天文方として高楼を築いて、天文観測や川筋の調査を行なって、潮汐や季節、河川管理用に地図の作成を進めたのである。高楼には、鐘付堂が建てられ、太陽が南天に達した時、午前と午後を分ける、昼に鐘を九つ鳴らしたのである。夜明け前に、六つの鐘を鳴らし、日暮れ後にも六つの鐘を鳴らした。
練り香の燃える時間が一定であることを利用して、時香盤と練香が作られていて、1日を計時していたのである。
「どうした綱。時香盤が珍しいかや」
「葛葉は、知ってたの」
「昔、大和におった頃は、良く主上が作らせておった」
「最近は、使わないのかな」
「夜が明けて働きに出て、日暮れに帰って休む。あまり、人は時を気にせぬからの」
「田植えとかは、季節の行事だよね、葛葉」
「そうじゃな。季節は、日の長さによる故、暦とは合わぬ。晴明も苦労しておった」
「だから、季節候は、暦とは違うんだ」
「暦に加えて、季節候を記すのは、陰陽師の仕事じゃ」
「でも葛葉、季節って、場所によって、結構ズレるよね」
「冬至、春分、夏至、秋分が合えば、それぞれの土地に合わせるのは、各地の社が務めじゃぞ、綱。占って、祭事を決めねばならぬ、それも司の仕事じゃ。日ノ本は、広すぎて、統一などできぬからの。妾は、日時計の方が、楽じゃのう」
「それが、祀り事なんだ」
「ほほほ、綱とて、条苗を入れて、稲の収穫を増やしたではないか」
「俺のは、夢で見たやり方を、伝えただけだよ」
「それでも、皆は、そなたに感謝しておるぞ」
大規模な治水事業を進めて、墾田を拓いて、米の量産を進めながら、畑を拓いて粟や稗だけでなく、大豆や里芋などの生産も始めていた。天王寺で行なっていた、薬樹園から、生姜やヨモギといった薬樹になるモノも、作り始めたのである。薬樹についても、七草粥のように、薬樹や鍼灸が、医心方は、主上に奉納されたが、薬樹や鍼灸は、伽話の形で世に広まっていた。
また、和泉の浜で、塩の量産ができたことで、醤油や味噌も作れるようになり、食卓の幅も広がっていったのである。
絵巻物は、貴族の娯楽であったが、「日本霊異記」に始まる民間伝承は、様々な噺を組み入れて、広がって後に「今昔物語」と纏められていったのである。
綱は、広がっていた、様々なお伽噺を、版木に起こして、刷って草紙にしては、最初は寺社に売っていた。寺では孤児や浮浪者を集めて、子供には読み書き算を教えて、浮浪者には、港湾荷役や川筋モノとして、働かせていったのである。
読み書き算を学んだ後は、町役や商売を始めて、算額に秀でる者は、天文方の大学寮へ入って、船長や水先として、日ノ本を巡る、廻船に載せたのである。渡辺党が、大きく広がったのは、廻船で各地の港に住み着くようになったからである。
十年もすると、様々な絵草紙も生まれて、版木を何枚か使った多色刷りも、始まっていたのである。寺だけでなく、商家や武家でも、買う者が増えていったのである。
「そういえば、綱。この前、大陸の話を書いていたの」
「夢で見た話で、一番好きだったから、書き留めたんだ。葛葉」
「水の滸りの噺は、大陸のことじゃな。売れておるそうじゃな」
「例え、悪臣はびころうと、渡辺党は、主上に尽くす、そんな武家でいたいからな」
「難波が、噺に出てくる、梁山泊かや」
「悪臣に従わぬが、主上には叛かぬ。そんな、漢達を描いた本だよ」
「渡辺党は、梁山泊のように、滅ばぬであろうの、綱」
「渡辺党は、勅命以外で、戦はせぬ。多田源氏、頼光様の惣官家。日ノ本各地に広がった渡辺党は、根が残れば、渡辺党は消えないよ。葛葉」
大川や淀川を使った、京洛への荷役を請け負い、瀬戸内の荷の流れを、難波港に集約する渡辺党は、莫大な利益を上げていた。難波御厨は、河内の大江御厨と共に、主上に寄進された財源であった。
廻船を用いて、北は蝦夷、南は琉球、東は伊豆大島、西は大陸と、各地に水運を拓いていったのである。
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