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我田引鉄だけじゃない?

我田引鉄だけじゃない?18 復興景気は、無利子無期限の定額手形に始まる

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 昭和元年、新たな時代の始まりは、復興景気の流れに生まれた。

 震災借款の返済として、大蔵大臣高橋是清は、官製による無期限定額手形の発行をおこなった。官製による無期限定額手形は、公務員の俸給を官製手形として発行したのである。つまり公務員すべてに対して、国が借金をし、借用書として手形を発行したことになります。手形は、壱百円、拾円、壱円という定額で発行され、公務員が買い物を行う購入は、すべて手形によって実行されることとなった。つまり、手形を割り引くのは、公務員と取引する銀行や商店、個人ということになる。

 額面に対して、いくらで割り引くかについては、市場経済の問題であったが、官製無期限手形は、同額で流通をしていったのである。第一次世界大戦後の不景気に、大規模な公共工事と共に、金本位による日本銀行紙幣発行額ではなく、莫大な不換紙幣を投下したこととなる。

 借款10億の返済は、公務員の俸給を集めて開始された。満洲や国外の公務員を含めて、約100万人の俸給を官製無期限手形としたことは、月当たりに数千万の返済を遂行し、1年間で借款による国債を、無利子無期限の定額手形で完済したのである。

 無利子無期限の定額手形は、政府発行による紙幣のようなものであった。政府は、国債の回収をしながら、兌換紙幣の回収を少しづつ進めていったのである。つまり、国家の借金である手形を引き取っても、金に替えれるわけではない、金本位で四苦八苦していた日銀の救済を兼ね、無利子無期限の定額手形の発行によって、金本位制からの脱却を図ったのである。

「高橋大臣は、本当に思い切った行動をとりましたね、首相」

「ははは、国債の返済に、30年はかかると思ったのに、10年で完済するだろう。兌換紙幣の回収をも始めている。見事なものだよ、風間君」





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 無利子無期限の定額手形は、政府発行の紙幣として市中を巡っていった。
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 無利子無期限の定額手形の発行は、借金を国民に支払わせる手段となったのである。政府は、無利子無期限の定額手形を発行し、公務員の俸給とすることで、市中へと定額手形を浸透させ、経済を活性化させたのである。まずは、公務員の俸給を借金返済の資金源とし、強制的な借金返済を実行したのである。

 満洲国有鉄道都市警備局は、定額手形の発行を受けて、工兵大隊の機械化を進め、北京までの米軍の補給を確保しながら、輸送に使用するトラックを大量に米軍及び中華民国へ売却したのである。公務員の俸給だけでなく、警備局が機械化にかける予算もまた、定額手形で決済を開始したのである。フォードやゼネラルから定額手形でトラックを購入して、北京まで運んで米軍と中華民国へ売却する。補給路の確保に大量のトラックを必要とする米軍は、お得意様となっていた。

 小日向ら馬族を通じて、蒙古共和国への支援を遂行しつつ、トラックの売却などで莫大な利益を上げる国営満洲鉄道都市警備局は、アメリカ政府から「死の商人」扱いされるものの、大量の物資確保には頼るしかなく、膨大な物資を生産するアメリカを含めた企業の儲けでもあって、止めることもできない流れとなったのである。昭和元年から日米関係は、徐々に悪化していく流れになっていったのである。

 売却によって回収されるのが、米国債と米ドルであり、兌換紙幣である米ドルは、金へと変換されて回収され、日本銀行による兌換紙幣の発行へと繋がっていった。膨大な金が日本に流れ、日本の経済成長は、凄まじい勢いで進んでいったのである。これは、満洲に建設された、欧米の企業も同じであり、満洲製フォードが、大陸を走りまわることになったのである。

 満洲製フォードを含めて、満洲の車両生産量は、昭和3年には、月産1万台を超えていったのである。

 満洲の景気は、日本への車両輸出にも現れていった。関東大震災後の復興で、最大利権ともなった全国街道建設事業は、巨大な国家事業となり、全国に国道が整備が拡充されていったのである。つまり、国道一桁の街道建設事業は、東京から始まるのではなく、地域に資金をの名目と共に、各地域で街道建設がバラバラに進められ、接続されていくと言う、「我田引鉄」ならぬ「我田街道」は、後藤新平の計画によって、全国街道建設の陳情合戦まで始まっていったのである。

 建設土木事業が、日本のあちこちで開始され、大量の資金が投下されることで、建設重機やトラックといった車両を中心とした自動車産業が産声を上げたのである。国内の需要については、海外から税金をかけることで対応しつつ、国有満洲鉄道都市警備局を経由して国内に流れ込んできた建設重機やトラックが、需要を底上げしていったのである。国内では、ゼネラルやフォードのライセンス生産から始まり、合弁企業の設立が進められ、ローバーやロールスロイスとの提携を進めるなど、様々な自動車会社が設立していったのである。





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 昭和元年より始まった、無利子無期限の定額手形は、日本の発行紙幣として、確立していくのであった。
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