39 / 59
オスマン帝国の黄昏
オスマン帝国の黄昏03 「特区」じゃない特区?
しおりを挟む
シリアからシナイ半島までの地域は、イギリスの三枚舌外交による結果もあって、国際連盟による干渉地域となっていた。ハイファからエルサレムの鉄道路線は、イギリスに敷設権があり、イギリスとの共同という形で、日本が敷設し運用する地域となっていた。
イギリスは、ハイファからイラクに向けて、鉄道路線の敷設を進めていて、バクダットを経由してペルシャ湾までを予定工区としていた。フランスは、シリアの石油資源を確保を進めて、エネルギー供給地として軍を送り込んでいた。イギリスやフランスにとっては、石油の利権が優先で在り、現地での統治は、出来る限り現地の人間で対応を図ろうとしていた。
日本は、満洲に油田が発見されたことで、中東への優先順位が下がり、中東派遣軍は、補充という形での増派となったのである。人事異動の形によって、年に陸軍に10名、工兵隊100名が送られてきていた。日本の官僚は、平時体制なので、戦況が良いか悪いかでは動かないのである。極東ロシアでの派遣軍に、被害が拡大しているのは、被害状況に関係なく異動が発生するというのもあったのである。被害が無かった部隊が異動して、奉天の後方勤務となり、被害が大きかった部隊が、残留となってさらに被害が拡大する、お役所の対応というのは、後手後手になるのである。
エルサレム方面についても同じで、後方がハイファの海軍基地であり、連絡線がエルサレムまでの鉄道となっている。政府側の判断としては、ハイファのイギリス軍が撤退といった情報がない限り、平時の判断となっていた。
軍というモノは、歳月が経過すれば、平時でも損耗する部隊で在り、補充というのは、常に必要となる。補充兵もまた、片道切符で訪れる。毎年、数名の補充兵が送られる、平時の論理に従い、新兵を中心として、人事異動は春の到来を告げていく。
3月の時期は、日本から異動の船がやってきて、異動の船に乗って運が良ければ、日本に帰ることができる。年老いて戦えないと判断された者、病に倒れ戦列を離れた者は、退職後に予備役となり、日本への帰還が認められる。新たに配属する者達が、新兵を中心として、同じ船で到着する。
「ことしも、平時の異動だな、特に変わった者は、君は」
女性が下りてきた、年齢は20歳は超えているか?
「は、はい。南洋庁庶務課から参りました、葛西亮子です」
「工兵隊勤務か」
「はい。エルサレム駅長付と言われました。これが辞令です」
エルサレム駅は、軍事駅なので、整備等を除けば、帝国陸軍管理であり、駅長は、春日大佐であった。
「?駅長付」
「はい。後、先輩から手紙を預かりました」
「手紙?」
手紙を受け取ると、差出人は、井筒正彦となっていた。拓殖大の助教授であった。
「井筒先生は、教授になれたのかな」
「はい。昨年、教授になられました」
「そうか、では君は、後輩ということかな」
「はい。公私共、よろしくお願いします」
「あぁ、こちらこそ、よろしく頼む」
当時の海外事情として、移民は男性が中心であったため、現地で結婚することも多かったが、国際結婚を許容する風潮は日本には無かった。結果として、お節介な人たちが、結婚相手を送ることになる。そんな一例が、エルサレムでも見られたのである。
滋野男爵の爵位継承問題や、1890年に書かれた森鴎外の「舞姫」、1898 年アメリカの作家ジョン・ルーサー・ロング「蝶々夫人」は、そんな時代に描かれた作品である。戦前の日本という国は、異国との付き合いはあっても、異国人との婚姻を認める程には、寛容な民族では無かった。だからこそ、写真一枚で見合いのようなことも、数多く発生したのである。
日本の持つ、閉鎖性と開放性は、非常に良く似た性質を持っていた。それは、悪気は無く、親切で在り、お節介であるということであった。当時の海外旅行は、生きて帰って来るか判らない、それほそ冒険の世界であった。血の継承が問題となれば、海外に派遣前に婚姻も多く、継承に差し障りのある人間の異動には、様々な圧力がかかるモノであった。
イギリスは、ハイファからイラクに向けて、鉄道路線の敷設を進めていて、バクダットを経由してペルシャ湾までを予定工区としていた。フランスは、シリアの石油資源を確保を進めて、エネルギー供給地として軍を送り込んでいた。イギリスやフランスにとっては、石油の利権が優先で在り、現地での統治は、出来る限り現地の人間で対応を図ろうとしていた。
日本は、満洲に油田が発見されたことで、中東への優先順位が下がり、中東派遣軍は、補充という形での増派となったのである。人事異動の形によって、年に陸軍に10名、工兵隊100名が送られてきていた。日本の官僚は、平時体制なので、戦況が良いか悪いかでは動かないのである。極東ロシアでの派遣軍に、被害が拡大しているのは、被害状況に関係なく異動が発生するというのもあったのである。被害が無かった部隊が異動して、奉天の後方勤務となり、被害が大きかった部隊が、残留となってさらに被害が拡大する、お役所の対応というのは、後手後手になるのである。
エルサレム方面についても同じで、後方がハイファの海軍基地であり、連絡線がエルサレムまでの鉄道となっている。政府側の判断としては、ハイファのイギリス軍が撤退といった情報がない限り、平時の判断となっていた。
軍というモノは、歳月が経過すれば、平時でも損耗する部隊で在り、補充というのは、常に必要となる。補充兵もまた、片道切符で訪れる。毎年、数名の補充兵が送られる、平時の論理に従い、新兵を中心として、人事異動は春の到来を告げていく。
3月の時期は、日本から異動の船がやってきて、異動の船に乗って運が良ければ、日本に帰ることができる。年老いて戦えないと判断された者、病に倒れ戦列を離れた者は、退職後に予備役となり、日本への帰還が認められる。新たに配属する者達が、新兵を中心として、同じ船で到着する。
「ことしも、平時の異動だな、特に変わった者は、君は」
女性が下りてきた、年齢は20歳は超えているか?
「は、はい。南洋庁庶務課から参りました、葛西亮子です」
「工兵隊勤務か」
「はい。エルサレム駅長付と言われました。これが辞令です」
エルサレム駅は、軍事駅なので、整備等を除けば、帝国陸軍管理であり、駅長は、春日大佐であった。
「?駅長付」
「はい。後、先輩から手紙を預かりました」
「手紙?」
手紙を受け取ると、差出人は、井筒正彦となっていた。拓殖大の助教授であった。
「井筒先生は、教授になれたのかな」
「はい。昨年、教授になられました」
「そうか、では君は、後輩ということかな」
「はい。公私共、よろしくお願いします」
「あぁ、こちらこそ、よろしく頼む」
当時の海外事情として、移民は男性が中心であったため、現地で結婚することも多かったが、国際結婚を許容する風潮は日本には無かった。結果として、お節介な人たちが、結婚相手を送ることになる。そんな一例が、エルサレムでも見られたのである。
滋野男爵の爵位継承問題や、1890年に書かれた森鴎外の「舞姫」、1898 年アメリカの作家ジョン・ルーサー・ロング「蝶々夫人」は、そんな時代に描かれた作品である。戦前の日本という国は、異国との付き合いはあっても、異国人との婚姻を認める程には、寛容な民族では無かった。だからこそ、写真一枚で見合いのようなことも、数多く発生したのである。
日本の持つ、閉鎖性と開放性は、非常に良く似た性質を持っていた。それは、悪気は無く、親切で在り、お節介であるということであった。当時の海外旅行は、生きて帰って来るか判らない、それほそ冒険の世界であった。血の継承が問題となれば、海外に派遣前に婚姻も多く、継承に差し障りのある人間の異動には、様々な圧力がかかるモノであった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
本能寺からの決死の脱出 ~尾張の大うつけ 織田信長 天下を統一す~
bekichi
歴史・時代
戦国時代の日本を背景に、織田信長の若き日の物語を語る。荒れ狂う風が尾張の大地を駆け巡る中、夜空の星々はこれから繰り広げられる壮絶な戦いの予兆のように輝いている。この混沌とした時代において、信長はまだ無名であったが、彼の野望はやがて天下を揺るがすことになる。信長は、父・信秀の治世に疑問を持ちながらも、独自の力を蓄え、異なる理想を追求し、反逆者とみなされることもあれば期待の星と讃えられることもあった。彼の目標は、乱世を統一し平和な時代を創ることにあった。物語は信長の足跡を追い、若き日の友情、父との確執、大名との駆け引きを描く。信長の人生は、斎藤道三、明智光秀、羽柴秀吉、徳川家康、伊達政宗といった時代の英傑たちとの交流とともに、一つの大きな物語を形成する。この物語は、信長の未知なる野望の軌跡を描くものである。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
If太平洋戦争 日本が懸命な判断をしていたら
みにみ
歴史・時代
もし、あの戦争で日本が異なる選択をしていたら?
国力の差を直視し、無謀な拡大を避け、戦略と外交で活路を開く。
真珠湾、ミッドウェー、ガダルカナル…そして終戦工作 分水嶺で下された「if」の決断。
破滅回避し、国家存続をかけたもう一つの終戦
そしてそこから繋がる新たな近代史へ
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
小沢機動部隊
ypaaaaaaa
歴史・時代
1941年4月10日に世界初の本格的な機動部隊である第1航空艦隊の司令長官が任命された。
名は小沢治三郎。
年功序列で任命予定だった南雲忠一中将は”自分には不適任”として望んで第2艦隊司令長官に就いた。
ただ時局は引き返すことが出来ないほど悪化しており、小沢は戦いに身を投じていくことになる。
毎度同じようにこんなことがあったらなという願望を書き綴ったものです。
楽しんで頂ければ幸いです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる