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弥生の息吹
日ノ本経済 縄文の殺し、弥生の殺し
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通常、生き物というものは、同族を殺すことは無い。縄文期に戦が無かったという説があるのは、同族を殺さないという本能が、規約に組み入れられたからだと思われる。また、縄文期に規約の最上位には、男女の契りがあったと推定される。そして、男女の契りに関わる規約を破ることが、男女の契りに破綻をもたらし、悲劇の始まりとなる。これは、日ノ本における神話伝承の有り様から、間違いないと推定される。
縄文期の争いは、男女の契り、子供の所属に関わる争いであったように思います。イザナミが1000人殺し、イザナミが1500人生み出す。これは、男女の性差表現でもあります。種は、同時に複数の畑に子を為せますが、畑は一度に為せる子の数に制約があります。
縄文の殺しと産みは、男女の契りに関わるモノであった。
良い女を手に入れる、良き男を手に入れる、男女の契りには、争いの原因を生じさせます。男女の契りに関わる規約は、絶対的な性格を持ち、その裏切りは、生殺与奪を伴うこととなります。
縄文の殺しは、男女の契りに規約を確立し、契りで定めた規約の破綻は、契りの破局となり、賠償としての生殺与奪が発生することになります。
縄文期における殺しは、規約を破ったという、裏切りに対する賠償行為であり、賠償の範囲には制限が無かったということになります。言ってみれば、「裏切られた方」の気が済むまでとなります。
イザナミが、裏切りが許せず、1000人殺すと宣言する。罪の在る無しはそこにはありません。イザナミが「気が済む」人数なのです。
イザナギは、「1000人殺す」という行為を受け入れて、「1500人生む」と宣言する。つまりは、賠償行為としての殺人を受け入れた上で、自分にできることを為したのです。
日ノ本では、祟り神となった神の怒りによる暴走は、受け入れざるを得ないモノでもあります。まして規約を護らなかった結果として生じた怒りは、受け入れざるを得ない怒りとなります。子供は関係ないとか、復讐をしても意味が無いというのは、被害を受ける側の勝手な押し付けでしかありません。
怒りを鎮めるためには、相手の為すことを受け入れて、そのうえで交渉し、新たな規約を構築するしかありません。
自然災害を含め、人が抗えぬ存在、それを神として祀る。されど、生き残ることを諦めず、創意工夫を尽くし、死に抗い生を求めた上で、天命を受け入れる。これが、日ノ本に住まう、人が生きるために必要な規約となりました。
縄文期の死は、子の死、親の死、身内の死でしかありません。幼き子に模した、足形の土器が作られ、遺影のように装飾に加えていました。綺麗な貝や石の首飾りに、ひっそりと足形の土器を身に着けていたのです。争いごとがあったとしても、ヤクザの抗争のように、子を殺された親の怒り、親を殺された子の恨み、さるかに合戦のように、敵討ち、男女の情念に関わる規約が、殺しの本質でありました。
縄文から弥生に移り変わるにあたって、違いとして明確になっていくのは、命令による死です。縄文と弥生の違いは、大規模な人数を動員して、治水活動を行い、耕作地の拡大を図ったことにあります。治水を含めた大規模な土木作業を実行するためには、命令を下し、従わぬ者を罰するという規約が必要となります。
大陸の国々で、秦に敗れた者達が日ノ本へと亡命しました。後には、滅びた秦からも、亡命者が日ノ本へと押し寄せてきます。
彼らの持っていた知識・技術は、大規模な人を動かし、命令し、従わせるという規約です。これによって、大規模な治水活動が、日ノ本で始まるようになったのです。
大規模な土木工事は、人に命令を下し、従わない者へ罰を与え、従う者に利を与える、規約を確立させる必要があります。相互扶助だけでなく、作業を的確に遂行するための規約の確立、これが弥生時代なのです。
弥生期に異なっていくのは、男女や親子の情念に関わる契りの規約が、殺しを生み出すのではなく、治水作業を行うための規約を守れないことに対する、罰則としての殺しが始まります。これは、規約そのものが生じさせる殺しです。
大規模治水作業は、労務管理が必須であり、安全管理上、作業命令に対しては絶対となります。
著者は、見学に来るお偉いさんが、機械に勝手に触れようとして危ない場合どうするかと訊くと、工場長からは、
「殴ってでも止めろ、安全が絶対だ」
と答えられました。
確かに、超高圧の油圧装置の試作機を、耐久試験として動かしている以上、ミスをして装置が砕ければ、周囲に生き残れる人はいません。高温の蒸気を吸い込めば、肺が火傷して窒息死します。その危険を知らない者が触れれば、装置を壊す可能性があり、殺してでも止めることが、自分の生存確率を高めます。
大規模治水工事に伴う、土木作業では、作業の危険性は、知識がなければ判断できません。また、作業者が規約を破り、危険作業を実行してしまった結果、大量の死者を出す可能性があります。つまりは、作業の中で規約を守れない者は、殺してでも止めなければならないということを意味します。
「規約への絶対服従、反抗には死を」大規模治水工事には、殺しそのものが、規約に組み込まれることとなります。
「まつろわぬ」の始まりは、規約に対して「従わない」モノへの征伐行為となって現れます。これが、弥生期の殺しとなり、「まつろわぬ」モノ達との戦争の歴史が始まりとなります。
戦争というモノは、目的達成の手段を選ばぬ行為でもあります。「まつろわぬ」相手が、強大であれば、暗殺や騙し討ちすらも許容する。殺しの正当化となります。
縄文期に男女の契りが、規約の最上位であり、交渉の始まりであったとすれば、弥生期に日ノ本で生まれた国々は、互いに男女の契りを交わし、互いに血族であったと推定されます。筑紫、日向、備、出雲、越、丹、それぞれが強大国であり、ヤマトと契りを交わした、血族でもありました。つまりは、これらの国は、ヤマトの王族でもあったということになります。
「まつろわぬ」征伐が、暗殺や騙し討ちまで正当化されたのは、相手が強大であっためということになります。ヤマトの王権による「まつろわぬ」モノを征伐していく過程が、ヤマトタケルに代表される物語となります。
弥生の始まりは、国としての戦の始まりであり、規約を強制するための統一の始まりとなります。
縄文期の争いは、男女の契り、子供の所属に関わる争いであったように思います。イザナミが1000人殺し、イザナミが1500人生み出す。これは、男女の性差表現でもあります。種は、同時に複数の畑に子を為せますが、畑は一度に為せる子の数に制約があります。
縄文の殺しと産みは、男女の契りに関わるモノであった。
良い女を手に入れる、良き男を手に入れる、男女の契りには、争いの原因を生じさせます。男女の契りに関わる規約は、絶対的な性格を持ち、その裏切りは、生殺与奪を伴うこととなります。
縄文の殺しは、男女の契りに規約を確立し、契りで定めた規約の破綻は、契りの破局となり、賠償としての生殺与奪が発生することになります。
縄文期における殺しは、規約を破ったという、裏切りに対する賠償行為であり、賠償の範囲には制限が無かったということになります。言ってみれば、「裏切られた方」の気が済むまでとなります。
イザナミが、裏切りが許せず、1000人殺すと宣言する。罪の在る無しはそこにはありません。イザナミが「気が済む」人数なのです。
イザナギは、「1000人殺す」という行為を受け入れて、「1500人生む」と宣言する。つまりは、賠償行為としての殺人を受け入れた上で、自分にできることを為したのです。
日ノ本では、祟り神となった神の怒りによる暴走は、受け入れざるを得ないモノでもあります。まして規約を護らなかった結果として生じた怒りは、受け入れざるを得ない怒りとなります。子供は関係ないとか、復讐をしても意味が無いというのは、被害を受ける側の勝手な押し付けでしかありません。
怒りを鎮めるためには、相手の為すことを受け入れて、そのうえで交渉し、新たな規約を構築するしかありません。
自然災害を含め、人が抗えぬ存在、それを神として祀る。されど、生き残ることを諦めず、創意工夫を尽くし、死に抗い生を求めた上で、天命を受け入れる。これが、日ノ本に住まう、人が生きるために必要な規約となりました。
縄文期の死は、子の死、親の死、身内の死でしかありません。幼き子に模した、足形の土器が作られ、遺影のように装飾に加えていました。綺麗な貝や石の首飾りに、ひっそりと足形の土器を身に着けていたのです。争いごとがあったとしても、ヤクザの抗争のように、子を殺された親の怒り、親を殺された子の恨み、さるかに合戦のように、敵討ち、男女の情念に関わる規約が、殺しの本質でありました。
縄文から弥生に移り変わるにあたって、違いとして明確になっていくのは、命令による死です。縄文と弥生の違いは、大規模な人数を動員して、治水活動を行い、耕作地の拡大を図ったことにあります。治水を含めた大規模な土木作業を実行するためには、命令を下し、従わぬ者を罰するという規約が必要となります。
大陸の国々で、秦に敗れた者達が日ノ本へと亡命しました。後には、滅びた秦からも、亡命者が日ノ本へと押し寄せてきます。
彼らの持っていた知識・技術は、大規模な人を動かし、命令し、従わせるという規約です。これによって、大規模な治水活動が、日ノ本で始まるようになったのです。
大規模な土木工事は、人に命令を下し、従わない者へ罰を与え、従う者に利を与える、規約を確立させる必要があります。相互扶助だけでなく、作業を的確に遂行するための規約の確立、これが弥生時代なのです。
弥生期に異なっていくのは、男女や親子の情念に関わる契りの規約が、殺しを生み出すのではなく、治水作業を行うための規約を守れないことに対する、罰則としての殺しが始まります。これは、規約そのものが生じさせる殺しです。
大規模治水作業は、労務管理が必須であり、安全管理上、作業命令に対しては絶対となります。
著者は、見学に来るお偉いさんが、機械に勝手に触れようとして危ない場合どうするかと訊くと、工場長からは、
「殴ってでも止めろ、安全が絶対だ」
と答えられました。
確かに、超高圧の油圧装置の試作機を、耐久試験として動かしている以上、ミスをして装置が砕ければ、周囲に生き残れる人はいません。高温の蒸気を吸い込めば、肺が火傷して窒息死します。その危険を知らない者が触れれば、装置を壊す可能性があり、殺してでも止めることが、自分の生存確率を高めます。
大規模治水工事に伴う、土木作業では、作業の危険性は、知識がなければ判断できません。また、作業者が規約を破り、危険作業を実行してしまった結果、大量の死者を出す可能性があります。つまりは、作業の中で規約を守れない者は、殺してでも止めなければならないということを意味します。
「規約への絶対服従、反抗には死を」大規模治水工事には、殺しそのものが、規約に組み込まれることとなります。
「まつろわぬ」の始まりは、規約に対して「従わない」モノへの征伐行為となって現れます。これが、弥生期の殺しとなり、「まつろわぬ」モノ達との戦争の歴史が始まりとなります。
戦争というモノは、目的達成の手段を選ばぬ行為でもあります。「まつろわぬ」相手が、強大であれば、暗殺や騙し討ちすらも許容する。殺しの正当化となります。
縄文期に男女の契りが、規約の最上位であり、交渉の始まりであったとすれば、弥生期に日ノ本で生まれた国々は、互いに男女の契りを交わし、互いに血族であったと推定されます。筑紫、日向、備、出雲、越、丹、それぞれが強大国であり、ヤマトと契りを交わした、血族でもありました。つまりは、これらの国は、ヤマトの王族でもあったということになります。
「まつろわぬ」征伐が、暗殺や騙し討ちまで正当化されたのは、相手が強大であっためということになります。ヤマトの王権による「まつろわぬ」モノを征伐していく過程が、ヤマトタケルに代表される物語となります。
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