日ノ本経済 始まりの話

エネルギーの確保

日ノ本における、エネルギー問題

　鋳造に必要となる、木炭の確保は、日本の山林事情と木炭製造能力からすると、少量生産ならばともかく、大量生産には向かない、難しい状況であったのも事実である。森林は共有地であることが多く、神域であることも多い。結果として、山岳民との関係もあって、勝手に立ち入ることが難しかったのである。

　日ノ本全域が、公地公民となったのが、天平期であるが、私有財産が認められるのは平安期からである。平安期に私有財産とされたのは、開墾された田畑であり、山林は私有範囲から外れていたのである。山間に開墾された、棚田を含めて私有財産であったが、山間部そのものは公地公民の対象であったのである。つまりは、木材の権益は、山岳に権益を保有する部族との交渉が必要であり、皮革等の権益を含めて、山岳の権益は別として扱われていた。

　また、山岳の多くは、神社仏閣の領域となっていることも多く、立ち入りが難しい状況にあった。

　日ノ本で、必要なエネルギー量が増加したにも関わらず、エネルギー量を確保することが難しかったのは、山岳の権益が、武家の権益範囲外にあったためである。結果的に、日ノ本では、森林が過剰に伐採されることもなく、森林資源が守られた理由でもあった。

　1000度を超える、高温を生成するため、木炭を大量に使用する、鉄鋼産業は、日本では大規模化することが困難であったのである。天平期に造られていた、ガラス器の製造が、製造方法を含めて日本で衰退し、滅びていったのも、木炭の確保が難しくなったためと言える。

　暖房に必要となる、薪の確保についても同じである。共有地から薪を確保する必要があり、薪の取り合いが発生しないように、調整するための規約プロトコルも、惣村毎に必要になったのである。

　水源を巡る水争いや、薪を巡る入会地の争いは、そのまま権益争いとなり、一所懸命に生きるモノ達にとって、命を賭して守るべき権益であったのである。