日ノ本経済 始まりの話

Ittoh

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エネルギーの確保

循環社会の形成 近江葦ノ原、里山文化の形成

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 日ノ本は、水害の多い国である。

 琵琶湖の水面は、現在、標高84.371mとされているが、年間の水位変化は1mほど変化していて、湖の面積は変化している。琵琶湖の面積が、670km2であるから、1m変化すると6億7千万キロリットルの変化ということになる。つまりは、この程度の水量変化は、毎年のように発生するということである。

 稲作そのものは、縄文期に始まったのは間違いないとしても、陸稲りくとうから水田に切り替わるのは、かなり後である。現在のような苗を使って、水田に田植えするような栽培方法は、さらに後の江戸時代あたりからということになる。

 水田への切り替えは、琵琶湖の水位変化を見ていると、勝手に発生した変化を、人口的に発生させたと推定できる。現在も、琵琶湖の湖岸で行われる、水が引く秋に葦原の刈り入れて、春先に葦原を焼き払い、焼き畑を毎年実施する。そんな里山の四季変化は、そのまま、稲作の変化であったのだろうと思います。葦原で行っていたことを、そのまま稲に持ち込めば、水田の構築と変化に繋がります。

 琵琶湖という巨大な水源があれば、このような稲作が可能ですが、ほかの地域では、人工的に水田や貯水池を構築しなければ、水田による稲作はできません。結果として、縄文期から弥生期に古墳が生まれ、土木工事が進展し、公地公民や班田収授を可能とする背景があったのは間違いない。

 大規模な土木治水事業を遂行するためには、万単位の労働力抽出、労働者を働かせるための規律プロトコルの確立が必要となる。

 大和の王権が強化されたのは、労働力の大量動員体制の確立と、治水墾田開発による人口の増加と余剰人口増にある。余剰人口が増加することで、戦力として兵士の大量動員が可能となり、崇神陛下から四道将軍が派遣され、全国征覇への道が始まり、丹波王国の鬼退治にかこつけた、征服事業が開始され、ヤマトタケルの伝承を含めて、最終的には継体陛下の御代に、おおまかな日本制覇が達成されたと推定される。

 水田による稲作は、水資源が豊富な環境下での自然現象を利用して始まり、治水事業と土木施工技術の発展によって、水田による稲作が可能な範囲が拡大していったのである。この時期が弥生から古墳時代なのである。

 雪解け水が水量を増やし、水田に水が流れ込んで、植え付けた稲が育っていく、秋に水が引いて、稲刈りを開始し、現在ではシロツメクサが広がる田圃を雪解け前に焼き払い、生み出された肥料が次の稲の肥やしとなる。この極めて循環性の高い生態系を、自然に構築可能な国が日本であり、極めて奇蹟的な出来事であったのは、間違いありません。

 日ノ本が構築した循環社会は、自然に構築された循環から生まれた、自然発生的な側面が強く、日本の自然が生み出した奇蹟でもあります。だからこそ、日本では、縄文期に稲作が始まったのです。

 琵琶湖湖岸に住んでいると、日本の地形が安定した季節を育んでいて、四季折々が巡るように、水位が変化する様子を知ることができます。雪解けで水位が上昇し、梅雨にピークを迎え、水位は下がりながら夏から秋に雨が降って、冬に向かって水位が下がっていく。
 毎年のように水害が発生するということは、毎年のように変化する水位に、対応しなければならないということになる。

 葦原の水郷に、里山の四季を描けば、何もせずとも勝手に水田が出来上がる。おそらくは、日本各地に同じような風景を描く場所があったのは、間違いは無いだろう。つまりは、暦を知らなければ、生きていくことも難しいのが、日本という土地柄なのである。

 気温と琵琶湖の水位変化から、季節を逆算することが可能であり、元々の琵琶湖湖岸に住まう人は、暦は無くても、暦があるかのように行動したのだろう。

 縄文期の日本が、世界の最先端みたいに進んでいたように見えるのは、極めて過酷な環境条件が、生み出した結果だったりするのだろう。
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