百々五十六の小問集合

百々 五十六

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毎日記念日小説(完)

たばこのせいじゃないかも 5月31日は世界禁煙デー

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「お父さん、なんかみんなと違うにおいがするね」
「お父さんのにおい好き?」
娘は、間髪入れずに答えてくれた。
「あんまり好きじゃない!」
娘の顔は、ひどく純粋だった。

その日、俺は悔しくて仕方なかった。
娘に匂いが好きじゃないと言われて悲しんだ。
娘の純粋な言葉が、凶器のように突き刺さる。
俺は今日禁煙を決意した。



3年後

「お父さん、くさ~い」
娘は、鼻をつまんで手をパタパタしている。
「冗談でもそんなこと言っちゃだめだよ!」
俺は、諭すように言った。
「冗談じゃ、ないよ?」
娘は、純粋な目で返してきた。
思わぬカウンターパンチによろけてしまう。



俺はいまだに禁煙ができずにいた。
娘から定期的に食らうカウンターパンチやら、ストレートパンチを受けると、たばこと酒に逃げるしかなかった。
娘に悪気がないことがわかるから、娘にこのもやもやをぶつけることができないのだ。
だけれど、俺はまた決意した。
今度こそ絶対にたばこをやめると。





8年後

「父さん、年々臭くなってるね。臭い近づかないで」
ごみを拾いつまんでいるかのような表情で娘は言った。
「そんなこと言われると、お父さん、悲しい」
悲しさを紛らわすために、ちょっとだけちょけてみた。
「うざっ」
娘は鬱陶しそうに言った。
端的に言って、心が折れるかと思った。



親のたばこは、反抗期を助長するのかもしれない。
娘はすっかりたばこ嫌いになってしまったようだ。
決して俺のことが嫌いではない。たばこ嫌いなのだ。
そう思わないとやってられない。
娘に好かれるために俺は、何度目か分からない『禁煙』を心に誓った。




9年後

「父さん、外で風呂入って」
娘に突然そんなことを言われた。
「なんでよ~?」
混乱と困惑の中、変な返答しかできなかった。
「風呂が臭くなる」
娘はまじめに言っているようだった。



反抗期も相まって、娘の対応がどんどんと悪くなっていく。
最近はもう、まともに口をきいてくれない。
話しかけると、「くさい」「近づかないで」ですべて返される。
俺はほとんど心が折れていた。
たばこ臭いと言われているのに、俺はまたたばこに逃げてしまっている。
現実逃避できる趣味が、たばこしかないのだ。
ただ、もうその現実逃避はやめる。
俺は禁煙するのだ。




10年後
「父さんの服と一緒に洗わないで」
娘に選択かごに入れておいた服を投げつけられた。
「そんなこと言わないでよー」
「はぁ」
もう俺とは話したくないようだ。



最近娘は、返事すらしてくれなくなった。
一方的に何か言ってくる時しか娘の声が聞けない。
俺が話しかけたときは、嫌な顔をして、溜息を吐いて俺から離れる。
今度こそやめてやる。
娘に嫌われるたばこなんて、今度こそやめてやるんだ。


11年後
「父さん臭い。家から出たら毎回銭湯入ってきて」
「お父さん悲しい」
「銭湯入ってきてね?!!!」
娘が圧たっぷりに言う。
俺はその姿に気おされてしまった。

最近嫁も俺を避けてる気がするんだけど気のせいだよね?
こんなんでたばこ辞められるのかなぁ…
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