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1章 スタートダッシュ
なーさんと戦闘
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俺達は、近くにいたダンジョンボアが視認できるぐらいの距離まで移動してきた。
どうやらダンジョンボア側はまだこちらに気づいていないようだ。
俺は小声でなーさんに聞く。
「なーさん、あいつと戦えるか?」
なーさんは自信ありげに鳴いた。
「なぁ!」
これはやれると言うことでいいのかな。
それなら、今回は、なーさんに任せてみようかな。
なーさんの戦闘スタイルとか、なーさんの強さを知りたいし。
それに、危険になったら、すぐに矢を放って助ければ良いだろう。
俺は、なーさんに伝えた。
「そうか、ならまずはなーさんの戦闘スタイルとか実力を見たいから、出来るなら、1羽で戦ってくれ」
なーさん頑張ってくれ。
ここでどれぐらい頑張れるかで、俺達が今後どんな感じで戦うかが決まると思う。
なーさんに俺より後ろに待機してもらってそこから魔法を撃ってもらうことになるのか、アクロバットな動きで前衛を託すことになるのか。
それが決まると言っても過言ではない。
なーさんはもちろんだと言いたげな顔で鳴いた。
「なぁ」
少し不安があるのか、
声が少し元気がなかったな。
初の戦闘で、緊張しているのかな。
あり得るな。
俺も、初めての戦闘は緊張をした気がする。
あまり覚えていないけど。
それに、生後数分なのだ。
初めてのことに恐怖するのは当たり前のことだよな。
でも、これは大切なことなんだ。
なーさんが自分の身を自分で守れるとなると、なーさんの安全がかなり確保される。
俺は、なーさんの緊張を少しでも和らげられたらと思いながら言った。
「もちろんサポートはするし、危なかったら助けるからな」
なーさんは、俺の言葉を受けて自信を取り戻したのか、元気に鳴いた。
「なぁ!」
そう言って、なーさんは、ダンジョンボアに向かって行った。
俺はその背中になーさんに届くか届かないかギリギリの声でエールを送った。
「頑張って、なーさん」
なーさんが、ダンジョンボアと距離をつめていき、30m強ぐらいの距離になったときに、戦闘は始まった。
俺は、弓を構えいつでも矢を放てるような状態にしながら、なーさんとダンジョンボアの戦闘を眺める。
最初は警戒態勢で、どう出てくるのかを伺っているダンジョンボア。
なーさんは、ダンジョンボアの側面に回り込んで、魔方陣を展開しだした。
魔方陣が展開されたのは、ダンジョンボアの真上。
ダンジョンボアは気づいていないみたいだ。
なーさんは、数秒もしないうちに、魔方陣を完成させた。
完成させた魔方陣から純粋な炎が出てきた。
俺がイメージしていた魔法とは違うな。
俺のイメージは、もっとこう、人か水とか風とか土とかを、ボールとか、ランスとか、フォールとか決まった形にして出現させ、相手にぶつけるものだと思っていた。
どうやらその俺のイメージは間違っていたらしい。
なーさんは、ダンジョンボアを丸々飲み込むほどの炎を出現させ、ダンジョンボアを丸焦げにした。
炎に包まれたダンジョンボアは、まず炎から脱出しようと暴れ出した。
とりあえずまず、ダンジョンボアはなーさんの方を向き、なーさんに突進することで回避しようとする。
しかしそれを事前に読んでいたかのように、なーさんは、ダンジョンボアが走り出したタイミングで、ダンジョンボアの目の前に土の壁を魔法で築いた。
ダンジョンボアは、まだ加速段階だったためか、土の壁にぶつかってもあまりダメージを受けている様子はない。
ただ、前に出ようとした、ダンジョンボアの勢いをくじくには十分だったようだ。
多少のダメージといきなり目の前に壁が現れたこと、今もなお体が燃えていると言うことのトリプルコンボで、ダンジョンボアが混乱しだした。
向きを変えて、他の方向から脱出を図れば良いのに、ダンジョンボアはその場でゴロゴロと体を地面にこすりつけて火を消そうとした。
そんなもので、消せるほど、なーさんが放った火はやわではない。
ゴロゴロと転がるダンジョンボアは、数分もしないうちに動かなくなった。
動かなくなってから少しして、なーさんは、火の魔法も土の壁の魔法も解除した。
それと同時にウィンドウが出現した。
ダンジョンボアを討伐しました。
素材は、直接ストレージに入れられました。
獲得素材:猪肉×1
経験値を得ました。
なーさんのレベルが上昇しました。
なーさんは、SPを10、NPを5獲得しました。
なーさんが獲得したSPは、MPに10割り振られました。
なーさんが獲得したNPは、INTに5割り振られました。
なーさんのAGIが1上昇しました。
なーさんのDEXが1上昇しました。
なーさんのMPが1上昇しました。
なーさんのレベルが上がった。
獲得したSPは自動的にMPに割り振られたようだ。
獲得したNPの方は、INTに割り振られたらしい。
まぁ、今の戦闘を見たら妥当だな。
魔法しか使っていないからな。
良い判断だと思う。
確率で上がる方は、3つも上がっている。
まぁ、3つの内2つは100%上がるやつだからな。
そこまで多いとは思わない。
通常の運の範囲だろう。
これで、なーさんがさらに1つ強くなったな。
INTは15から20になったのか。
ということは次の戦闘からは、今の1.3倍ぐらいの魔法の威力になると言うことか。
すごいな。
かなり頼もしいな。
でも、あの魔法達って、前衛系の物理攻撃との相性が悪そうだな。
後衛の弓とかなら、魔法の影響は少ないだろうけど、剣とかで戦っていたら、火が熱くて攻撃どころではないだろうな。
そう考えると、俺となーさんの相性は良い方なのかな。
なーさんの物理攻撃との兼ね合いはどうするんだろうな。
炎の中を突っ込んでいって攻撃をするのかな?
危ないからそれは止めてほしいな。
まぁ、物理攻撃をするとなったら別のやり方があるんだろうな。
そういうことにしておこう。
それにしても、あの戦闘はすごかったな。
俺の戦闘とは全然違う戦闘だったな。
スカイバードって元々は、20層にいるようなモンスターだから、2層の魔物ぐらいなら生後数分でも完封できるのかもな。
恐ろしい戦闘だったな。
あんな戦い勝たされたら恐怖でこのゲームを止めるかもしれない。
ただただ火あぶり。
単純だけどすごく怖い戦法だな。
そう思っているうちに、なーさんが戻ってきた。
俺はなーさんに声をかけた。
「お疲れ様、なーさん」
なーさんは俺の声を聞いてホッとしたのか、ふぅと息を吐くように鳴いた。
「なぁ」
初の戦闘で緊張していたんだろうな。
もしくは、予定外のことがあって焦ったのかもしれないな。
それで、戦闘後に俺の顔を見て安心したんだろうな。
まぁ、何はともあれ、成功したのだから良い。
そして、この戦闘がなーさんの成長につながったのだとしたらなお良い。
俺は、さらになーさんをねぎらうように言った。
「戦闘、すごかったな」
信頼関係にはコミュニケーションが一番大切。
だから、俺はなーさんとコミュニケーションをとり続けるのだ。
そう思っていると、なーさんは誇らしげに鳴いた。
「なぁ!」
褒められてうれしいんだろな。
うれしそうななーさんを見ているとこっちまでうれしくなってくるな。
俺は、独り言をつぶやくように言った。
「魔法ってあんな感じなんだな」
俺の発言の意味が分からなかったのか、なーさんは首をかしげながら鳴いた。
「なぁ?」
俺は丁寧に説明するように言った。
「なんというか、もっと、『ファイアーボール』とか『ファイアーランス』とか『ファイアーウォール』とかそういう、形で出てくるのかと思ってたら、そのまんま燃えてびっくりしたよ」
なーさんはそうなんだという顔をしながら鳴いた。
「なぁ」
まぁ、褒められている訳でも、怒られている訳でもないから、反応が難しいんだろう。
無難に相槌を選択したと言うことかな。
俺は改めてなーさんを褒めた。
「さすがなーさんだな」
俺はそう言いながら、なーさんをなでた。
ちなみになーさんは、そこら辺の石に座っている俺の太ももの上にいる。
なーさんは今までで一番うれしそうに鳴いた。
「なぁ!」
戦闘に関して褒め終えたとして、俺は話を変えた。
「今回の戦闘で、なーさんがレベルアップしたみたいだね」
なーさんが、うれしそうに鳴いた。
「なぁ!」
強くなったことがうれしいのかな。
それとも俺が良いことを言う声色だったからうれしいのかな。
俺は、さらになーさんを褒めた。
「いろいろ能力が伸びててすごいね」
なーさんはうれしそうに鳴いた。
「なぁ! なぁ!」
俺は、なーさんに熱く語りかける。
「このままの調子でバンバン強くなっていこう」
なーさんは俺の言葉に真剣な顔をして返した。
「なぁ」
もちろんだと言うことで受け取って良いのかな。
とりあえずやる気は感じられるから次の戦闘をしたいな。
俺はそう思いながらつぶやいた。
「索敵」
割と近く。
もう少し戦闘が長引いていたら、漁夫の利のために参加していたかもしれないぐらいの距離に、2匹組のダンジョンボアの反応があった。
次の獲物はこれかな。
そう思いながらなーさんに言った。
「また近くに敵がいるみたいだから、次はそいつを倒そう」
なーさんはかなり乗り気で言った。
「なぁ!」
俺はなーさんに次の敵の状況を伝えた。
「今度のダンジョンボアは2匹組のようだ」
その話をなーさんは真剣に頷きながら聞く。
「なぁ」
俺はなーさんに言った。
「今度は、一緒に戦おう」
なーさんはもちろんだと言いたげな顔で鳴いた。
「なぁ!」
俺は、追加で伝えた。
「これからは、2人で戦闘することが多いだろうから、連携の練習をしよう」
そんな意図があったんだという顔をしながら、なーさんは言った。
「なぁ!」
なーさんとのペアでの初戦闘だ。
どんな風になるかな。
楽しみだな。
俺はウキウキで言った。
「俺となーさんなら、最強の連携が出来るよね」
なーさんは頷きながら言った。
「なぁ!」
俺は号令をかけた。
「じゃあ、行くよ」
俺達は、2匹組のダンジョンボアの元へ行った。
ダンジョンボアが視界に入ったところで、なーさんに指示を出す。
「俺が、こっちから見て右側のやつを倒すから、その間に、もう1匹のほうの注意を引きつつ攻撃してくれ」
なーさんは頷きながら言った。
「なぁ」
俺は改めて号令をかけた。
「じゃあ行くよ」
戦闘が始まった。
俺は開始早々、片方のダンジョンボアに標的を絞り、矢を放つ。
1射目は外してしまった。
なーさんとの共闘で、テンションが上がりすぎていたのだろう。
俺は深呼吸をして、冷静さを取り戻し、改めて矢を放つ。
今度はきちんと当たった。
290ダメージ
いつもよりも距離があるからか、少しダメージが低いな。
まぁ、でもこんなもんだろう。
そう思いながらもう1射。
それも綺麗に横っ腹に当たった。
294ダメージ
この攻撃を受けて、俺が狙っていた方のダンジョンボアは倒れた。
俺は、意識をもう1匹の方に移す。
もう1匹の方は、なーさんが羽と口で攻撃しながら注意を引いていた。
なーさんはああやって物理では戦うんだな。
そう思いながら、なーさんに声をかけた。
「なーさん、そっちに攻撃開始するよ」
なーさんはこっちに届くぐらいの声量で鳴いた。
「なぁ!」
俺は、なーさんの鳴き声を合図に、もう1匹のダンジョンボアに攻撃を始めた。
冷静になって矢を放つ。
するときれに1射目から当たった。
312ダメージ
その1射で倒しきることが出来た。
なーさんが事前にある程度体力を削っていてくれたおかげだろう。
ありがとうなーさん。
なーさんに感謝をしていると、ウィンドウが出現した。
ダンジョンボア×2を討伐しました。
素材は、直接ストレージに入れられました。
獲得素材:猪肉×2
矢を2本回収しました。
経験値を得ました。
ウィンドウを見ている間に、なーさんが俺の元に戻ってきた。
近くにあるちょうど良い感じの石の上に座り、今回の戦闘の振り返りをしていく。
とりあえず、なーさんに言った。
「連携うまく行ったね」
なーさんは誇らしげに鳴いた。
「なぁ!」
連携というか、ここでの戦闘感があったのは、仕方がないことだな。
だって、1対1で戦えるモンスター相手に、2対1で戦う必要はないだのだから。
連携の改善点をあげるとしたら、麻植を出さずに連携を出来るとなお良いと言うことかな。
人相手の時とか、人の言葉を理解するなーさんみたいなモンスター相手の時に、以心伝心が出来たら、強いだろうから。
そう思いながら言った。
「もう少し改善した方が良いところは何個か会ったけど、良い連携だったんじゃないかな」
なーさんも頷きながら言った。
「なぁ、なぁ」
なーさん的にも反省する場所はあったんだろうな。
まぁ、でも初めてのことなんだから、反省することがあって当たり前だよな。
最初から完璧ではつまらないもんな。
そう思いながら言った。
「このまま2人でやっていけばすぐに連携も完璧になるだろうね」
なーさんも頷いてくれた。
「なぁ」
俺達の連携はまだまだ始まったばかりなんだ。
これからうまくなっていけば良い。
それに、今のは連携がそれほど必要なかっただけで、連携が出来なかった訳ではないしな。
俺は、そう思いながら言った。
「さすがに2戦連続でのレベルアップはないみたいだな」
さすがに連続でなーさんのレベルが上がるほど甘い訳ではないようだ。
なーさんは首をかしげながら言った。
「なぁ?」
俺は軽く笑いながら言った。
「なーさんがこのスピードで成長していったら、すぐに追い越されちゃうかもね」
モンスターの成長速度って人よりも遙かに早いイメージがあるしな。
気を抜いていると簡単に抜かれていってしまうよな。
なーさんは謙遜するかのように言った。
「なぁ、なぁ」
そういうことまでできるんだな。
すごいな。
俺は、なーさんに聞いた。
「なーさんは強くなりたいか?」
そもそも、なーさんは強くなりたいのだろうか。
望まぬことをやらせたくはない。
ゲームの中でまで誰かに強要されたり、誰かに何かを強要したりはしたくない。
なーさんはどう思っているのだろう。
なーさんはもちろんと言いたげな声で鳴いた。
「なぁ!」
なーさんには強くなりたいという気持ちがあるらしい。
これはうれしいな。
俺はうれしさを前面にだしながら言った。
「そうか、強くなりたいか。じゃあ修行をしないとだよな」
なーさんが首をかしげながら鳴いた。
「なぁ?」
修行が分からないのかな。
俺はわかりやすくかみ砕いて言い直した。
「いっぱい戦って強くならないとだなってことだ」
なーさんもそれで理解したようで、やる気の満ちあふれた目をして言った。
「なぁ!」
俺はなーさんのやる気に応えるためにつぶやいた。
「索敵」
次は、3匹組のダンジョンボアがいるみたいだ。
俺は、笑顔でなーさんに言った。
「次の敵を見つけたよ、じゃんじゃん行こう」
なーさんもうれしそうに鳴いた。
「なぁ!」
どうやらダンジョンボア側はまだこちらに気づいていないようだ。
俺は小声でなーさんに聞く。
「なーさん、あいつと戦えるか?」
なーさんは自信ありげに鳴いた。
「なぁ!」
これはやれると言うことでいいのかな。
それなら、今回は、なーさんに任せてみようかな。
なーさんの戦闘スタイルとか、なーさんの強さを知りたいし。
それに、危険になったら、すぐに矢を放って助ければ良いだろう。
俺は、なーさんに伝えた。
「そうか、ならまずはなーさんの戦闘スタイルとか実力を見たいから、出来るなら、1羽で戦ってくれ」
なーさん頑張ってくれ。
ここでどれぐらい頑張れるかで、俺達が今後どんな感じで戦うかが決まると思う。
なーさんに俺より後ろに待機してもらってそこから魔法を撃ってもらうことになるのか、アクロバットな動きで前衛を託すことになるのか。
それが決まると言っても過言ではない。
なーさんはもちろんだと言いたげな顔で鳴いた。
「なぁ」
少し不安があるのか、
声が少し元気がなかったな。
初の戦闘で、緊張しているのかな。
あり得るな。
俺も、初めての戦闘は緊張をした気がする。
あまり覚えていないけど。
それに、生後数分なのだ。
初めてのことに恐怖するのは当たり前のことだよな。
でも、これは大切なことなんだ。
なーさんが自分の身を自分で守れるとなると、なーさんの安全がかなり確保される。
俺は、なーさんの緊張を少しでも和らげられたらと思いながら言った。
「もちろんサポートはするし、危なかったら助けるからな」
なーさんは、俺の言葉を受けて自信を取り戻したのか、元気に鳴いた。
「なぁ!」
そう言って、なーさんは、ダンジョンボアに向かって行った。
俺はその背中になーさんに届くか届かないかギリギリの声でエールを送った。
「頑張って、なーさん」
なーさんが、ダンジョンボアと距離をつめていき、30m強ぐらいの距離になったときに、戦闘は始まった。
俺は、弓を構えいつでも矢を放てるような状態にしながら、なーさんとダンジョンボアの戦闘を眺める。
最初は警戒態勢で、どう出てくるのかを伺っているダンジョンボア。
なーさんは、ダンジョンボアの側面に回り込んで、魔方陣を展開しだした。
魔方陣が展開されたのは、ダンジョンボアの真上。
ダンジョンボアは気づいていないみたいだ。
なーさんは、数秒もしないうちに、魔方陣を完成させた。
完成させた魔方陣から純粋な炎が出てきた。
俺がイメージしていた魔法とは違うな。
俺のイメージは、もっとこう、人か水とか風とか土とかを、ボールとか、ランスとか、フォールとか決まった形にして出現させ、相手にぶつけるものだと思っていた。
どうやらその俺のイメージは間違っていたらしい。
なーさんは、ダンジョンボアを丸々飲み込むほどの炎を出現させ、ダンジョンボアを丸焦げにした。
炎に包まれたダンジョンボアは、まず炎から脱出しようと暴れ出した。
とりあえずまず、ダンジョンボアはなーさんの方を向き、なーさんに突進することで回避しようとする。
しかしそれを事前に読んでいたかのように、なーさんは、ダンジョンボアが走り出したタイミングで、ダンジョンボアの目の前に土の壁を魔法で築いた。
ダンジョンボアは、まだ加速段階だったためか、土の壁にぶつかってもあまりダメージを受けている様子はない。
ただ、前に出ようとした、ダンジョンボアの勢いをくじくには十分だったようだ。
多少のダメージといきなり目の前に壁が現れたこと、今もなお体が燃えていると言うことのトリプルコンボで、ダンジョンボアが混乱しだした。
向きを変えて、他の方向から脱出を図れば良いのに、ダンジョンボアはその場でゴロゴロと体を地面にこすりつけて火を消そうとした。
そんなもので、消せるほど、なーさんが放った火はやわではない。
ゴロゴロと転がるダンジョンボアは、数分もしないうちに動かなくなった。
動かなくなってから少しして、なーさんは、火の魔法も土の壁の魔法も解除した。
それと同時にウィンドウが出現した。
ダンジョンボアを討伐しました。
素材は、直接ストレージに入れられました。
獲得素材:猪肉×1
経験値を得ました。
なーさんのレベルが上昇しました。
なーさんは、SPを10、NPを5獲得しました。
なーさんが獲得したSPは、MPに10割り振られました。
なーさんが獲得したNPは、INTに5割り振られました。
なーさんのAGIが1上昇しました。
なーさんのDEXが1上昇しました。
なーさんのMPが1上昇しました。
なーさんのレベルが上がった。
獲得したSPは自動的にMPに割り振られたようだ。
獲得したNPの方は、INTに割り振られたらしい。
まぁ、今の戦闘を見たら妥当だな。
魔法しか使っていないからな。
良い判断だと思う。
確率で上がる方は、3つも上がっている。
まぁ、3つの内2つは100%上がるやつだからな。
そこまで多いとは思わない。
通常の運の範囲だろう。
これで、なーさんがさらに1つ強くなったな。
INTは15から20になったのか。
ということは次の戦闘からは、今の1.3倍ぐらいの魔法の威力になると言うことか。
すごいな。
かなり頼もしいな。
でも、あの魔法達って、前衛系の物理攻撃との相性が悪そうだな。
後衛の弓とかなら、魔法の影響は少ないだろうけど、剣とかで戦っていたら、火が熱くて攻撃どころではないだろうな。
そう考えると、俺となーさんの相性は良い方なのかな。
なーさんの物理攻撃との兼ね合いはどうするんだろうな。
炎の中を突っ込んでいって攻撃をするのかな?
危ないからそれは止めてほしいな。
まぁ、物理攻撃をするとなったら別のやり方があるんだろうな。
そういうことにしておこう。
それにしても、あの戦闘はすごかったな。
俺の戦闘とは全然違う戦闘だったな。
スカイバードって元々は、20層にいるようなモンスターだから、2層の魔物ぐらいなら生後数分でも完封できるのかもな。
恐ろしい戦闘だったな。
あんな戦い勝たされたら恐怖でこのゲームを止めるかもしれない。
ただただ火あぶり。
単純だけどすごく怖い戦法だな。
そう思っているうちに、なーさんが戻ってきた。
俺はなーさんに声をかけた。
「お疲れ様、なーさん」
なーさんは俺の声を聞いてホッとしたのか、ふぅと息を吐くように鳴いた。
「なぁ」
初の戦闘で緊張していたんだろうな。
もしくは、予定外のことがあって焦ったのかもしれないな。
それで、戦闘後に俺の顔を見て安心したんだろうな。
まぁ、何はともあれ、成功したのだから良い。
そして、この戦闘がなーさんの成長につながったのだとしたらなお良い。
俺は、さらになーさんをねぎらうように言った。
「戦闘、すごかったな」
信頼関係にはコミュニケーションが一番大切。
だから、俺はなーさんとコミュニケーションをとり続けるのだ。
そう思っていると、なーさんは誇らしげに鳴いた。
「なぁ!」
褒められてうれしいんだろな。
うれしそうななーさんを見ているとこっちまでうれしくなってくるな。
俺は、独り言をつぶやくように言った。
「魔法ってあんな感じなんだな」
俺の発言の意味が分からなかったのか、なーさんは首をかしげながら鳴いた。
「なぁ?」
俺は丁寧に説明するように言った。
「なんというか、もっと、『ファイアーボール』とか『ファイアーランス』とか『ファイアーウォール』とかそういう、形で出てくるのかと思ってたら、そのまんま燃えてびっくりしたよ」
なーさんはそうなんだという顔をしながら鳴いた。
「なぁ」
まぁ、褒められている訳でも、怒られている訳でもないから、反応が難しいんだろう。
無難に相槌を選択したと言うことかな。
俺は改めてなーさんを褒めた。
「さすがなーさんだな」
俺はそう言いながら、なーさんをなでた。
ちなみになーさんは、そこら辺の石に座っている俺の太ももの上にいる。
なーさんは今までで一番うれしそうに鳴いた。
「なぁ!」
戦闘に関して褒め終えたとして、俺は話を変えた。
「今回の戦闘で、なーさんがレベルアップしたみたいだね」
なーさんが、うれしそうに鳴いた。
「なぁ!」
強くなったことがうれしいのかな。
それとも俺が良いことを言う声色だったからうれしいのかな。
俺は、さらになーさんを褒めた。
「いろいろ能力が伸びててすごいね」
なーさんはうれしそうに鳴いた。
「なぁ! なぁ!」
俺は、なーさんに熱く語りかける。
「このままの調子でバンバン強くなっていこう」
なーさんは俺の言葉に真剣な顔をして返した。
「なぁ」
もちろんだと言うことで受け取って良いのかな。
とりあえずやる気は感じられるから次の戦闘をしたいな。
俺はそう思いながらつぶやいた。
「索敵」
割と近く。
もう少し戦闘が長引いていたら、漁夫の利のために参加していたかもしれないぐらいの距離に、2匹組のダンジョンボアの反応があった。
次の獲物はこれかな。
そう思いながらなーさんに言った。
「また近くに敵がいるみたいだから、次はそいつを倒そう」
なーさんはかなり乗り気で言った。
「なぁ!」
俺はなーさんに次の敵の状況を伝えた。
「今度のダンジョンボアは2匹組のようだ」
その話をなーさんは真剣に頷きながら聞く。
「なぁ」
俺はなーさんに言った。
「今度は、一緒に戦おう」
なーさんはもちろんだと言いたげな顔で鳴いた。
「なぁ!」
俺は、追加で伝えた。
「これからは、2人で戦闘することが多いだろうから、連携の練習をしよう」
そんな意図があったんだという顔をしながら、なーさんは言った。
「なぁ!」
なーさんとのペアでの初戦闘だ。
どんな風になるかな。
楽しみだな。
俺はウキウキで言った。
「俺となーさんなら、最強の連携が出来るよね」
なーさんは頷きながら言った。
「なぁ!」
俺は号令をかけた。
「じゃあ、行くよ」
俺達は、2匹組のダンジョンボアの元へ行った。
ダンジョンボアが視界に入ったところで、なーさんに指示を出す。
「俺が、こっちから見て右側のやつを倒すから、その間に、もう1匹のほうの注意を引きつつ攻撃してくれ」
なーさんは頷きながら言った。
「なぁ」
俺は改めて号令をかけた。
「じゃあ行くよ」
戦闘が始まった。
俺は開始早々、片方のダンジョンボアに標的を絞り、矢を放つ。
1射目は外してしまった。
なーさんとの共闘で、テンションが上がりすぎていたのだろう。
俺は深呼吸をして、冷静さを取り戻し、改めて矢を放つ。
今度はきちんと当たった。
290ダメージ
いつもよりも距離があるからか、少しダメージが低いな。
まぁ、でもこんなもんだろう。
そう思いながらもう1射。
それも綺麗に横っ腹に当たった。
294ダメージ
この攻撃を受けて、俺が狙っていた方のダンジョンボアは倒れた。
俺は、意識をもう1匹の方に移す。
もう1匹の方は、なーさんが羽と口で攻撃しながら注意を引いていた。
なーさんはああやって物理では戦うんだな。
そう思いながら、なーさんに声をかけた。
「なーさん、そっちに攻撃開始するよ」
なーさんはこっちに届くぐらいの声量で鳴いた。
「なぁ!」
俺は、なーさんの鳴き声を合図に、もう1匹のダンジョンボアに攻撃を始めた。
冷静になって矢を放つ。
するときれに1射目から当たった。
312ダメージ
その1射で倒しきることが出来た。
なーさんが事前にある程度体力を削っていてくれたおかげだろう。
ありがとうなーさん。
なーさんに感謝をしていると、ウィンドウが出現した。
ダンジョンボア×2を討伐しました。
素材は、直接ストレージに入れられました。
獲得素材:猪肉×2
矢を2本回収しました。
経験値を得ました。
ウィンドウを見ている間に、なーさんが俺の元に戻ってきた。
近くにあるちょうど良い感じの石の上に座り、今回の戦闘の振り返りをしていく。
とりあえず、なーさんに言った。
「連携うまく行ったね」
なーさんは誇らしげに鳴いた。
「なぁ!」
連携というか、ここでの戦闘感があったのは、仕方がないことだな。
だって、1対1で戦えるモンスター相手に、2対1で戦う必要はないだのだから。
連携の改善点をあげるとしたら、麻植を出さずに連携を出来るとなお良いと言うことかな。
人相手の時とか、人の言葉を理解するなーさんみたいなモンスター相手の時に、以心伝心が出来たら、強いだろうから。
そう思いながら言った。
「もう少し改善した方が良いところは何個か会ったけど、良い連携だったんじゃないかな」
なーさんも頷きながら言った。
「なぁ、なぁ」
なーさん的にも反省する場所はあったんだろうな。
まぁ、でも初めてのことなんだから、反省することがあって当たり前だよな。
最初から完璧ではつまらないもんな。
そう思いながら言った。
「このまま2人でやっていけばすぐに連携も完璧になるだろうね」
なーさんも頷いてくれた。
「なぁ」
俺達の連携はまだまだ始まったばかりなんだ。
これからうまくなっていけば良い。
それに、今のは連携がそれほど必要なかっただけで、連携が出来なかった訳ではないしな。
俺は、そう思いながら言った。
「さすがに2戦連続でのレベルアップはないみたいだな」
さすがに連続でなーさんのレベルが上がるほど甘い訳ではないようだ。
なーさんは首をかしげながら言った。
「なぁ?」
俺は軽く笑いながら言った。
「なーさんがこのスピードで成長していったら、すぐに追い越されちゃうかもね」
モンスターの成長速度って人よりも遙かに早いイメージがあるしな。
気を抜いていると簡単に抜かれていってしまうよな。
なーさんは謙遜するかのように言った。
「なぁ、なぁ」
そういうことまでできるんだな。
すごいな。
俺は、なーさんに聞いた。
「なーさんは強くなりたいか?」
そもそも、なーさんは強くなりたいのだろうか。
望まぬことをやらせたくはない。
ゲームの中でまで誰かに強要されたり、誰かに何かを強要したりはしたくない。
なーさんはどう思っているのだろう。
なーさんはもちろんと言いたげな声で鳴いた。
「なぁ!」
なーさんには強くなりたいという気持ちがあるらしい。
これはうれしいな。
俺はうれしさを前面にだしながら言った。
「そうか、強くなりたいか。じゃあ修行をしないとだよな」
なーさんが首をかしげながら鳴いた。
「なぁ?」
修行が分からないのかな。
俺はわかりやすくかみ砕いて言い直した。
「いっぱい戦って強くならないとだなってことだ」
なーさんもそれで理解したようで、やる気の満ちあふれた目をして言った。
「なぁ!」
俺はなーさんのやる気に応えるためにつぶやいた。
「索敵」
次は、3匹組のダンジョンボアがいるみたいだ。
俺は、笑顔でなーさんに言った。
「次の敵を見つけたよ、じゃんじゃん行こう」
なーさんもうれしそうに鳴いた。
「なぁ!」
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貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。
~あらすじ~
世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。
そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。
しかし、その恩恵は平等ではなかった。
富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。
そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。
彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。
あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。
妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。
希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。
英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。
これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。
彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。
テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。
SF味が増してくるのは結構先の予定です。
スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。
良かったら読んでください!
【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました
鳥山正人
ファンタジー
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だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。
チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。
2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。
そこから怒涛の快進撃で最強になりました。
鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。
※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。
その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。
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自筆です。
アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞
俺の職業は【トラップ・マスター】。ダンジョンを経験値工場に作り変えたら、俺一人のせいでサーバー全体のレベルがインフレした件
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現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!
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世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。
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至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!
オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】
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剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。
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ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。
「どうしたものかな」
入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。
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たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。
そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。
『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』
である。
50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。
ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。
俺もそちら側の人間だった。
年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。
「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」
これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。
注意事項
50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。
あらかじめご了承の上読み進めてください。
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