キメラスキルオンライン

百々 五十六

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1章 スタートダッシュ

川と水切り

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 サバイバルセットの片付けが終わった。
 ふぅ、広げるよりもしまう方が大変だな。
 というか、あんだけの物がよくあのサイズのものに入るな。
 片付けながら、感心しちゃった。
 そう思いながら、サバイバルセットをストレージに入れた。
 そのときちらっと、時計が見えた。
 ゲーム内時間が、3時過ぎになっていた。
 あれ、ログアウトするときって、22時過ぎ、23時の前ぐらいの時間だったよな。
 そこから、外で1時間しか過ごしていないのに、なんで3時になっているのかな。
 さすがに、3時間も片付けをしていた訳でもないよな。
 何でなんだろう。
 あぁ、そうだった。
 完全に忘れていた。
 ゲーム内の時間って、体感時間は外と変わらないように感じるけど、実際は、外の3倍の速度で進んでいるんだった。
 ここで1時間経ったかなとなったら、外では20分しか経っていないんだった。
 それを完全に忘れいたな。
 外で、1時間過ごしたと言うことは、その間に、こっちでは、3時間が経過しているんだ。
 そういうことなんだな。
 完全に忘れていたな。
 そだった。そういえば、ログアウトの時のウィンドウにも、疲労値の回復にはゲーム内時間では3時間以上かかるって書いてあったな。
 何で忘れてたんだろうな。
 だから、3時過ぎなのか。
 あれでも待てよ。
 22時過ぎにログアウトして、3時間経って、なんで3時なんだ?
 普通、1時じゃないか?
 まぁ、ログアウトしたのが、22時の後半だったから、2時ぐらいになるまでならなくはないだろう。
 それと、外には、1時間とちょっといたし、2時過ぎぐらいなら分かる。
 何で今は、3時なんだ?
 もしかして、俺って、サバイバルセットを片付けるのに、30分ぐらいかかったと言うこと?
 苦労したとは思ったけど、そこまで苦労したような気はしなかったんだけどな。
 俺ってそこまで不器用だったのかな。
 まぁ、初めてだし仕方がないのかな。
 そう思うことにしよう。

 今は、外では17時過ぎぐらい。
 外の時間では、ご飯を食べてから、10分20分経ったぐらいなのか。
 これって、なるべくこっちで生活した方が、3倍の時間を感じられてお得なんじゃないだろうか?
 まぁ、現実の生活もおろそかに出来ないから、そんなことはできなんだけど。
 時間の話はこれぐらいにしよう。
 俺は、気持ちを切り替えるためにも、なーさんに話しかけた。

「サバイバルセットも片付いたことだし、移動するか?」

「なぁ! なぁ!」

「どっちの方向に移動した方がいいと思うか?」

「なぁ!」

 なーさんは、そっちの方向に飛んで、くるくると旋回した。
 そっちに行けばいいと言うことなんだな。
 分かった。
 なーさんからのメッセージは受け取った。
 俺的にも、どっちに向かった方が良いのかを地図を眺めながら決めるよりも、なーさんについてった方が楽しそうだし、乗ることにしよう。

「そっちだな。分かった、なーさんを信じて、今度の行き先はあっちにしよう」

「なー、なぁ!」

「出発!」

 俺達は、なーさんを先頭に、移動し始めた。
 移動の途中で、何度か戦闘になったが、ダンジョンウルフがいなかったので、軽々撃破した。
 ダンジョンウルフがいないと楽だな。
 ダンジョンウルフがいる戦闘を一度経験すると、いない戦闘がすごく楽に感じる。
 何でなんだろうな。
 とにかく、楽しく進むという雰囲気を壊さない程度の戦闘が続いた。
 ちょっとした冒険気分になるから、逆に気分的には良かったのかもしれない。
 適度な戦闘を終え、エリアが変わったところで、なーさんがくるくると旋回しながら鳴いた。

「なぁ、なー」

 ここで到着と言うことなのかな。
 このエリアは何のエリアなんだろう。
 そう思いながら、俺は辺りをキョロキョロと見渡した。
 俺は、キョロキョロ周りを見ながら言った。

「なーさんのおすすめの場所はここか?」

「なぁ!」

「ここなのか」

「な」

 俺は、なーさんと話している間に、川を見つけた。
 かなり奥の方にあって、ざっと見ただけでは見つからなかったが、細かく見ていくと、なんとなく川があることが分かった。
 ここは、川のエリアか。
 そういえば、3層に来たときに川の話をしていたな。
 それもあって、なーさんが連れてきてくれたのかもしれないな。
 俺は、しみじみと言った。

「まさかなーさんが川を見つけていたとは」

「なぁ!」

 なーさんは誇らしげになく。
 この距離がちょうど良いな。
 よく見ると川を見つけるぐらいの距離感。
 目の前まで来てから、発表されても、ある程度手前から見えていることになるだろう。
 そうなったらかなりのネタバレをくらうことになる。
 だから、このぐらいの距離で、ギリギリ一見何のエリアか分からないぐらいがちょうど良いな。
 俺は、改めてなーさんに感謝した。

「行きたかった川に来れたのは、なーさんのおかげだな。ありがとう」

「なー」

 川かぁ。
 なんとなく来たかったんだよな、川。
 というか、なーさんは何でここを知っているんだろうか?
 そう思いながらなーさんに聞いた。

「ここは、散歩の時に見つけたのか?」

「なぁ! な」

 俺が、ログアウトしている間に見つけたんだな。
 俺がログアウトしている間と言っても、なーさんも疲労値の回復をしていたんだし、散歩に行ける時間も限られているよな。
 限られた時間で、よく見つけたな。
 運が良かったのか、それとも、頑張って探してくれたのか。
 多分両方なんだろうな。
 俺は、なーさんをさらに褒めた。

「そうなのか。散歩は、大成功だったんだな」

「なー、なぁ!」

「川辺は、他よりもちょっとだけ涼しい気がするな」

「なぁ!」

「もうちょっと川の方に行くか」

「なー、な」

 俺達は、川の近くに移動した。
 なーさんが見つけてきてくれた川は、どちらかというと、上流側の川だ。
 あまり川幅が広くなく、ある程度流れのある川。
 まだ麓まで行ききっていないし、こんなもんだろう。
 川辺でキャンプをしたり、バーベキューをしたりするような下流の川というよりは、ゴツゴツした感じの上流の川だ。
 まぁ、山だしな。
 ゲートからある程度下ってきているとは言え、ここもかなり山だからな。
 上流の川になるんだろうな。
 俺は、川を眺めながら言った。

「川だな。ちゃんと川だな。どちらかというと、上流の方の川だな」

「なぁ!」

 川の幅は、数メートル程度。
 川底も見えるしそこまで深い訳でもないだろう。
 水量もそこそこ、渡ろうと思えば、あっち側に行けるぐらい。
 俺は、川を観察しながら言った。

「頑張れば向こう側に渡れそうな川だな」

「なぁ!」

 俺は、指先で水に触れた。
 冷たい。
 俺は、なーさんに伝えるように言った。

「水も冷たい」

「なー」

「何というか、今まで見たエリアの中で一番感動している」

「な?」

「ここが今までで一番、3層にとしての新しさが感じられるからな」

「なー」

 俺は好奇心から言った。

「ここは特有の敵が出てきたりするのかな?」

「なー?」

 草原では、ダンジョンディアに出会い、岩場では、ダンジョンウルフに出会った。
 それなら、この川のエリアでは、何かしらのモンスターに出会うのではないだろうか。
 例えば川で泳ぐ魚がたのモンスターとか。
 有り得るんじゃないかな。
 2種類も出てきたんだし、3種類目ぐらい有り得るだろう。
 そう思いながら言った。

「川魚系のモンスターとか」

「なぁ、な?」

「楽しみだな。3層に来てから、2種類も新しいモンスターを見つけているのだから、3種類ぐらいいても不思議じゃないよな!」

「なー」

「2も3も変わらないよな」

「な」

 だんだん居そうな気がしてきた。
 なんかわくわくしてきたな。
 魚系のモンスターか。
 どうやって戦おう。
 なーさんの魔法で川に雷を落として倒せないかな。
 そうじゃないとすれば、どうしようもないのかもしれないな。
 川に向かって矢を放つのはなんかしっくりこないからな。
 俺は、わくわくしながらつぶやいた。

「索敵」

 索敵には何も引っかからなかった。
 いや、引っかかりはしたのだ。
 遠くの辺りに、ダンジョンボアとか既存のモンスターはいくつかのモンスターは引っかかった。
 けど、新しいモンスターの反応は1つもなかった。
 ということは、新たなモンスターはいないと言うことかな。
 可能性は0と言うことはないだろうけど、限りなく0に近いんだろうな。
 俺は、一気に冷静になった。
 俺は少し残念がりながら言った。

「川の中には、それっぽいのはいないみたいだな」

「なぁー、な」

「残念だな」

「な」

 俺はあ、新たな疑問が浮かんだので、言葉に出した。

「モンスターがいないだけで、魚自体はいるのかな?」

「なぁ?」

 魚のモンスターはいなかったけど、川なのだから、普通の魚は居るのかな。
 そもそも、ダンジョン内に普通の生物って居るのかな。
 そこが一番気になるよな。
 ここに魚が居るとしたら、森のフィールドとか草原のフィールドに、虫が居たり野生の動物が居たりするということになるのかな。
 それも気になるな。
 俺は、熱心に川の様子を観察した。
 しばらく熱心に観察した結果、見つけることが出来なかった。
 ダンジョン内にはモンスターしか生物は居ないと言うことなのかな。
 俺は、少し残念に思いながら言った。

「全然見つからないな。何でなんだろう?」

「なぁ」

「元からいないのかな? それとも、俺では認識できないのかな?」

「な? なぁ?」

「俺が『釣り』スキルとかを持っていたら、確認できるのかな。もしくは、俺が知らないだけで、川魚を見るための専用のスキルでもあるのかな?」

「なぁ? な?」

 さっきから残念がることが多いな。
 残念がると言うことは、その分期待があると言うことだから、悪いことではないのだろうけど、多いな。
 それだけ期待が多いエリアと言うことなんだろう。
 まぁ、魚に関しては、現時点では見つけることが出来なかった。
 だからといって、いないという証拠がある訳でもないから、分からないという結論が妥当かな。
 俺は、冷静さを取り戻して言った。

「とにかく俺では見えないことがわかったな」

「な」

「川には来たかったけど、川に来たからと言って何かすることがあるかと言われるとないよな」

「なぁー」

「まぁ、とりあえずここで一通りくつろぎますか」

「なぁ!」

 それから、普通に川を眺めたり、水に触れたりしながら過ごした。
 新しいエリアに来たことで、なんか気持ちがリフレッシュできたような気がしてきた。
 そもそも、一度ログアウトして戻ってきたことでなんとなくリフレッシュできたような気がしていたけど、それ以上にリフレッシュできている気がする。
 そうこうしていると、なんとなく怪しい場所を見つけた。
 ミニクエストの気配のある場所。
 他と比べたときに、少しだけ整えられている場所を見つけた。
 俺は、なーさんに向かって言った。

「なんか見つけた」

「な?」

 そこに行くとすぐに、クエストのウィンドウが出た。
 やっぱりクエストなんだなと思いながら、その文を読んだ。


 ミニクエスト《川で水切りをしよう》

 川で水切りをして遊んでみましょう。
 水を切れた数の最高記録によって景品があります。
 この結果でいいと思ったタイミングで、『満足』ボタンを押してください。

 『満足』


 ただ水切りをするだけなんだな。
 まぁ、ケルンの時もただケルンを作るだけだったよな。
 というか、こういうのってエリアごとにあるんだな。
 ということは、最初の草原エリアにも何かしらあったのかな。
 もしかしたら、俺が見つけていないだけで、1つのエリア内に複数あるのかもしれないな。
 まぁ、とりあえず、今は、ここで石切をやることにしよう。
 俺は、なーさんに言った。

「水切りだって」

「なぁ」

 水切りをする場所としては、上流過ぎないかな。
 もうちょっと川幅の広いところで、流れの緩やかなところでやるもんなんじゃないの?
 どうやっても川岸に届かないような、川辺がここみたいに、岩場のようなゴツゴツした石とか岩とかがあるようなところではなく、丸い石でできているようなところでやるもんなんじゃないの?
 そう思いながら言った。

「水切りをするには上流の川過ぎると思うんだけど」

「なぁ?」

「水切りをするならもうちょっと、川下の方が良いんじゃないかな。ここでも、ある程度の川幅があるけど、ちゃんとやるにしては、距離が短い気がするし」

「なぁ、なぁ」

「なぁとりあえずやってみるか」

 俺は、そこら辺にある、あまり丸くない石を持って水切りをやってみた。
 最初は感覚が掴めずに、1回もしくは、1回もはねずに石が沈んでいった。
 これは、どうやるのが正解なんだろうかと試行錯誤をして続けていった。
 すると、1回また1回と回数を増やしていった。
 最高記録は7回まで行った。
 その後は、5前後を中心に、たまに7回みたいな推移をしていった。
 しばらくして、飽きてきたので、手を止めて言った。

「うん、もう良いかな」

「なぁ?」

「これぐらいだよな。7回って、割と自己最高記録なんじゃないかな」

「なぁ」

 俺は、ウィンドウの『満足』ボタンを押した。
 すると、そのウィンドウは消えていった。
 そして、すぐに違うウィンドウとともにアナウンスが流れた。


 《ミニクエスト》《川で水切りをしよう》をクリアしました。
 作成したミニケルンの評価は、C+です。
 報酬、アクセサリー『水切りの石』を獲得しました。

 以上で《ミニクエスト》《川で水切りをしよう》は終了です。
 お疲れ様でした。

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