僕が迎えに行くまで待ってて

伏見うづら

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3歳の頃、近所のスーパーでキッズモデルにスカウトされた。
スカウトのおばさん曰く、俺は天使のように可愛いらしい。
俺はそのとき、自分の類い稀なる魅力を自覚してしまった。

小学校に入学する頃には九九も、47都道府県も全部言えた。
身長はクラスで一番高く、足も速いし、ドッジボールも強かった。
俺のような才能に溢れた優秀な子供を、世間では『神童』と言うらしい。

同年代の子どもは皆、幼稚すぎるので俺の話についていけない。
かくれんぼなんかをすると、俺があまりに上手に隠れるせいで、いつまでも見つからなかった。
同じレベルで遊べない俺は、周囲の子どもたちから少し浮いていたかもしれない。
仕方がない。天才とは時に孤独なものだ。

天才ゆえに孤独な俺に心を許せる友人はいなかったが、俺を崇める信者のような存在はいた。
幼馴染の蓮はいつもぼーっとしていて、要領の悪い、大して見どころのない子供だった。
ただ、俺のことを心底崇拝しているらしく、何をしていても気づけば隣にくっついていた。
俺は構いもしないのに、1人で本を読んでいても、砂場で遊んでいても、黙って横にいて、ちょっと話しかけてやると、すごいすごいと俺を褒め称えた。
かくれんぼのときも、蓮だけはしつこく俺をいつまでも探していた。
日が暮れても諦めずに探し続ける蓮を哀れに思い、わざと簡単な場所に隠れてやることもあった。
蓮はちんちくりんで、のろまで、泣き虫だった。
『神童』なのに心まで広い俺は、いつも仕方なく、蓮の面倒を見てやっていた。

蓮はどんくさい子供だったが、俺ほどではないものの、見目は整っていた。
ふわふわの髪は色素が少し薄いのか、太陽の下だとミルクティーのようなベージュに見えた。頬は子供らしく、ふくふくとしていて、目は丸くてビー玉のようだった。
顔は可愛いのにのろまで、自分の意志をはっきり言わず、ふにゃふにゃ笑っているだけなので、いつも蓮の周りは、蓮を取り合ってのケンカが絶えなかった。
そういうとき、蓮は困ったような顔をしているだけで何もしないので、いつも俺が巧みな話術で場を収めていた。

通学路に露出狂が現れたら蓮の手を引いて逃げてやったし、九九も漢字も全部教えてやった。
その度に、蓮はふにゃふにゃ笑って、駿ちゃんすごい、と無邪気に手を叩いた。


俺の順風満帆な人生に僅かな陰りが見え始めたのは中学に入学した頃からだった。不可解なことに、突然テストの点数が振るわなくなったのだ。
満点近い点数が取れていたはずなのに、1年、2年と学年が上がるごとに、90点、80点と徐々に落ちていった。
更に不穏なことに、身長の伸びまで鈍くなり始めた。
小学生の間、ぐんぐん伸びていた身長は、段々勢いを失い、とうとう中学3年生のときにピタリと止まり、周囲にどんどん抜かれていった。
中3までに身長が175センチを超える、という人生設計は修正を余儀なくされた。
あのちんちくりんだった蓮までもが俺の身長を抜いていったのは流石に不愉快だった。
高校で成長期が到来する男子も珍しくない、と自分に言い聞かせていたが、高校卒業まであと1年を切った今でも、俺の身長はうんともすんとも言わない。

返却されたばかりの健康診断の結果を握りしめ、わなわなと震えていると、はるか上空から眠そうな声が降ってきた。

「駿ちゃん、どうかしたの…?」

「蓮、お前、身長いくつだ。」


「えっと、184.5センチ。」

蓮はたいして興味なさそうに、手元の診断結果の数値を読み上げた。

「あ、でも、これ測ったの4月だから、今だともう少し伸びてるかも。」

「…」

俺が何も言わずに黙り込んでいると、蓮はまた眠そうな声で訊ねた。

「駿ちゃんは何センチだった?」

まったく空気の読めない奴だ。これだから馬鹿は嫌いなんだ。
俺が蓮の愚鈍さに腹を立てていると、蓮は俺の手元から診断結果をひょいと取り上げた。

「…167センチ。よかったね駿ちゃん、0.5センチも伸びてるよ。」

「俺ぐらい魅力に溢れていると、身長はあえてこれぐらいの方が親しみが湧くんだ…!」

お前みたいな奴を、世間では独活の大木と呼ぶんだぞ!と言ってやると、蓮はまたふにゃりと笑って、確かにそうだねー、と返してきた。

俺とは正反対に、蓮の身長は中学に入った頃から、日毎にぐんぐん伸びていった。
その体格を見込まれた蓮は、バスケ部に入部した。
のろまでどんくさい蓮にバスケなんて絶対無理だと思っていたが、それなりにやれていたらしく、中学からずっとレギュラーで活躍して、この夏の大会で引退した。

俺はスポーツなんて子供だましに時間を割いていられないので部活には入らず、ずっと図書委員をしている。
放課後の図書室は静かで、自主学習にはもってこいだ。
俺のような優秀な人材は勉学に励み、将来は世のため人のためにならなければ。
原因は不明だが中学以降俺の成績はイマイチなので、それなりに努力が必要なのだ。

「駿ちゃんはやっぱりすごいなぁ。」

駿は無駄にデカい手で俺の髪をぐりぐりとかき混ぜた。

「当たり前だ…!俺の尊い頭に気安く触るな、あほ!」

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