虐げられてきた令嬢は、冷徹魔導師に抱きしめられ世界一幸せにされています

あんちょび

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古代魔法の目覚め

12.価値と力

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 春の陽光が王都学園の広大な中庭を照らし、桜の花びらが淡く舞い落ちる中、アリシアは招待状を手に、少し緊張した面持ちで正門をくぐった。

 ――なぜ私が、この学園行事に?

 レオンの手厚い後押しがなければ、考えられないことだった。王都の名門学園が催す春の祭典は、貴族や魔導師の子弟たちが集まる社交の場であり、アリシアのような「特別な力を持つ者」も、正式な招待を受けることでしか顔を出せない。

 しかし、招待状を受け取った理由は明確だった。
「希少な魔力を持つ令嬢として、評価されるべき存在だと認められたのだ」

 レオンの言葉が思い返される。冷徹で無表情な彼が、少しだけ誇らしげにうなずいてくれた瞬間を、アリシアは胸に刻んでいた。

 塔を離れ、馬車に揺られること数刻。学園の正門前に到着すると、すでに色とりどりのドレスや制服に身を包んだ学生たちが笑い声を響かせていた。中には名高い貴族の令嬢や王子もいて、空気は華やかでありながら、同時に微妙な緊張感が漂っている。

 「……ここに、私が入ってもいいのかしら」

 心細さと期待が入り混じる中、背後から冷たい声が聞こえた。

 「あら、お姉さま……また来たの?」

 振り返ると、妹カトリーナが、学園行事に合わせて同じように華やかな装いで立っていた。尖った笑みが、アリシアの心臓をぎゅっと締め付ける。

 「お姉様、塔に籠もってばかりで、この世界のこともわからないでしょう? こんな所にまで恥をかきに来たの?」

 王太子エドワードも近くにおり、彼の無関心そうな視線がアリシアを貫く。昔と同じく、認められることはなかった。

 だがその時、アリシアの隣に人影が現れる。

 漆黒の外套を翻し、闇夜のように冷たい瞳を向ける――レオンだ。

 「……アリシアを侮辱するのはやめろ」

 言葉は短く、冷徹そのものだった。

 カトリーナは一瞬で顔色を失い、舌打ちを漏らす。王太子も思わず視線を逸らした。

 学園行事の会場内では、次々と学生や教師たちの注目がアリシアに集まる。冷たい笑みや嘲笑が飛んでくる一方、レオンが隣にいることで、以前とは全く違う空気を感じていた。

 「皆、よく見ておけ。彼女は、ただの令嬢ではない」
 その短い一言が、アリシアの名誉を守った。

 注目が集まる中、アリシアは皆の前で金の炎を出す。

 少しの緊張もあったが、塔での日々で培った技量が自然と手を導いた。

 「……すごい……!」「あれが稀少魔法……綺麗」

 アリシアの稀少魔法を直に見た者たちの称賛の声が至る所から聞こえてきた。
 
 周囲の視線が、ざわめきから尊敬に変わる瞬間を、彼女は肌で感じた。

 行事は学園の庭園を巡る小さな競技や、魔法のデモンストレーションなど多彩な催し物で構成されていた。

 その後もアリシアはレオンの指示を受けつつも、少しずつ笑顔を取り戻した。

 競技が進むにつれ、カトリーナは苛立ちを隠せなくなった。アリシアの実力が明らかになるにつれ、嘲笑の言葉は消え、焦燥と嫉妬の色に変わる。王太子もまた、以前の無関心とは異なり、アリシアの実力に目を向けざるを得なくなった。

 そして競技の最後、アリシアが小さな魔法の演習で光の球体を自在に操る姿を披露した瞬間、周囲の観衆が息を呑む。レオンは冷静を装いながらも、内心で微かに微笑んだ。彼女の成長が、こうして公の場で証明される――それだけで十分だった。

 「今日、お前が見せたのは才能だけではない。誇りと自信だ」

 行事が終わりに近づく頃、アリシアはレオンの言葉に背筋を伸ばす。塔で守られ、育まれた自信は、ついに公の場でも通用することを知ったのだ。

 カトリーナは悔しげに唇を噛み、王太子も言葉少なに視線を逸らす。アリシアの心には、長年感じることのなかった充足感と、ほのかな勝利感が芽生えていた。

 「……レオン様、ありがとうございます」

 小さく呟く声に、レオンは微かにうなずく。短い言葉しか交わさずとも、二人の間に確かな絆が存在することは、誰の目にも明らかだった。

 桜の花びらが舞う学園の中庭。アリシアは初めて公の場で、自分の価値と力を示すことができた。冷たい視線も、嘲笑も、もう彼女を傷つけはしない。

 そして、隣で堂々と立つレオンの存在が、これからの未来を照らす光になることを、アリシアは確かに感じていた。
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