最初のものがたり

ナッツん

文字の大きさ
44 / 87

ダンス

しおりを挟む
とうとう、高校生になって初めての夏休みになった。

が、思いのほか暇を持て余し、
その度に自然と体がショッピングモールに向かってた。

あの日見かけたダンスチームが、頭から離れない。

毎日こっそり通うようになって、もう1週間もたった。

ただそこで彼らのダンスを見て過ごす夏休み。
自分でも不思議だけど勝手に足が向く。

「ねぇ、毎日見に来てるよね」

そう突然、声をかけられた。

ショートカットの背の高い女の子。

たぶん、年上なんじゃないかな。

ものすごく、大人っぽい。

美人だなぁと見とれた。

「いや、あの、通りかかっただけです」

そう言うと彼女はちょっと意地悪そうに笑って

「通りかかるって、毎日?
言い訳するって事はタツキの追っかけか」

ちょっと睨みをきかせて私を見る彼女は、
美人だからか余計に迫力がある。

怖い。

「どーしたミッキー」

踊ってた輪の中から1人の男の子が走ってきた。

他の子達もこちらを注目してる。

ミッキーと呼ばれた彼女は、私を指さして大声で話した。

「この子、タツキの追っかけみたいだよ。
毎日こっそり見ててストーカかもしれない」

走って来た男の子がじっと私を見てる。

彼がタツキなのか?

観察するように、警戒するように、目を細めてじっと見られた。

ヤバイ、完全にストーカーになってる!

「違います。すみません」

急いで逃げようとする私に彼が呟いた。

「ちび?」

そのあまりにも懐かしいアダ名に、
自分の事だと気がつくまでに時間がかかった。

「ちびだよね?えっと、ナナミでしょ?」

まじまじと彼を見る。

タツキって名前、どっかで。

記憶をたどる。

その時また輪の中から、
別の声がして女の子が走って来た!

「あーナナミだ!ねぇ、ナナミだよね。
私、アヤノ。覚えてない?
小学校の時に一緒にダンスチーム組んだじゃん。」

そう言われて気が付いた。

そーだ、アヤノ!そして、タツキ!

同じダンススクールの仲間だった!

私は小学生だったけど、中学生の年長チームに混ぜてもらってたんだ。

その時のチームメイト。

アヤノは1こ上でタツキは2こ上だ。

あー懐かしい。

「アヤノー思い出した!アヤノだ!懐かしい。
変わってない!タツキも思い出した!懐かしい!」

ポカンとしているミッキーと呼ばれた彼女をよそに、私達は懐かしんで盛り上がった。

話していくうちにアヤノとタツキは
ダンス好き仲間と集まって毎日練習したり、
時々イベントに出てる事を知った。

そして驚いた事にタツキもアヤノも
ミッキーと呼ばれてたみゆきさんも私と同じ学校だった。

もう1人「おい、トモ!」と呼ばれ来た男の子も同じ学校で、しかも同じ学年だった。

学校にダンス部がないから、
こうやって他校の子も交えて踊ってるらしい。

ひと通り懐かしみ、また見に来てもいいかとお願いして、今日は帰る事にした。

タツキとアヤノは私をダンスに誘ってくれたけど、断わった。

私は辞めたんだから。

でもまた明日も見に行く!

何でかな、ダンスは辞めたのにここに来たい。

心の奥底に眠っていた何かが動き出した。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

友達婚~5年もあいつに片想い~

日下奈緒
恋愛
求人サイトの作成の仕事をしている梨衣は 同僚の大樹に5年も片想いしている 5年前にした 「お互い30歳になっても独身だったら結婚するか」 梨衣は今30歳 その約束を大樹は覚えているのか

貴方の側にずっと

麻実
恋愛
夫の不倫をきっかけに、妻は自分の気持ちと向き合うことになる。 本当に好きな人に逢えた時・・・

【完結】少年の懺悔、少女の願い

干野ワニ
恋愛
伯爵家の嫡男に生まれたフェルナンには、ロズリーヌという幼い頃からの『親友』がいた。「気取ったご令嬢なんかと結婚するくらいならロズがいい」というフェルナンの希望で、二人は一年後に婚約することになったのだが……伯爵夫人となるべく王都での行儀見習いを終えた『親友』は、すっかり別人の『ご令嬢』となっていた。 そんな彼女に置いて行かれたと感じたフェルナンは、思わず「奔放な義妹の方が良い」などと言ってしまい―― なぜあの時、本当の気持ちを伝えておかなかったのか。 後悔しても、もう遅いのだ。 ※本編が全7話で悲恋、後日談が全2話でハッピーエンド予定です。 ※長編のスピンオフですが、単体で読めます。

貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈

玖羽 望月
恋愛
朝木 与織子(あさぎ よりこ) 22歳 大学を卒業し、やっと憧れの都会での生活が始まった!と思いきや、突然降って湧いたお見合い話。 でも、これはただのお見合いではないらしい。 初出はエブリスタ様にて。 また番外編を追加する予定です。 シリーズ作品「恋をするのに理由はいらない」公開中です。 表紙は、「かんたん表紙メーカー」様https://sscard.monokakitools.net/covermaker.htmlで作成しました。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

私は秘書?

陽紫葵
恋愛
社内で、好きになってはいけない人を好きになって・・・。 1度は諦めたが、再会して・・・。 ※仕事内容、詳しくはご想像にお任せします。

嘘をつく唇に優しいキスを

松本ユミ
恋愛
いつだって私は本音を隠して嘘をつくーーー。 桜井麻里奈は優しい同期の新庄湊に恋をした。 だけど、湊には学生時代から付き合っている彼女がいることを知りショックを受ける。 麻里奈はこの恋心が叶わないなら自分の気持ちに嘘をつくからせめて同期として隣で笑い合うことだけは許してほしいと密かに思っていた。 そんなある日、湊が『結婚する』という話を聞いてしまい……。

処理中です...