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特別編 プロローグ(勇磨sideーアオハル)9
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慣れない練習と運動神経が絶望的な事が重なり、木下は両手首を少し痛めていた。
テーピングで固定して体育にも参加していた。
女子はバスケの練習試合か‥。
練習の成果、見せろよ。
俺のコーチとしての威信がかかってる。
なのにアイツはパスをされても落とし、逆にパスを出したつもりなんだろうけど、お門違いな方へ投げチームを惑わす。
しかも相変わらず口が開きっぱなしだ。
何やってんだよ。
俺の指導を無駄にしやがって。
木下と目が合った。
ばーか。
そう声は出さずに言ってやった。
ふてくされた顔で俺を睨んだその時に相手チームの女子が木下に体当たりした。
衝撃で転んだ木下の痛めている手首を別の女が踏んだ。
必死に立ち上がろうとする木下の背後からまた別の女が体当たりをし倒した。
手首に激痛が走り、顔を歪めている。
アイツら‥。
木下は泣いたり逃げたりせず、結託して嫌がらせをした女達に刃向かおうとしていた。
あれは怒っている目だ。
まずい。
咄嗟に木下のそばに駆け寄り手を引いて体育館から連れ出した。
体育館内に響き渡る悲鳴に動揺した木下は周囲をキョロキョロと不安そうにながめ、「地震?火事」と非常事態に陥っていると勘違いしていた。
でもこれで決定した。
こいつは俺が女にいわゆる、モテるという事を知らない。
女の手を引いて歩く俺の姿にショックを受ける女がいるなんて想像もしないのだろう。
本当に、俺に興味がない。
その証拠に木下をボコった女3人が俺に媚びた涙目であくまでも試合中の事故だと訴えた事に対して俺が切り捨てると、
「ごめんね、工藤くん、中2病なんだ」
と3人に謝った。
つまり、木下は自分を気に入らない女が意地悪をしてきたのに、俺がしゃしゃって自分毎にしていると、そう思っているんだ。
なんでも自分が関わっている。
俺が世界の中心のような。
痛い男だと。
コイツ、腹立つなぁ。
だから思わず言ってやったんだ。
「はぁ。お前さぁ…
自分を庇ってくれた人間に中2病とか、よく言えんな。」
「前も言ったけど周りをよく見ろ。
観察しろよ。興味持て。」
決して俺に興味を持てという意味ではない。
さすがの木下も、3人の女が怒る俺に欲情し、話ができたと浮つく姿を見てやっと気がつきはじめているようではあった。
さらに、
俺が木下を保健室へ連れていく間にすれ違う女達の悲鳴や泣き出す姿に確信を持ち始めているようだった。
ここまで俺に興味がないとはどういうことなんだ。
というか逆にコイツはどんな男なら興味を持つんだ?
ふと思い当たった。
数日前、体育の、授業前にぼーっと寝ていた木下を起こした時だ。
完全に寝ぼけた状態で目は虚だったけど、俺をまっすぐに見つめて「つばさくん、す、」
そう言った。
つばさって誰だ?
すきだと言おうとしていたのか。
そいつになら興味を持てるのか。
どんな奴なんだ。
まぁ、どうでもいいけどな。
「工藤くんって、モテるの?」
バカみたいな質問をされて、意地悪をしたくなった。
至近距離でかがんで顔を近づける。
目を合わせて優しく微笑んでみせた。
「ねぇ、木下さん?俺をどう思う?」
目線を外さず見つめてみた。
だけど、木下は照れる事も惚ける事もなく
淡々と観察しはじめた。
「言っていいの、本当に」
そう前置きして
「妹に愛嬌とコミュ力を、
全て持っていかれた可哀想な子かな。
でも、陰気野郎ではなかった。
感情もありそうだし。安心したよ」
笑顔が一瞬で崩れた俺を見て爆笑した。
「ごめん、ごめん、外見の事でしょう。
整ってるなって思うよ。
好きずきだけど、
工藤くんみたいな顔立ちが好きな子も多いのかなって。
だからモテるんだよね。
さっきから、女の子達、注目してるもんね。」
フォローされた。
なんだ、これ。
俺が欲しがりみたいじゃないか。
だけど、コイツ、最高だ。
予想の上をいく女だ。
楽しいと心から思った。
女の友達って、こんな感じなんだと思った。
たとえ中2病扱いされたとしても、この関係は悪くない
テーピングで固定して体育にも参加していた。
女子はバスケの練習試合か‥。
練習の成果、見せろよ。
俺のコーチとしての威信がかかってる。
なのにアイツはパスをされても落とし、逆にパスを出したつもりなんだろうけど、お門違いな方へ投げチームを惑わす。
しかも相変わらず口が開きっぱなしだ。
何やってんだよ。
俺の指導を無駄にしやがって。
木下と目が合った。
ばーか。
そう声は出さずに言ってやった。
ふてくされた顔で俺を睨んだその時に相手チームの女子が木下に体当たりした。
衝撃で転んだ木下の痛めている手首を別の女が踏んだ。
必死に立ち上がろうとする木下の背後からまた別の女が体当たりをし倒した。
手首に激痛が走り、顔を歪めている。
アイツら‥。
木下は泣いたり逃げたりせず、結託して嫌がらせをした女達に刃向かおうとしていた。
あれは怒っている目だ。
まずい。
咄嗟に木下のそばに駆け寄り手を引いて体育館から連れ出した。
体育館内に響き渡る悲鳴に動揺した木下は周囲をキョロキョロと不安そうにながめ、「地震?火事」と非常事態に陥っていると勘違いしていた。
でもこれで決定した。
こいつは俺が女にいわゆる、モテるという事を知らない。
女の手を引いて歩く俺の姿にショックを受ける女がいるなんて想像もしないのだろう。
本当に、俺に興味がない。
その証拠に木下をボコった女3人が俺に媚びた涙目であくまでも試合中の事故だと訴えた事に対して俺が切り捨てると、
「ごめんね、工藤くん、中2病なんだ」
と3人に謝った。
つまり、木下は自分を気に入らない女が意地悪をしてきたのに、俺がしゃしゃって自分毎にしていると、そう思っているんだ。
なんでも自分が関わっている。
俺が世界の中心のような。
痛い男だと。
コイツ、腹立つなぁ。
だから思わず言ってやったんだ。
「はぁ。お前さぁ…
自分を庇ってくれた人間に中2病とか、よく言えんな。」
「前も言ったけど周りをよく見ろ。
観察しろよ。興味持て。」
決して俺に興味を持てという意味ではない。
さすがの木下も、3人の女が怒る俺に欲情し、話ができたと浮つく姿を見てやっと気がつきはじめているようではあった。
さらに、
俺が木下を保健室へ連れていく間にすれ違う女達の悲鳴や泣き出す姿に確信を持ち始めているようだった。
ここまで俺に興味がないとはどういうことなんだ。
というか逆にコイツはどんな男なら興味を持つんだ?
ふと思い当たった。
数日前、体育の、授業前にぼーっと寝ていた木下を起こした時だ。
完全に寝ぼけた状態で目は虚だったけど、俺をまっすぐに見つめて「つばさくん、す、」
そう言った。
つばさって誰だ?
すきだと言おうとしていたのか。
そいつになら興味を持てるのか。
どんな奴なんだ。
まぁ、どうでもいいけどな。
「工藤くんって、モテるの?」
バカみたいな質問をされて、意地悪をしたくなった。
至近距離でかがんで顔を近づける。
目を合わせて優しく微笑んでみせた。
「ねぇ、木下さん?俺をどう思う?」
目線を外さず見つめてみた。
だけど、木下は照れる事も惚ける事もなく
淡々と観察しはじめた。
「言っていいの、本当に」
そう前置きして
「妹に愛嬌とコミュ力を、
全て持っていかれた可哀想な子かな。
でも、陰気野郎ではなかった。
感情もありそうだし。安心したよ」
笑顔が一瞬で崩れた俺を見て爆笑した。
「ごめん、ごめん、外見の事でしょう。
整ってるなって思うよ。
好きずきだけど、
工藤くんみたいな顔立ちが好きな子も多いのかなって。
だからモテるんだよね。
さっきから、女の子達、注目してるもんね。」
フォローされた。
なんだ、これ。
俺が欲しがりみたいじゃないか。
だけど、コイツ、最高だ。
予想の上をいく女だ。
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