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特別編 プロローグ(勇磨sideー現在)1
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「勇磨、ねぇ、勇磨、聞いてる?」
隣の席でナナが騒ぎ、その声で我に返った。
現実に戻った、それに近い。
長い回想シーンを見ていたかのようだ。
ナナはといえば、唇をとがらせ、こっちを睨んでいる。
完全に怒らせた。
「ごめん、何の話だっけ?」
俺の問いにナナはあっけらかんと笑って答えた。
「何の話もしてないよ、ただ、勇磨がHRの間、ぼーっとしてたから気になっただけ。
何、考えてたの?めずらしいよね」
確かに、ぼーっとするのはナナの得意技だ。
「なんか、ちっさい頃からの俺の軌跡を辿ってた」
瞬間、眉間に皺をよせて、訝しそうに俺を見る。
「何それ、俺の軌跡って、ほんと、中2病は困るなぁ」
ケラケラと笑って席を立った。
咄嗟にナナの手を掴んだ。
驚いた表情で俺を見る。
自分でも驚いてナナの手を離した。
「ごめん、どこに行くのかと思って」
何言ってんだ、俺。
子どもか。
ナナもそう思ったのか、急に悪い顔をして座り込み、俺の机に肘をつき、上目遣いで俺を見つめた。
「勇くん、ごめんね、ママ、チカに用事があるの、いってきまちゅね」
自分で言って自分で大爆笑して教室を出て行った。
残された俺は誰が見ても分かるくらいに赤面していたと思う。
アイツ‥。
よくも俺に恥をかかせたな。
許さねー。
いやしかし、そもそも俺は何で昔の事を思い出していたんだ?
しかも少し胸がチクチクする。
過去の傷が騒ぐ。
あぁ、そうだ。
尊だ。
アイツの事を考えたからだ。
昨日、帰り道、偶然に尊を見かけた。
アイツはバスケットボールを持って、仲間と歩いていた。
よく見えなかったけど、間違うはずがない、あれは尊だ。
ああ、尊もバスケをしてるんだな、とそう思った。
そして同時に気がついた。
尊達が着ていた上着に汐南校のマークがついていた。
尊は汐南校に行ったんだな。
という事は、来週の練習試合で、尊はうちの高校に来る。
そこで俺は尊と試合をする事になるんだ。
嬉しいという気持ちよりも怖い気持ちが強くなるのが分かった。
今なら、俺は痛いほど分かる。
好きな女を信じた、尊の気持ちが。
それが真実とか、そんなの関係ない。
ただ、自分が好きになった女を信じるだけだ。
あの時、俺は間違えた。
尊を傷つけたくなくて、先回りし、尊がフラれるように動いた。フラれたショックなんて、俺が埋められると思った。
尊の気持ちを軽く見ていたし、バカにしていたと思われても仕方がない事をした。
ちゃんと話すべきだった。
俺がしゃしゃり出ていい話ではなかった。
尊とあの女の話だった。
例え、あの女に尊が傷つけられても、尊は自分で立ち直る事はできたはずだ。
俺はそれを信じれば良かったんだ。
あんなに一緒にいたのに、俺は尊を信じてやれなかった。
ナナがしつこく俺を信じてくれる事で、俺はやっと気がついた。
自分が何でもできるなんて、自惚れだ。
俺がアイツにしてやろうなんて最初から大間違いだった。
尊に会ったら謝りたい。
許してもらえるだろうか。
「そんなの分かるわけないじゃん。だけど、悪いと思ったら謝る、それ基本でしょ」
ナナならそう言いそうだな。
自然と笑みがこぼれ、そして、勇気も湧いてきた。
隣の席でナナが騒ぎ、その声で我に返った。
現実に戻った、それに近い。
長い回想シーンを見ていたかのようだ。
ナナはといえば、唇をとがらせ、こっちを睨んでいる。
完全に怒らせた。
「ごめん、何の話だっけ?」
俺の問いにナナはあっけらかんと笑って答えた。
「何の話もしてないよ、ただ、勇磨がHRの間、ぼーっとしてたから気になっただけ。
何、考えてたの?めずらしいよね」
確かに、ぼーっとするのはナナの得意技だ。
「なんか、ちっさい頃からの俺の軌跡を辿ってた」
瞬間、眉間に皺をよせて、訝しそうに俺を見る。
「何それ、俺の軌跡って、ほんと、中2病は困るなぁ」
ケラケラと笑って席を立った。
咄嗟にナナの手を掴んだ。
驚いた表情で俺を見る。
自分でも驚いてナナの手を離した。
「ごめん、どこに行くのかと思って」
何言ってんだ、俺。
子どもか。
ナナもそう思ったのか、急に悪い顔をして座り込み、俺の机に肘をつき、上目遣いで俺を見つめた。
「勇くん、ごめんね、ママ、チカに用事があるの、いってきまちゅね」
自分で言って自分で大爆笑して教室を出て行った。
残された俺は誰が見ても分かるくらいに赤面していたと思う。
アイツ‥。
よくも俺に恥をかかせたな。
許さねー。
いやしかし、そもそも俺は何で昔の事を思い出していたんだ?
しかも少し胸がチクチクする。
過去の傷が騒ぐ。
あぁ、そうだ。
尊だ。
アイツの事を考えたからだ。
昨日、帰り道、偶然に尊を見かけた。
アイツはバスケットボールを持って、仲間と歩いていた。
よく見えなかったけど、間違うはずがない、あれは尊だ。
ああ、尊もバスケをしてるんだな、とそう思った。
そして同時に気がついた。
尊達が着ていた上着に汐南校のマークがついていた。
尊は汐南校に行ったんだな。
という事は、来週の練習試合で、尊はうちの高校に来る。
そこで俺は尊と試合をする事になるんだ。
嬉しいという気持ちよりも怖い気持ちが強くなるのが分かった。
今なら、俺は痛いほど分かる。
好きな女を信じた、尊の気持ちが。
それが真実とか、そんなの関係ない。
ただ、自分が好きになった女を信じるだけだ。
あの時、俺は間違えた。
尊を傷つけたくなくて、先回りし、尊がフラれるように動いた。フラれたショックなんて、俺が埋められると思った。
尊の気持ちを軽く見ていたし、バカにしていたと思われても仕方がない事をした。
ちゃんと話すべきだった。
俺がしゃしゃり出ていい話ではなかった。
尊とあの女の話だった。
例え、あの女に尊が傷つけられても、尊は自分で立ち直る事はできたはずだ。
俺はそれを信じれば良かったんだ。
あんなに一緒にいたのに、俺は尊を信じてやれなかった。
ナナがしつこく俺を信じてくれる事で、俺はやっと気がついた。
自分が何でもできるなんて、自惚れだ。
俺がアイツにしてやろうなんて最初から大間違いだった。
尊に会ったら謝りたい。
許してもらえるだろうか。
「そんなの分かるわけないじゃん。だけど、悪いと思ったら謝る、それ基本でしょ」
ナナならそう言いそうだな。
自然と笑みがこぼれ、そして、勇気も湧いてきた。
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