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eスポーツ部誕生
1 電算部
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4月中旬とは思えない少し汗ばむような日の午後。
グランドからはカキーン、カキーンという金属バットの甲高い音がする。体育館からはドンドンドンというドリブルと、キュッ、キュッ、キュッとシューズの音がこだまする。校舎からは、管楽器の演奏とコーラスが漏れ聞こえてくる。どこにでもある放課後の高校。
40台の最新式のPCが設置されている実習室では、カタカタとキーボードを叩く音、カチカチとマウスクリックの音だけが響く。
およそ20人の生徒がプログラミングをしていたり、資格の勉強をしていたりと、全員が私語もなく真剣に取り組んでいた。
そんな中、光田速人ただ一人だけ、気だるそうにゲーム攻略サイトを見ていた。
中肉中背で、おしゃれには気を使っていないボサボサの髪、整ってはいるが少し女性っぽい顔立ち、ごく平凡な高校1年生だ。
速人は突然立ち上がり言った。
「はぁ、サイトを見る事ができてもゲームができないなんて、ヘビの生殺しだよ」
それは単なる独り言で、誰かに訴える意図は無かったのかもしれない。しかし、隣のPCを使っていた安部真理亜が反応した。
「うるさいわね。ゲームなんてくだらない。少しは部活らしい事をやったら?」
眉をしかめ、あきれたように言った。
胸のあたりまである漆黒のストレートの髪。黒縁の眼鏡をし、まったく化粧っけのないすっぴんだが、白人とのハーフのようなハッキリとした目鼻立ちの意志の強そうな顔をしている。
「部活らしい事? 資格取得とかプログラミングの勉強か。そんな事がやりたくてこの部に入ったわけじゃない」
「うちの部は、情報処理の国家試験合格率も高いし、U18プログラミングコンテストでも実績を出しているのよ。資格取得の勉強かプログラミングの勉強をしなくてどうするのよ」
「僕はLoLがやりたくて電算部に入部したんだよ。なのにこの部活でやっていいのは、プログラミングとネットサーフィンだけって、ひどくない?」
「LoL? どうせ銃で殺しあうゲームでしょ?」
「ぜんぜん違う。LoLっていうのはリーグ・オブ・レジェンドの略だよ。全世界で1億人以上がプレイするeスポーツを代表するゲームで……」
「まぁまぁ、それぐらいで……」
速人の言葉を同じクラスの永井道則がさえぎった。
黒縁眼鏡のやせ形で少し神経質そうな雰囲気である。
「電算部の方針なんだから、しかたないんじゃないの? 中学時代に『魔女』と呼ばれた真理亜さんからプログラミングを習ってみたらどう? 基礎ぐらいだったら僕でも教えれられるしさ」
「いいよ、遠慮しておく。だいたい『電算部』ってなに? 電子計算機部の略? ダサすぎ、古すぎだよ。そもそも僕は、資格取得やプログラミングがしたいわけじゃない! 時代はeスポーツだ。LoLやらせろって!」
「ここで不満を言ってもしかたないだろ? 顧問の佐藤先生へ訴えてきたら?」
永井はうんざりした表情でつぶやいた。
「それもそうだな。ちょっと職員室へ行ってくる」
そう言い終わらないうちに速人は椅子をしまい、実習室から出て行った。
真理亜も永井も少しほっとした。いつまでも速人の愚痴に付き合わされるのは、たまらないからだ。
二人はそれぞれ何事も無かったように、PCに向かった。
グランドからはカキーン、カキーンという金属バットの甲高い音がする。体育館からはドンドンドンというドリブルと、キュッ、キュッ、キュッとシューズの音がこだまする。校舎からは、管楽器の演奏とコーラスが漏れ聞こえてくる。どこにでもある放課後の高校。
40台の最新式のPCが設置されている実習室では、カタカタとキーボードを叩く音、カチカチとマウスクリックの音だけが響く。
およそ20人の生徒がプログラミングをしていたり、資格の勉強をしていたりと、全員が私語もなく真剣に取り組んでいた。
そんな中、光田速人ただ一人だけ、気だるそうにゲーム攻略サイトを見ていた。
中肉中背で、おしゃれには気を使っていないボサボサの髪、整ってはいるが少し女性っぽい顔立ち、ごく平凡な高校1年生だ。
速人は突然立ち上がり言った。
「はぁ、サイトを見る事ができてもゲームができないなんて、ヘビの生殺しだよ」
それは単なる独り言で、誰かに訴える意図は無かったのかもしれない。しかし、隣のPCを使っていた安部真理亜が反応した。
「うるさいわね。ゲームなんてくだらない。少しは部活らしい事をやったら?」
眉をしかめ、あきれたように言った。
胸のあたりまである漆黒のストレートの髪。黒縁の眼鏡をし、まったく化粧っけのないすっぴんだが、白人とのハーフのようなハッキリとした目鼻立ちの意志の強そうな顔をしている。
「部活らしい事? 資格取得とかプログラミングの勉強か。そんな事がやりたくてこの部に入ったわけじゃない」
「うちの部は、情報処理の国家試験合格率も高いし、U18プログラミングコンテストでも実績を出しているのよ。資格取得の勉強かプログラミングの勉強をしなくてどうするのよ」
「僕はLoLがやりたくて電算部に入部したんだよ。なのにこの部活でやっていいのは、プログラミングとネットサーフィンだけって、ひどくない?」
「LoL? どうせ銃で殺しあうゲームでしょ?」
「ぜんぜん違う。LoLっていうのはリーグ・オブ・レジェンドの略だよ。全世界で1億人以上がプレイするeスポーツを代表するゲームで……」
「まぁまぁ、それぐらいで……」
速人の言葉を同じクラスの永井道則がさえぎった。
黒縁眼鏡のやせ形で少し神経質そうな雰囲気である。
「電算部の方針なんだから、しかたないんじゃないの? 中学時代に『魔女』と呼ばれた真理亜さんからプログラミングを習ってみたらどう? 基礎ぐらいだったら僕でも教えれられるしさ」
「いいよ、遠慮しておく。だいたい『電算部』ってなに? 電子計算機部の略? ダサすぎ、古すぎだよ。そもそも僕は、資格取得やプログラミングがしたいわけじゃない! 時代はeスポーツだ。LoLやらせろって!」
「ここで不満を言ってもしかたないだろ? 顧問の佐藤先生へ訴えてきたら?」
永井はうんざりした表情でつぶやいた。
「それもそうだな。ちょっと職員室へ行ってくる」
そう言い終わらないうちに速人は椅子をしまい、実習室から出て行った。
真理亜も永井も少しほっとした。いつまでも速人の愚痴に付き合わされるのは、たまらないからだ。
二人はそれぞれ何事も無かったように、PCに向かった。
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