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ニメのキャラクターに関する話題をしながら、すぐ近くの地下鉄星ヶ丘駅の構内へと降りていく。
大半の子供たちは誰かと楽しげなひと時を過ごしながら帰路についていた。たった一人で地下へ降りようとしているのはツバサただ一人だった。
ツバサの母親は、彼が子供の送り迎えが義務化されていない小学校に入学してからというもの、ただの一度もビルから出てくるツバサの前に現れるようなことはせず、毎日のように終電の時刻ギリギリまで仕事を入れていた。ツバサをより良い教育機関に通わせるために尽力していると言えば、昔からの良き母親像とも一致し聞こえもいいだろうが、勉強以外のところにまるで関心を示していないのが現実である。
今日も一人で、誰も待ってくれていない家に帰って、適当な冷凍食品かカップ麺をこしらえて、宿題を片付けて一人で眠る。
今日もツバサはそのつもりでいた。今日も明日もそうなると思っていた。
「ねえ、君、初等部の子だよね?」
突然ツバサは、女の人の声に後ろから肩をつかまれた。
彼が振り返るとそこには一人の女子高生が立っていた。長い黒髪を頭の中間あたりで白いシュシュを使ってポニーテールにし、紺色のバッグを肩にかけ、クリーム色のカーディガンの下に真っ白なワイシャツと赤いネクタイをした、大人のように背の高い、白い肌をした女子高生だった。
「一人で帰るの? お父さんやお母さんは?」
優しそうな顔で見下ろしてくる彼女は明らかに、独りぼっちのツバサを気にかけていた。
これがツバサとカゴカナコの出会いだった。
大半の子供たちは誰かと楽しげなひと時を過ごしながら帰路についていた。たった一人で地下へ降りようとしているのはツバサただ一人だった。
ツバサの母親は、彼が子供の送り迎えが義務化されていない小学校に入学してからというもの、ただの一度もビルから出てくるツバサの前に現れるようなことはせず、毎日のように終電の時刻ギリギリまで仕事を入れていた。ツバサをより良い教育機関に通わせるために尽力していると言えば、昔からの良き母親像とも一致し聞こえもいいだろうが、勉強以外のところにまるで関心を示していないのが現実である。
今日も一人で、誰も待ってくれていない家に帰って、適当な冷凍食品かカップ麺をこしらえて、宿題を片付けて一人で眠る。
今日もツバサはそのつもりでいた。今日も明日もそうなると思っていた。
「ねえ、君、初等部の子だよね?」
突然ツバサは、女の人の声に後ろから肩をつかまれた。
彼が振り返るとそこには一人の女子高生が立っていた。長い黒髪を頭の中間あたりで白いシュシュを使ってポニーテールにし、紺色のバッグを肩にかけ、クリーム色のカーディガンの下に真っ白なワイシャツと赤いネクタイをした、大人のように背の高い、白い肌をした女子高生だった。
「一人で帰るの? お父さんやお母さんは?」
優しそうな顔で見下ろしてくる彼女は明らかに、独りぼっちのツバサを気にかけていた。
これがツバサとカゴカナコの出会いだった。
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