和製切り裂きジャック

九十九光

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#2-2

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なりそうな事件が起きたというのに、だ。セックスの途中で自分だけ満足してしまった男を眺める女の気持ちが理解できそうだ。
 そんな感じに私が実の父親に生殺しにされかけたその時だった。
「……。被害者、レイプされた形跡がなかったんだ」
 私の独り言にパパがビールをむせ返した。ママも同じように噴き出すような声を出した。
「たった今スマホのニュース速報に流れてきたよ、ほら」
 私は体を起こし、テーブルに座っている二人に歩み寄った。ママは私からわざと視線を外しながら、せかせかと台拭きでテーブルを拭いている。そんなにさっきの台詞が衝撃的だったのか。
 速報には、被害者からは性的暴行の跡が見つからなかったこと以外にも、名前や大学名、会社名は出てなかったがモデル派遣会社でアルバイトしていたことなんかも、被害者の顔写真とともに掲載されていた。ご丁寧に死因まで載っており、私立探偵の推理のために現場を見せてくれる警察のおっさんのような親切さを感じた。
 私はパパに向かってさらに質問をぶつけてみた。
「ねえねえ、このモデル派遣会社ってどういう会社なの?」
「言えるわけないだろ。被害者のプライバシーに関わる」
「いいじゃん、ケチ! 私にばらすような相手がいないことくらい知ってるでしょ!」
「関係者以外に情報流す警察がいるわけないだろ! 早く寝ろ!」
「はいはい。わかったよ」
 うちのパパはこんな感じに、定期的に目に見えて苛立つ人だ。今夜はまさにその時期みたいだ。ぶたれることはないにせよ、拘束される時間が生まれるだけで、いいことは一つもない。私はさっさと二階の自分の部屋に避難することにした。
 だがこのまま父親の威厳に気圧されて退散という行動を、プライドが許さないでいる私もいた。そこで私は二階に上がる前に、パパにこんな忠告をしてやった。
「おやすみ。あと、ここ数日は被害者の汚名をそそぐことに駆り出されるかもしれないから、覚悟しといたほうがいいよ」
 で、翌日の朝七時まで時間は進む。
 私は部屋の東側についている換気用の小窓からの明かりで目が覚めると、すぐに『平和公園事件 被害者』と、スマホの検索エンジンに打ち込んだ。すると予測変換で、『自業自得』とか『売春』とかのワードが後ろにくっついてきた。見事に昨晩の予想通りである。
 何が起きているのかわからない人のために説明すると、メディアでモデル派遣会社としか紹介していなかったため、被害者はいかがわしい仕事をしていたのだろうという風評被害が発生しているのだ。ネットの掲示板で、ランクアップというバイト先の会社名(東京にある化粧品の会社とは別物)まで特定され、被害者のハメ撮り写真とかいう、ネットニュースの写真とは似ても似つかない誰かの写真まで載っている始末だ。男言葉で書かれて
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