和製切り裂きジャック

九十九光

文字の大きさ
17 / 166

#2-6

しおりを挟む
「説明が面倒だったんだよ。両親にもこういうバイトするって言った時、売春みたいなこと無理強いされたらどうするの、って反対されて……。大輔にも、変な心配させたくなかったから黙ってたんだよ。そもそもこんな話、面白くもないからする意味ないし」
 なんだろう。こんなにおしとやかな好代ちゃんを今まで見た覚えがない(読者はじゃじゃ馬な好代ちゃんを見たことがないからしっくりこないだろうが)。女の子は恋をすると変わるという話はお話の世界でよく見るが、案外現実でも起こりうる話なのかもしれない。
「そんな……! 疑ったりなんか……!」
 すると今まで黙っていた大輔君が言葉をはさんできた。
 なんだろう。人の会話に割り込んでまで話に入ってくる大輔君を見た覚えがない(読者は無口な大輔君を見たことがないからしっくりこないだろうが)。自分に合わせてくれる女性が好きだという男の話は作り物の世界ではよく見るが、女性に合わせて変わる男性というのも案外いるものなのだろうか。
「……。ホントか?」
「当たり前だろ! 好代さんはそうまでしてお金が欲しいわけじゃないってことくらい知ってるよ! そんなに不安に思ってたんなら相談してほしかったよ!」
「大輔……!」
 うん。これは私邪魔なやつだ。数十センチ先の世界で、いつの間にか踏み込むことの許されないロマンチックな世界が完成している。今の私にできることは、冷めないうちにカツ丼弁当を食べることしかないくらいだ。
「あ、湯浅。横で食うのやめてくれる? バイトの関係で体重制限しなきゃいけないから、そういうのつらい」
 これは本当に私邪魔なやつだ。私は食べかけのカツ丼弁当を持って、なるべく人気のない教室を探しにそそくさと退散した。
 とにかく、あの短い会話の中でえられた情報は、事件の真相に確実に一歩近づくことに役立ってくれた。平和公園死体遺棄事件はシリアルキラーの犯行だ。
 名鍋女子(名古屋鍋山女子大学の略)は、学生に対して息が詰まりそうなほど厳しい規則を設ける女子大として有名であり、どっかのアイドルグループのように色恋沙汰を禁止している全寮制の大学だ。校則を破って恋愛をしていた可能性はあるが、定期的に抜き打ちでスマホの通信データや寮の部屋のチェックが入るという話をネットで見たことがある。この頭のおかしい検査が本当なら、被害者が異性とのいざこざで殺されたという線はまずありえないだろう。バイト先もさっきの好代ちゃんの話からすれば、性的トラブルに巻き込まれるような仕事ではないと言える。
 ならばどうして、犯人は首を絞めて殺した後、服をひん剥いて首をはねて、季節の花が活けてある花瓶を飾るみたいに死体を遺棄したのか。財布が見つかっていないから物取りの犯行だと考える人もいるかもしれない。だが現金と通帳を見つけた後、そのまま家の中
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【え? これってまさか私のこと?】 ソフィア・ヴァイロンは貧しい子爵家の令嬢だった。町の小さな雑貨店で働き、常連の男性客に密かに恋心を抱いていたある日のこと。父親から借金返済の為に結婚話を持ち掛けられる。断ることが出来ず、諦めて見合いをしようとした矢先、別の相手から結婚を申し込まれた。その相手こそ彼女が密かに思いを寄せていた青年だった。そこでソフィアは喜んで受け入れたのだが、望んでいたような結婚生活では無かった。そんなある日、「君への気持ちが冷めたと」と夫から告げられる。ショックを受けたソフィアは家出をして行方をくらませたのだが、夫から懸賞金を掛けられていたことを知る―― ※他サイトでも投稿中

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

処理中です...