和製切り裂きジャック

＃２－７

でティータイムを始める空き巣なんていないことはわかるだろう。目的を果たしたら速やかにその場を離れたほうが、犯罪者は自分の安全を確保しやすいのだ。
　だからこの犯行はシリアルキラーによる犯行だと推測できるのだ。相手を殺し、異常な遺棄の仕方をし、事件を嗅ぎまわる警察の様子をどこからか観察し、ああでもないこうでもないと頭を悩ます彼らを見てせせら笑うことが楽しいから、あんな猟奇殺人を決行したのだ。そしてこの手の犯行は、犯人が捕まるか死ぬまで行われるのが一般的だ。必ず近いうちに、第二、第三の犯行は行われると考えていいだろう。
　手ごろな空き教室を見つけてお昼の続きを始めた私は、人生で一番心が躍っていた。
　自分が生まれ育った名古屋の街で、こんなにも面白い事件が起こったのだ。今までは過去の実績やそれっぽい作り話で満足するしかなかった私の心は、今まさに手の届くところで起きた事件で欲求を満たすことができている。目の前にあるのは食べ飽きたはずのコンビニ弁当だが、こんなに楽しい食事は二度と味わえないと感じていた。