和製切り裂きジャック

九十九光

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#3-1

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#3(三人称)


 一月二十二日の午後九時十分の、名古屋市中区中村公園駅周辺。道路上に立っている巨大な鳥居がシンボルマークの、名古屋駅のすぐそばにある住宅地である。
 角田好代はこの町にある自宅で、机に向かってフェルト製の手の平サイズのペンギンの人形に綿を詰めながら、スマートフォンのハンズフリー機能を使って通話をしていた。
「あれからどう? 的部さんだっけ? その人にひどいこと言う人は減った?」
 名東区一社の住宅街を、犬の散歩をしながら歩いているという山本大輔が、スマートフォンの向こうから彼女に話しかける。
「なくなったよ、ぱったりと。それどころか、そのことを誤ってくるコメントまできてる。大輔のおかげだよ」
 暖房の効く自室で両手を動かす好代は、机の隅に置いてある封筒に視線を向けながら答えた。アルバイト先の会社から手渡された、現金五万円が入っている封筒だった。
 大輔にアルバイトの件が知られた後、好代は彼の助言で、普段から自分も利用しているSNS上で、会ったこともない的部美鈴の擁護をしていた。自分と被害者のアルバイト先はいかがわしい仕事をさせたりしないと告白し、これ以上被害者を悪く言うことは、自分の夢のために頑張ってきた彼女を傷つけることであり、彼女を殺したことと同じように許されないことだ、ともつけ加えた。会社からもらった金は、ついでに風評被害を払拭した好代への臨時ボーナスだった。
「いや……。僕はただ、被害者がかわいそうだから、同じアルバイトをしてる君が声をあげたらって言っただけで……」
 電話の向こうの好代に向かって、大輔は照れくさそうな笑い声で応えた。
「いや、大輔がそう言ってくれなかったら、きっとあたしは何も言わなかったよ。面倒事に首を突っ込むのは嫌だって」
 好代もそれに合わせるように、右手で頭をかきながら言葉を続ける。
 好代は大輔のことを、魅力的な異性として見ていた。
 彼女は自分のことを、責任ある立場から逃げ続けている間に素行の悪くなった人間だと考えていた。だからこそ、ディスカッション形式の講義を多く取り入れるA大学の講義で見た大輔が輝いて見えたのだった。
 同じ学部の同じ学年ということもあり、好代と大輔は、同じ講義で意見の出し合いをすることが多かった。その中で大輔は、自分は引っ込み思案で自分の意見をなかなか素直に言えない、と語ることが多かった。しかし実際の彼は、多種多様なことに対して広く浅く知識を持つ、どんなことにも自分なりの意見を出すことができる人間だった。そこが好代には、彼が活発な性格で行動力のある、自分にはないものを持っている人だと感じさせる
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