和製切り裂きジャック

九十九光

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#14ー3

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をするような、苦手な奴と話し合いをする講義が終わった後の解放感に浸るような、そんな感覚に近い、心地よさすらある感覚だった。苦しさと得体の知れなさからくる恐怖心は、この時にはなくなっていた。私は自分の死を素直に受け入れていた。
 こうして私は短い人生に幕を閉じ、殺した奴の顔も見ることなく天に召されるのでした。
 というわけにはいかなかった。自分の感覚だから大してあてにならないが、五分か十分くらいたっても私の意識がなくならないのだ。
 え? 死んでも意識はそのままなの? 死んだらすぐに天国か地獄に行かしてくれるんじゃないの? という感じに、私は最初なぜか焦っていた。別に焦ったところでどうなるわけでもないのに焦っていた。少し前まで昇天寸前の気持ちよさを味わいながら幸福に近い感覚に浸かっていたのだから、こういうものなのねって受け入れればいいものを。
 それにようやく気づいたのか、私は今自分とその周辺に起きている非日常的な状況変化に意識を向けるようになった。
 私は私の体を真横から見ている状態だった。身もふたもない書き方をすれば、幽体離脱をしているというわけだ。私の体の後ろには、背が高くて体つきのいい、私を殺した殺人鬼がいた。灰色のスウェットを穿き、肩からは黒くて安物っぽいメンズバッグをかけ、ご丁寧に黒い皮っぽい質感の手袋をしている。黒いフードつきのパーカーで頭を隠していて顔はよくわからなかったが、胸がまったくなかったことから男だと予想できた。
 男は私が死んだとわかると、紐を私の首から外して自分のカバンの中に突っ込んだ。するとそいつはなんの迷いもなく、帽子とか高校のジャージとかと一緒にショルダーバッグがかかっているポールハンガーに向かって歩き、その中を物色し始めた。
 私はがっかりした。この男は物取り目当ての強盗殺人犯だった。
 法務省が取った統計だと、見知らぬ人間を狙った殺人でも金目当ての殺しはそこまで頻繁に起きないらしく、被害者と加害者の関係を無視して殺人動機ランキングを作っても、金目当ては下から数えたほうが早いという。そういう意味では、私は非常にレアな犯行に遭遇しているとも言えた。だがひねりがない。こういう殺人に手を染める奴なんて、大抵は真面目に仕事をすることを放棄して、せっかく貯まったお金もパチンコか女ですりつぶしてしまうダメ人間で間違いないだろう(ひどい偏見だ)。おかしな話だが、どうせ殺されるなら、和製切り裂きジャックみたいにミステリアスで常識では推し量ることができない、カッコいいシリアルキラーに殺されたかった。こうやって自分の死ぬところを客観的に見ることができる状態になれば、なおさらそういう欲求が高まってくる。
 今さらな気もするが、ママはどうなったのだろうという疑問が、ここにきて私の中に湧き上がった。一階の窓ガラスかドアをこじ開けて入ってきたのなら、もうとっくに殺されているだろう。雨どいをよじ登って二階の別の部屋のベランダから侵入したのであれば、まだ生きている可能性もある。まあ、この状態で何ができるかなんてたかが知れているので、あの人がこの後どうなるかまでは知ったこっちゃないが。犯人が非常につまらない奴
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