和製切り裂きジャック

九十九光

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#16ー2

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前に一度だけ会った時の橋本さんは、「和製切り裂きジャックは中卒や無職が犯人でもおかしくない」と、確かな情報と説得力のある理由づけで説明していた。いくら精神的に追い詰められて個人的な復讐心が芽生えたからといって、こんな冷静な頭の使い方が消えてしまうものだろうか。
 私はこの橋本さんの心変わりの仕方に疑いを持っていた。
 この捜査一課全体をもまとめてしまうリーダーシップまで、自分の本性を隠すための演技なんじゃないか、と。
 時間は午後四時半を少し過ぎたあたり。気がつくと私は、北区にある庄内川のすぐそばに来ていた。
 位置的には、新川中橋のほぼ中心あたりを橋とほぼ垂直にクロスする堤防の上に作られた道。川は私から見て北側を走り、向こう岸には無人の野球グランドが見える。私がいる川岸の南側一帯は株式会社の社員寮が立ち並び、北側一帯はそこに住んでいる人々の仕事先であろう中小の製造業の会社が乱立している。後で調べてみると、各会社が作っているものにダブりはなく、このきれいな住み分けがこのような町の形成につながっていることがよくわかった。ここまで来るのにどこを進んでいたかは微塵も覚えていなかった。
 ここに立って西日を反射している庄内川を見ていると、なんだか頭の回転が早まっていくような錯覚に襲われる。いつまでも自分の頭の中にしまっていないで、いっそのこと自分で行動してみてはどうかと思えてきた。
 ただ、誰かに自分の推理を披露する気にはなれなかった。外れた時に失うものが大きすぎるとか、そういう次元で済む話じゃなさそうで、とても誰かに打ち明けようとは思えなかった。
 だから私は、別の方法で自分の推理の答え合わせをすることを決めた。
 私はその場でYahoo! の路線案内を使って時間の計算をすると、スマホを取り出してママとのLINEグループを開いた。
『今日夕飯いい。今日行った説明会に参加してた会社から食事会に誘われた』
『どこの会社?』
『ラッキードリーム。パチンコ屋さんの』
『帰りいつ頃になる?』
『高畑の本社でやって九時に終わるって話だったから、十時少し過ぎくらいになりそう』
 ここまで文章でやり取りをすると、ママは市原悦子の顔写真の横に『承知しました』と書かれたスタンプを送って返事をした。どうやらこの嘘で騙すことができたらしい。
 それから私はわざと遠回りのルートを選んで時間をつぶしてから、六時半頃に地下鉄池下駅にやってきた。
 千種区内にあるここは、西にある栄の繁華街の恩恵で、錦通りを筆頭に大きな建物が目立つ街だった。ただし、若者向けのコンテンツは栄に流れてしまうため、どうしても会社
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