和製切り裂きジャック

九十九光

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#23ー1

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#23(三人称)


 五月十一日の午後一時。湯浅は愛知県警本部の捜査一課の部屋の中にいた。
「聞き込み結果進展なしってどういうことだ! 本当に真面目にやってきたのか!」
 湯浅は自分のデスクに腰かけながら、一時的に本部に合流した北区からの若手刑事に罵声を浴びせていた。
 その後、守山区で起きた犯人逮捕済みの事件の検察提出書類の第一稿を、本部所属の若手刑事が持ってきた。
「そんなもん後にしろ! 今俺に和製切り裂きジャック以外の話を持ち込むな!」
 これも湯浅は理不尽なことを言い放って追い返してしまった。
 最近の湯浅はあまりにもひどい理由で怒るようになったと、山下はその光景を自分の席から見て感じていた。
 単に第二の和製切り裂きジャックの正体がつかめないことへの苛立ちなのか、腐れ縁に近かった後輩を失った反動が今になってきているのか。山下は湯浅の中で、いずれにしても喜ばしくない変化が起きていると感じていた。
 元々、湯浅の若手教育の方針は、昭和の野球部の指導法から目に見えた体罰がなくなった、という表現がしっくりくる、非常に厳しいものではあった。実際にそれが理由で彼についていくことができなくなり、ほかの部署への異動申請を申し出た若手や、山下が引き取った若手も少なくない。そしてこれについていくことができない若い人材に湯浅は、「最近の若いのは気持ちが弱すぎる」と、酒の勢いに任せて山下に吐露することもあった。
 それでも山下は、湯浅の上司になってからも含めて、極端な言い争いにならない限りは彼のやり方を咎めることはしなかった。
 人には人にあったやり方が存在し、湯浅はそれがたまたまこのやり方だったと、また、この度を越えているようにも見える力強い発言が、捜査員全体を引っ張ってくれていると考えているからだった。亡くなった橋本のように湯浅のこのやり方についていけた若手がいたことも、山下にアクションをさせないブレーキになっていた。
 ただ最近の湯浅の指導は、熱血指導という言葉では歯止めが利かないほど荒くなっていた。前述の通り、ある程度理解できる理由なしに怒鳴ることが日ごとに増え、それを理由に数十分その場で支離滅裂な説教をして仕事に支障をきたすことさえあった。この二週間余りの間に、急な体調不良を訴えて休んだり早退したりする者が以前と比べて格段に増えていた。彼の指導は、さすがの山下にも擁護できないパワーハラスメントに変わっていたのだ。
 どこかのタイミングで一度言葉をかけないとまずい。
 この湯浅の変化に対して、山下はそう考えるようになっていた。だが彼にはそのやり方
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