和製切り裂きジャック

九十九光

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#23ー2

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が分からなかった。
 山下自身は、今まで声を荒げて叱りつけるような指導の仕方をしてこなかった。よく人からは、諭すような言い方で注意する人だと言われ、怒っているところを見たことがないとも言われていた。別に自分で意識しているわけではなかったが、多くの仕事仲間が言ってくるのだから、自分はそういう人間なのだと考えていた。
 だが今の湯浅は、そういう言い方では逆上してねじ伏せにくる可能性があった。そうなれば火に油を注ぐ結果につながり、余計仕事に悪影響が出ることも考えられた。山下は思考の迷宮に入り込んでしまっていた。
「コーヒー、お持ちしました。」
 悩む山下に、今年の四月に配属されたばかりの若手が横から声をかけた。山下はそれに対して簡単に礼を言いながら、利き手を伸ばしてコーヒーカップを受け取ろうとする。
 その次の瞬間だった。
「おい! なんだ今の言葉遣いは!」
 湯浅がその場で立ち上がり、コーヒーを持ってきた刑事を指さした。
 山下を含め、その場にいた人間たちが一斉に湯浅に視線を向ける。刑事が持ってきたコーヒーは突然後ろから怒鳴られた衝撃で、数滴山下のデスク上の新聞紙の上にはねた。
「まず誰に対しての言葉なのかを示すのが先だろ! 何考えてるんだ、お前は!」
 そう続けて口にした湯浅に、山下は唖然とした。たったそれだけの理由で、しかも自分とは一切関係ない理由で、部屋中に響き渡る声で声を上げたことに驚いたのだ。
「す、すみません!」
 不意を突かれた刑事は少し怖がっている様子で言いながら、山下のデスクの上にカップを置く。しかし今の湯浅はあれだけで止まることはなかった。立ち上がった流れで山下のほうに、正確には若い刑事のほうに歩み寄り、さらに怒声をぶつけにかかる。
「いいか。礼儀作法ってのは仕事を円滑に進めるうえで大事なものなんだよ。それをいい加減にして仕事ができると思ってるのか? 警察学校で何を勉強してきた! ええ⁉」
 怒声を浴びせられている刑事は、ただただ頭を下げて謝罪の言葉を連呼していた。それを間近で見せられている山下は、止めに入ったほうがいいんじゃないかと思いながら、そのタイミングをつかもうと必死だった。
 湯浅の説教は続く。
「大体最近の若い連中はこの程度の礼儀も知らないのかよ。適当でぬるい学校の中でぬくぬくぬくぬく育って、まるでなってないダメ人間になるばかりで」
「ゆ、湯浅君」
「これだからゆとり世代は嫌いなんだよ。お前もそうやってダメな学校出たんだろ? ろくに勉強しないでここまできたんだろ?」
「湯浅く」
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