和製切り裂きジャック

九十九光

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#24ー2

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の人がいかに近所の人と仲良くしていなかったかよくわかる。私はその花束の横に買ってきた缶コーヒーを置いてその場を後にした。
 だが私はすぐに道路に戻らないで、今度はアパートの三階に移動した。ここも基本的な風景は四階と大差ない。大きな違いと言えば、階段から見て一番奥の部屋のブルーシートの有無と空き部屋の数くらいだった。この階層の空き部屋の数は五部屋。ここも階段近くの部屋に住人が集中しており、308号室から310号室は空き部屋だった。さらにこのアパートの空き部屋の数を階層ごとに数えていくと、二階が三部屋で、一階が二部屋だった。アパートやマンションは日当たりなどの理由で、上階の部屋ほど家賃が高く人気らしいが、ここではその傾向が逆転していた。エレベーターのない足腰にくる作りに、どうしても健常者よりもらえるお金が少なくなりがちな障がい者の実情を考えれば、案外普通なことなのかもしれない(この辺は正確なデータが少なく、Yahoo! 知恵袋の投稿を信じて予想するしかなかったのだが)。
 その調査のために一階の105号室の正面にいた時に、102号室から人が出てくるのが見えた。電動車椅子に乗る頬骨の目立つ横顔をした坊主頭の男の人と、それを押す長髪の女の人、その二人に続いて出てきたほうれい線の目立つ男の人の三人だ。私が後ろから「こんにちは」と声をかけると、車椅子を押す女の人が振り返って頭を下げた。ほうれい線の男の人も、その様子を見て私のほうを向いて同じようにする。
 私はこの三人の前に出て、「ここの住人の方ですか?」と質問する。それを受けてほうれい線の男の人は自分の両手を動かし、それを見た女の人が、「こちらの方がそうですよ」と説明した。その間ほうれい線の男の人は一言も発しないでニコニコ笑っていたから、どうやらほうれい線の男の人は聴覚障がい者で、女の人はヘルパーの人だと予想できる。楓さんとの経験とこの物件の詳細を知っているから、この辺の勘が鋭くなっていた。
 車椅子に乗っていた男の人は私の顔を見ると、アーアーとうなって何かのメッセージを送り始めた。それを受けて女の人が、車椅子と紐でつながっている透明なプレートをその人の手元まで持っていった。近づいて見てみると、プレートには五十音とアラビア数字が印字されている。車椅子の人は、自分の指でプレートに書かれた五十音をこっくりさんみたいになぞっていった。順番にその文字を追っていくと、『こ・ん・に・ち・は』となった。どうやらこの人は、体を動かす神経に障がいを抱えているらしかった。どういう理由で三人がここに集まっていたのかは聞かなかったが、少なくとも大きな音を出すようなことをしに来たわけではないのは理解できる。
「ところであなたは……」
 女の人がほうれい線の男の人の手話を口頭に訳した。いちいち嘘をついて正体を隠す意味もないし、それは高宮さんの一件で懲りている。
「先日ここで亡くなった橋本さんの知り合いで……」
 今回の私は自分の身分を正直に説明した。
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