27 / 214
♯3ー3
しおりを挟む
自分の考えを並べていく。
これがPTAから天草先生が嫌われている理由だ。この人は日頃からよくしゃべる性格で、授業や部活の開始前に二十分ほど生徒に向けて話題の提供をするのである。去年の夏休み中の部活動では、昔自分が金色のガッシュベルのカードゲームの公式大会に出場して二回戦で敗退した話を一時間ほど行ったせいで、保護者からクレームが来るという事件も引き起こしている。私は一度も参加したことはないが、教師だけで飲み会を行うと、この先生はお開きになるまで延々と何かしらの話題を酒の肴に提供してくれるという。しつこい性格が嫌いな、私みたいなタイプが好きになれない系譜の人間だ。
こうして私たち二人は、階段を下りて二階の職員室に入って小林先生を探す。彼女は私たちに気づくと、室内東側の出入り口付近の席、三年生のクラス担任が固まっているあたりから手招きしてきた。そして彼女の目の前では、一人の男子生徒が背もたれのない丸椅子に座っていた。
案の定、内田平治だった。
「樋口先生、天草先生。いい加減内田君に部活に入るように言ってやってください」
この小林先生の言葉を受けて私は、「ああ。やっぱりそういう話か」と内心ため息をつき、天草先生は、「あ、この子まだ部活も決まってなかったんだ」と声に出した。横にある小林先生のデスクの上には、鉛筆と部活動の入部届けの用紙が置かれている。
私だって、校内放送を使って呼び出しを食らうようなことにならないようにと、内田に部活に入るように説得し続けてきた。だが彼のセリフは決まって、「半年だけ部活に入ることになんの意味があるんですか?」だった。まごうことなき事実だし、今から調整して夏の大会に間に合うような部活なんてそうはないだろう。
だが校則には教員も簡単には逆らえないのだ。彼にもその辺に対して大人の対応を取ってほしいのに、この被災者は身も蓋もない正論でそれを断ってしまう。地震で家族を亡くしたという、誰でも無条件で同情してくれる理由がなければ、ひっぱたかれても文句は言えないだろう(少なくとも私が学生だった時代では)。
「なら吹奏楽部に来ないか? 初心者大歓迎だし、別に大会とか意識しないで楽しくやればいいしさ」
そんな内田に対して、天草先生がひざを曲げ、彼と同じ目線になって話しかける。まるで駄々をこねている小学生をなだめるような言い方だ(嫌味で言っているわけではない)。
というか吹奏楽部って、よく聞く話だと運動部並みに筋トレや肺活量の訓練をするので
これがPTAから天草先生が嫌われている理由だ。この人は日頃からよくしゃべる性格で、授業や部活の開始前に二十分ほど生徒に向けて話題の提供をするのである。去年の夏休み中の部活動では、昔自分が金色のガッシュベルのカードゲームの公式大会に出場して二回戦で敗退した話を一時間ほど行ったせいで、保護者からクレームが来るという事件も引き起こしている。私は一度も参加したことはないが、教師だけで飲み会を行うと、この先生はお開きになるまで延々と何かしらの話題を酒の肴に提供してくれるという。しつこい性格が嫌いな、私みたいなタイプが好きになれない系譜の人間だ。
こうして私たち二人は、階段を下りて二階の職員室に入って小林先生を探す。彼女は私たちに気づくと、室内東側の出入り口付近の席、三年生のクラス担任が固まっているあたりから手招きしてきた。そして彼女の目の前では、一人の男子生徒が背もたれのない丸椅子に座っていた。
案の定、内田平治だった。
「樋口先生、天草先生。いい加減内田君に部活に入るように言ってやってください」
この小林先生の言葉を受けて私は、「ああ。やっぱりそういう話か」と内心ため息をつき、天草先生は、「あ、この子まだ部活も決まってなかったんだ」と声に出した。横にある小林先生のデスクの上には、鉛筆と部活動の入部届けの用紙が置かれている。
私だって、校内放送を使って呼び出しを食らうようなことにならないようにと、内田に部活に入るように説得し続けてきた。だが彼のセリフは決まって、「半年だけ部活に入ることになんの意味があるんですか?」だった。まごうことなき事実だし、今から調整して夏の大会に間に合うような部活なんてそうはないだろう。
だが校則には教員も簡単には逆らえないのだ。彼にもその辺に対して大人の対応を取ってほしいのに、この被災者は身も蓋もない正論でそれを断ってしまう。地震で家族を亡くしたという、誰でも無条件で同情してくれる理由がなければ、ひっぱたかれても文句は言えないだろう(少なくとも私が学生だった時代では)。
「なら吹奏楽部に来ないか? 初心者大歓迎だし、別に大会とか意識しないで楽しくやればいいしさ」
そんな内田に対して、天草先生がひざを曲げ、彼と同じ目線になって話しかける。まるで駄々をこねている小学生をなだめるような言い方だ(嫌味で言っているわけではない)。
というか吹奏楽部って、よく聞く話だと運動部並みに筋トレや肺活量の訓練をするので
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
神木さんちのお兄ちゃん!
雪桜 あやめ
キャラ文芸
✨ キャラ文芸ランキング週間・月間1位&累計250万pt突破、ありがとうございます!
神木家の双子の妹弟・華と蓮には"絶世の美男子"と言われるほどの金髪碧眼な『兄』がいる。
美人でカッコよくて、その上優しいお兄ちゃんは、常にみんなの人気者!
だけど、そんな兄には、何故か彼女がいなかった。
幼い頃に母を亡くし、いつも母親代わりだったお兄ちゃん。もしかして、お兄ちゃんが彼女が作らないのは自分達のせい?!
そう思った華と蓮は、兄のためにも自立することを決意する。
だけど、このお兄ちゃん。実は、家族しか愛せない超拗らせた兄だった!
これは、モテまくってるくせに家族しか愛せない美人すぎるお兄ちゃんと、兄離れしたいけど、なかなか出来ない双子の妹弟が繰り広げる、甘くて優しくて、ちょっぴり切ない愛と絆のハートフルラブ(家族愛)コメディ。
果たして、家族しか愛せないお兄ちゃんに、恋人ができる日はくるのか?
これは、美人すぎるお兄ちゃんがいる神木一家の、波乱万丈な日々を綴った物語である。
***
イラストは、全て自作です。
カクヨムにて、先行連載中。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる