29 / 214
♯3ー5
しおりを挟む
「分かりました! 分かりました! じゃあこうしましょう!」
内田の胸ぐらをつかみかかろうとした小林先生を止めるように、私は視線を飛ばし合う二人の間柄に割って入った。
「内田はパソコン部に入れます! もう誰がなんと言おうと、これ以外認めません!」
「え? ちょっといいの、樋口先生? そんなこと勝手に決めちゃって」
「構いませんよ、天草先生。どうせうちの部活なんて、運動神経や性格の問題で運動部が無理な生徒のたまり場なんですから。そして内田は顔を出さなくても結構。真面目にやってきてワープロ検定受けるもよし、一度も来ないで幽霊部員になるもよし。好きにすればいい」
「待ちなさい、樋口先生。幽霊部員を許可なんて」
「問題ありませんよ、小林先生。うち、全学年合わせて十人以上幽霊部員がいるんですから。今さら一人増えるのがなんだって言うんですか」
私は二人の指摘を無理矢理丸め込めると、デスクに置いてあった入部届の用紙に体を向け、自分で『パソコン部』『内田平治』と書き込んでやった。
「はい、これであんた、今日からパソコン部員だから、参加したければ明日から四階のパソコン室に来なさい。以上。今日はもう帰りなさい」
私がその用紙を見せながら内田に宣言すると、彼は「分かりました。失礼します」とだけ言って、さっさと職員室から出ていった。
そしてこんなめちゃくちゃな対応の仕方をすれば、私が上司から怒られるのは当然の話である。
「ちょっと、樋口先生。今のはなんですか」
内田が職員室から出たのを確認すると、小林先生が私に詰め寄ってくる。そこからしばらく、詳細を説明するのも面倒な説教の時間が始まった。
このくらいの時期になると、私の中から内田平治とまともにつき合う気力はなくなっていた。例えるなら、骨ばかりの魚をピンセットで丁寧に小骨を取ってまで食べる奴はいない、という感じだろう。人付き合いの仕方を知らないと社会に出た時に困るじゃないか、と思う人もいるかもしれない。だが、大した趣味もなく、仕事仲間との飲み会にも行かず、人付き合いの悪い冷たい先生扱いされているこんな私でさえ、教師という仕事ができているのだ。だから内田だって、ちゃんと大学まで行かせてやれば、普通に就職して普通に暮らしていけるはずだ。それが私の中での考えだった(ずいぶんと勝手な言い分である)。
ところがこの東中のほかの教師陣は、どうしても内田から人懐っこさを感じさせられる
内田の胸ぐらをつかみかかろうとした小林先生を止めるように、私は視線を飛ばし合う二人の間柄に割って入った。
「内田はパソコン部に入れます! もう誰がなんと言おうと、これ以外認めません!」
「え? ちょっといいの、樋口先生? そんなこと勝手に決めちゃって」
「構いませんよ、天草先生。どうせうちの部活なんて、運動神経や性格の問題で運動部が無理な生徒のたまり場なんですから。そして内田は顔を出さなくても結構。真面目にやってきてワープロ検定受けるもよし、一度も来ないで幽霊部員になるもよし。好きにすればいい」
「待ちなさい、樋口先生。幽霊部員を許可なんて」
「問題ありませんよ、小林先生。うち、全学年合わせて十人以上幽霊部員がいるんですから。今さら一人増えるのがなんだって言うんですか」
私は二人の指摘を無理矢理丸め込めると、デスクに置いてあった入部届の用紙に体を向け、自分で『パソコン部』『内田平治』と書き込んでやった。
「はい、これであんた、今日からパソコン部員だから、参加したければ明日から四階のパソコン室に来なさい。以上。今日はもう帰りなさい」
私がその用紙を見せながら内田に宣言すると、彼は「分かりました。失礼します」とだけ言って、さっさと職員室から出ていった。
そしてこんなめちゃくちゃな対応の仕方をすれば、私が上司から怒られるのは当然の話である。
「ちょっと、樋口先生。今のはなんですか」
内田が職員室から出たのを確認すると、小林先生が私に詰め寄ってくる。そこからしばらく、詳細を説明するのも面倒な説教の時間が始まった。
このくらいの時期になると、私の中から内田平治とまともにつき合う気力はなくなっていた。例えるなら、骨ばかりの魚をピンセットで丁寧に小骨を取ってまで食べる奴はいない、という感じだろう。人付き合いの仕方を知らないと社会に出た時に困るじゃないか、と思う人もいるかもしれない。だが、大した趣味もなく、仕事仲間との飲み会にも行かず、人付き合いの悪い冷たい先生扱いされているこんな私でさえ、教師という仕事ができているのだ。だから内田だって、ちゃんと大学まで行かせてやれば、普通に就職して普通に暮らしていけるはずだ。それが私の中での考えだった(ずいぶんと勝手な言い分である)。
ところがこの東中のほかの教師陣は、どうしても内田から人懐っこさを感じさせられる
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
神木さんちのお兄ちゃん!
雪桜 あやめ
キャラ文芸
✨ キャラ文芸ランキング週間・月間1位&累計250万pt突破、ありがとうございます!
神木家の双子の妹弟・華と蓮には"絶世の美男子"と言われるほどの金髪碧眼な『兄』がいる。
美人でカッコよくて、その上優しいお兄ちゃんは、常にみんなの人気者!
だけど、そんな兄には、何故か彼女がいなかった。
幼い頃に母を亡くし、いつも母親代わりだったお兄ちゃん。もしかして、お兄ちゃんが彼女が作らないのは自分達のせい?!
そう思った華と蓮は、兄のためにも自立することを決意する。
だけど、このお兄ちゃん。実は、家族しか愛せない超拗らせた兄だった!
これは、モテまくってるくせに家族しか愛せない美人すぎるお兄ちゃんと、兄離れしたいけど、なかなか出来ない双子の妹弟が繰り広げる、甘くて優しくて、ちょっぴり切ない愛と絆のハートフルラブ(家族愛)コメディ。
果たして、家族しか愛せないお兄ちゃんに、恋人ができる日はくるのか?
これは、美人すぎるお兄ちゃんがいる神木一家の、波乱万丈な日々を綴った物語である。
***
イラストは、全て自作です。
カクヨムにて、先行連載中。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる