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♯5ー5
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私が小さく頭を下げながらそういった話をすると、信子さんは「そうですか」と返してきた。とりあえずは安心してくれた様子だった。
「それで、大変ぶしつけなお願いなのですか、ご家庭でもできるだけ今回の件を蒸し返すようなことは避けていただけるとありがたいのですか……。本人たちも反省しておりますし、話を長引かせるのは、内田君にとってもあまりよくないことと思いますので」
「はい、分かりました。その節は本当にご迷惑をおかけしました」
「いえいえ。こちらこそ」
こうして佐久間校長からの指示をできるだけ自然にこなして、私は信子さんが電話を切るのを待った。完全に会話が終わって五秒ほどしたところで電話は切られた。
「終わりました。何かありあましたか」
私は受話器を戻して、ずっとマグカップを持って立っていた三島先生に視線を戻す。彼女は「あ、ええっと……」と、何か狼狽する様子を見せた。よほど今日の件が堪えたのだろうか。自分のクラスの話じゃないのに。
そして彼女はしばらく黙り込んでからマグカップの一つを私のデスクに置き、こんなことを質問してきた。
「お仕事、自宅に持ち帰ってやったりしないんですか?」
「え? 仕事? そう言えば誰もそういうことしたことないですね……。自分ちの電気代もったいないですし、急ぎの用事とかないのでしたら、三島先生もやってけばいいと思いますよ」
私は少し驚きながらも、個人的な解釈を交えながら三島先生に言った。あの思いつめた感じからは想像もできないほど単純な質問に拍子抜けした気分だった。
フロッピーディスクかUSBメモリを利用すれば、自宅に仕事を持ち込むことも可能ではある。しかし東中では、誰も仕事を家に持ち帰ってまで残業を減らそうとはしなかった。確かに教師の給料にはあらかじめ残業分の報酬が上乗せされているとはいえ、彼女の言う通り律儀に学校に残ることもないと思うのだが。私自身、それがずっと当たり前だったせいで考えたこともなかった。
結局この日は、私、三島先生、国語の佐藤先生の三人が残業をし、警備の都合上午後九時になる少し前に仕事を切り上げて駐車場に向かった。
「三島先生、樋口先生。何か食いに行きませんか?」
そう言ってきたのは、アニオタで有名な佐藤先生だった。
「それで、大変ぶしつけなお願いなのですか、ご家庭でもできるだけ今回の件を蒸し返すようなことは避けていただけるとありがたいのですか……。本人たちも反省しておりますし、話を長引かせるのは、内田君にとってもあまりよくないことと思いますので」
「はい、分かりました。その節は本当にご迷惑をおかけしました」
「いえいえ。こちらこそ」
こうして佐久間校長からの指示をできるだけ自然にこなして、私は信子さんが電話を切るのを待った。完全に会話が終わって五秒ほどしたところで電話は切られた。
「終わりました。何かありあましたか」
私は受話器を戻して、ずっとマグカップを持って立っていた三島先生に視線を戻す。彼女は「あ、ええっと……」と、何か狼狽する様子を見せた。よほど今日の件が堪えたのだろうか。自分のクラスの話じゃないのに。
そして彼女はしばらく黙り込んでからマグカップの一つを私のデスクに置き、こんなことを質問してきた。
「お仕事、自宅に持ち帰ってやったりしないんですか?」
「え? 仕事? そう言えば誰もそういうことしたことないですね……。自分ちの電気代もったいないですし、急ぎの用事とかないのでしたら、三島先生もやってけばいいと思いますよ」
私は少し驚きながらも、個人的な解釈を交えながら三島先生に言った。あの思いつめた感じからは想像もできないほど単純な質問に拍子抜けした気分だった。
フロッピーディスクかUSBメモリを利用すれば、自宅に仕事を持ち込むことも可能ではある。しかし東中では、誰も仕事を家に持ち帰ってまで残業を減らそうとはしなかった。確かに教師の給料にはあらかじめ残業分の報酬が上乗せされているとはいえ、彼女の言う通り律儀に学校に残ることもないと思うのだが。私自身、それがずっと当たり前だったせいで考えたこともなかった。
結局この日は、私、三島先生、国語の佐藤先生の三人が残業をし、警備の都合上午後九時になる少し前に仕事を切り上げて駐車場に向かった。
「三島先生、樋口先生。何か食いに行きませんか?」
そう言ってきたのは、アニオタで有名な佐藤先生だった。
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