イレブン

九十九光

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♯5ー10

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「どうしたの、樋口先生。私より若いんだから、もっとシャキッとしなさいよ」

 私が席について早々、いつものジャージ姿の小林先生が左横から話しかけてきた。それが出合い頭に言う言葉か。そういう態度の同僚が多いから、勤務状況を少し調べた若者から、教員はブラックな仕事だと言われるのだろう。さすがにこんなことは言わなかったが、私は「はい、すいません」と言いながら彼女の顔を見上げた。

 珍しいことに、小林先生の表情からは、見てすぐに分かる感情というものが見受けられなかった。普段通りの真面目一徹な感じの硬い表情の中に、「これくらい適当でもいいでしょ」と言いたげな緩さのある目元と口元、という塩梅だろうか。自分のクラスの問題で疲れているのは、彼女も同じということらしかった。

 小林先生がその場に立って話を続ける。

「さっきの時間も、女子の中で不安感みたいなものが感じられたわ。普段男子のことをそこまで気にかけない女子にも、内田に関する事の重大さが影響してるみたい」

 私は「そうですか」とうなずきながら返事を返した。それくらいのことなら、朝のホームルームでほぼ毎日顔を合わせているのだから、私にだってうっすらと分かる。大事な情報交換の時間にこんないい加減な話しかできないほど疲弊しているということだろう。

 続けて小林先生は、ジャージのジッパーを開けて中のピンクのTシャツを見せてから、こんな話を教えてくれた。

「東門から出て少し北行ったところに、送電鉄塔のある原っぱあるのは知ってるでしょ。さっきの時間の女子の私語で知ったんだけど、今朝の登校の時に内田がカバンをひったくられて、そこに放り込まれたそうよ」

「……。犯人は分かります?」

「さあ……。そこまでは聞こえなかったわ」

 暗い話をすると自然と口調も暗くなるらしく、小林先生の声にはつらさと重さが入り混じっていた。

 内田平治に関する話は、毎回こうやって人を暗い気持ちにさせるものばかりだった。そろそろ彼の話題で盛り上がりのようなものを感じてみたいと考えたくなる。

 私は手にしていた赤いサインペンを置き、「ちょっと待ってくださいね」と言ってノートパソコンを立ち上げてExcelの画面を開いた。採点が終わった生徒の記録はすべてここに打ち込んであり、いつでも学年平均などが出せる状態にしてあった。

 私は今回の社会科のテストのうち、二組の結果を連ねた画面を小林先生に見せ、その中に
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