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♯10ー8
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このあとの私が運転する車内でも、私たちは偶然同じバスに乗り合わせた他人同士のように、一切の会話をしなかった。
今日からの家庭訪問は初日に巽が丘を、二日目に鍋山と八幡を中心に回ることになる。前回の家庭訪問と違いすべての家を二日で回らなければいけないが、今回は午前中もフルに使うことができる。不安感を長くため込まない可能性が出るのはありがたいが、個人的には珍しい休日返上の仕事なので、嬉しくもなんともない。
そして巽が丘に家庭訪問となれば、松田母を避けては通れないだろう。彼女は当然、自分の娘が今回の事件で再び無断欠席をするようになったことに腹を立てていた。
「何をやってるんですか、揃いも揃って! 子供を学校に行かせるのはあなたたちの仕事でしょう! それがうまくいかないからって私たちに泣きついて! あなたたちそれでも教師ですか! しかも孫入さんの奥さんに聞いたら、クラス全体に広がってるそうじゃないですか! 職務怠慢にもほどがあります! いい加減にしてください!」
彼女は今回も私たちを玄関先で拘束し、言いたいことをありったけ言い続けた。その間、小林先生は「申し訳ありません」と言いながら頭を下げるだけで、相手が自然と落ち着くのを待つばかりだった。これでは私も同じように頭を下げるしかない。
こうして苦痛の十分間が終了し、ようやくこちらから質問をすることができるようになった。質問は私が事前に紙にメモしてきた内容を復唱して行われる。
「それでは、里穂ちゃんが学校に来なくなったことで、何か心当たりは……」
「ありません! 前にも言ったでしょう!」
「……。今、里穂ちゃんはどちらに」
「知りませんよ! 今朝は家の人間が起きるずっと前に、自転車でどこかに出かけたんですから!」
「平日の間も、そのような感じなのでしょうか」
「ええ、そうよ! まるで逃げるように朝早く出て夜遅くに帰ってくるのよ! 今度勝手に学校休んだら許さないわよって言ってもまったく聞かない!」
ここまで怒っている様子を見せたのはこの家だけだったが、基本的にどの家でもこれと同じ意味の回答が返ってきた。「五歳の末の子が赤ちゃん返りを起こすくらいに反抗期なんです」と、その末の子を抱きながら井上母が答え、「昨日も主人と言い争いになって、あわや殴り合いになりそうになったんです」と、山本母は泣きながら答えた。
唯一これらと違う状況になったのは、この日の最後に伺った原田家だけだった。
今日からの家庭訪問は初日に巽が丘を、二日目に鍋山と八幡を中心に回ることになる。前回の家庭訪問と違いすべての家を二日で回らなければいけないが、今回は午前中もフルに使うことができる。不安感を長くため込まない可能性が出るのはありがたいが、個人的には珍しい休日返上の仕事なので、嬉しくもなんともない。
そして巽が丘に家庭訪問となれば、松田母を避けては通れないだろう。彼女は当然、自分の娘が今回の事件で再び無断欠席をするようになったことに腹を立てていた。
「何をやってるんですか、揃いも揃って! 子供を学校に行かせるのはあなたたちの仕事でしょう! それがうまくいかないからって私たちに泣きついて! あなたたちそれでも教師ですか! しかも孫入さんの奥さんに聞いたら、クラス全体に広がってるそうじゃないですか! 職務怠慢にもほどがあります! いい加減にしてください!」
彼女は今回も私たちを玄関先で拘束し、言いたいことをありったけ言い続けた。その間、小林先生は「申し訳ありません」と言いながら頭を下げるだけで、相手が自然と落ち着くのを待つばかりだった。これでは私も同じように頭を下げるしかない。
こうして苦痛の十分間が終了し、ようやくこちらから質問をすることができるようになった。質問は私が事前に紙にメモしてきた内容を復唱して行われる。
「それでは、里穂ちゃんが学校に来なくなったことで、何か心当たりは……」
「ありません! 前にも言ったでしょう!」
「……。今、里穂ちゃんはどちらに」
「知りませんよ! 今朝は家の人間が起きるずっと前に、自転車でどこかに出かけたんですから!」
「平日の間も、そのような感じなのでしょうか」
「ええ、そうよ! まるで逃げるように朝早く出て夜遅くに帰ってくるのよ! 今度勝手に学校休んだら許さないわよって言ってもまったく聞かない!」
ここまで怒っている様子を見せたのはこの家だけだったが、基本的にどの家でもこれと同じ意味の回答が返ってきた。「五歳の末の子が赤ちゃん返りを起こすくらいに反抗期なんです」と、その末の子を抱きながら井上母が答え、「昨日も主人と言い争いになって、あわや殴り合いになりそうになったんです」と、山本母は泣きながら答えた。
唯一これらと違う状況になったのは、この日の最後に伺った原田家だけだった。
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