138 / 214
♯13ー3
しおりを挟む
に帽子にマスクという衛生面第一のものに変わっている。私が「それじゃあ、給食取りに行くぞ」と指示を出すと、内田は眉一つ動かさず私のあとをついて一階に下りていく。
給食センターから運ばれる給食や食器類は、校舎一階の東側階段の向かいにある配膳室に集められる。そこで全学年各クラスの当番が集合し、自分たちの取り分を教室に持っていくのである。
そして三年生における給食関係の問題は、残飯以外にも発生している。私たちが階段を使ってここにきている以上、鍋やバット、食器の入ったカゴなどを、その階段を上がって自分たちの教室まで運ぶことになるのは分かるだろう。普通であれは十数人で分担してやる作業なのだが、今は私と内田の二人でそれをやらねばならないのだ。つらくないわけがない。私たち二人は必要なものすべてを教室に運ぶために、最低でも四往復はすることになる。おまけに給食終了後に、約二十八人分の残飯入りのそれらを再び四往復してこの部屋まで持ってこなければならないとなると、もう食事の時間が楽しくもなんとも思えなくなるのは仕方がないことと言える。
そんな重労働にも、内田は顔色一つ変えなかった。つらくないわけがないはずなのだが、彼の場合その感情が表に出てきていなかったのだ。まるで古武士のように徹底した態度である。祖父母の二人はちゃんと感情が表に出る人だというのに。
そんなつらい労働を経て、私たち二人は自分の取り分を皿に盛りつけ、自分の席に座って給食に手をつける。この日は麦ご飯に甘口に仕上げたカレー、コールスローサラダに円形から切り出されたプロセスチーズ、そして学校給食のレギュラーである牛乳だった。
何十人分も机が用意されているこの教室で食事しているのは、私と内田の二人だけである。人との会話に積極性がない者しかおらず、おまけに書き入れ時を過ぎたファミレスよりずっと人の少ないこの空間では、壁に埋め込まれた放送機材から聞こえるRCサクセションの『ぼくの好きな先生』がシュールに聞こえる。
そんな矢先に、教室の前黒板の真下の壁から、電話のコール音が室内に鳴り響いた。内線電話の合図だ。
「内田、ちょっと放送小さくするよ」
私は一言言ってから壁に取りつけられた固定電話横にある音量調整のつまみをいじる。その後左手で受話器を取り、「もしもし、三の二、樋口です」と、電話の向こうの人間に言った。
「あ、樋口先生、ご無沙汰しております。石井空介の母です」
給食センターから運ばれる給食や食器類は、校舎一階の東側階段の向かいにある配膳室に集められる。そこで全学年各クラスの当番が集合し、自分たちの取り分を教室に持っていくのである。
そして三年生における給食関係の問題は、残飯以外にも発生している。私たちが階段を使ってここにきている以上、鍋やバット、食器の入ったカゴなどを、その階段を上がって自分たちの教室まで運ぶことになるのは分かるだろう。普通であれは十数人で分担してやる作業なのだが、今は私と内田の二人でそれをやらねばならないのだ。つらくないわけがない。私たち二人は必要なものすべてを教室に運ぶために、最低でも四往復はすることになる。おまけに給食終了後に、約二十八人分の残飯入りのそれらを再び四往復してこの部屋まで持ってこなければならないとなると、もう食事の時間が楽しくもなんとも思えなくなるのは仕方がないことと言える。
そんな重労働にも、内田は顔色一つ変えなかった。つらくないわけがないはずなのだが、彼の場合その感情が表に出てきていなかったのだ。まるで古武士のように徹底した態度である。祖父母の二人はちゃんと感情が表に出る人だというのに。
そんなつらい労働を経て、私たち二人は自分の取り分を皿に盛りつけ、自分の席に座って給食に手をつける。この日は麦ご飯に甘口に仕上げたカレー、コールスローサラダに円形から切り出されたプロセスチーズ、そして学校給食のレギュラーである牛乳だった。
何十人分も机が用意されているこの教室で食事しているのは、私と内田の二人だけである。人との会話に積極性がない者しかおらず、おまけに書き入れ時を過ぎたファミレスよりずっと人の少ないこの空間では、壁に埋め込まれた放送機材から聞こえるRCサクセションの『ぼくの好きな先生』がシュールに聞こえる。
そんな矢先に、教室の前黒板の真下の壁から、電話のコール音が室内に鳴り響いた。内線電話の合図だ。
「内田、ちょっと放送小さくするよ」
私は一言言ってから壁に取りつけられた固定電話横にある音量調整のつまみをいじる。その後左手で受話器を取り、「もしもし、三の二、樋口です」と、電話の向こうの人間に言った。
「あ、樋口先生、ご無沙汰しております。石井空介の母です」
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
神木さんちのお兄ちゃん!
雪桜 あやめ
キャラ文芸
✨ キャラ文芸ランキング週間・月間1位&累計250万pt突破、ありがとうございます!
神木家の双子の妹弟・華と蓮には"絶世の美男子"と言われるほどの金髪碧眼な『兄』がいる。
美人でカッコよくて、その上優しいお兄ちゃんは、常にみんなの人気者!
だけど、そんな兄には、何故か彼女がいなかった。
幼い頃に母を亡くし、いつも母親代わりだったお兄ちゃん。もしかして、お兄ちゃんが彼女が作らないのは自分達のせい?!
そう思った華と蓮は、兄のためにも自立することを決意する。
だけど、このお兄ちゃん。実は、家族しか愛せない超拗らせた兄だった!
これは、モテまくってるくせに家族しか愛せない美人すぎるお兄ちゃんと、兄離れしたいけど、なかなか出来ない双子の妹弟が繰り広げる、甘くて優しくて、ちょっぴり切ない愛と絆のハートフルラブ(家族愛)コメディ。
果たして、家族しか愛せないお兄ちゃんに、恋人ができる日はくるのか?
これは、美人すぎるお兄ちゃんがいる神木一家の、波乱万丈な日々を綴った物語である。
***
イラストは、全て自作です。
カクヨムにて、先行連載中。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる