イレブン

九十九光

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♯13ー12

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正しいと思った道に進むためのノーではない。自分への自信のなさから来た、情けない逃げの一手としてのノーだった。

 私はいつの間にか、後方に弾き飛ばすようにして椅子から立ち上がっていた。全員の視線が私のことを見上げている。一人一人が何を考えているのかを予想する力はなかった。

 少し間をあけて小林先生が言う。

「別に強制はしないわ。でも今日のこの話、誰にも言わないとだけ約束して」

「……。分かりました」

 私はその場で一礼すると、使わなかった筆記具を持ち、何も言わずに教室から出ていった。

 職員室に戻ると、パソコンに向かって何やら作業をしている西川先生が声をかけてきた。

「樋口先生、三年の先生たち、どうしたんです?」

 何かを疑うような感じのしないその目をしばらく見たあとで、私はこう答えた。

「三年の不登校問題で、空き教室でちょっと話し合いを……」

「あ、そう。大変ですね、皆さん」

「ええ、まあ」

 そこから私は逃げるようにパソコンに向かって、保護者向けのプリントを作成し続けた。
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