200 / 214
♯19ー5
しおりを挟む
内田はやはり、すぐに答えを言わなかった。日本人共通のイエスマンの意思と、自分の中の恐怖心を天秤にかけている状況だろう。そんな時間がまるで一日過ぎたような、そんな緊張感と疲労感に襲われた時、内田は重たい口をようやく開いた。
「……。分かりました」
こうして内田は三分ほどかけて夏の制服に着替え、私たち三人は私の運転で東中へと向かった。ここも先ほど同様五分とかからず、西門から入って教職員用の駐車場に駐車した時、時刻は午前八時二十五分。ここまで会話は一言もなかった。
小暮は学ランを脱いで夏服に戻りながら武道場正面の出入り口からほかのメンバーと合流し、私は内田にシューズを持って体育館に行くように伝えてから先にそこに向かった。
舞台が北向きに作られた体育館には、すでに吹奏楽部員を除いた一、二年生の生徒約三百人がいた。全員西川先生をはじめとした先生たちの指示で、緞帳が下りている壇上に向かって体育座りをしており、学校祭開始を宣言する校長先生の話を待っている様子だった。
三年生の先生たちは、一応いつ来るか分からないけやきのきのために指示された場所で待機していると称して、事前に私たちで話し合った所定の待機場所でスタンバイしていた。舞台から見て左右上方にある、窓ガラスやライトが設置されているキャットウォークと呼ばれる通路には、そこへ上がるための白い梯子が体育館の前後にある。合わせて四つあるそれらの最上部に、新貝、佐藤、三島先生に私を含めた、計四人の若手の先生が座っていることになっている。体育館内の放送室には深沢先生が待機し、山田先生と小林先生、下級生の吹奏楽部員を連れてあとから来る天草先生は、舞台左右にある壇上に上がるための出入り口と壇上正面に立つ予定だ。
私は体育館に入るなり、事前に打ち合わせておいた体育館西側後方の梯子をのぼり、どうにかして上へと上がろうとする。これが普段文化部を顧問している身としては、事前に思っていたよりずっと腰が引けてしまう。下で見ていた大野先生が、「樋口先生、大丈夫ですか?」と声をかけてきたくらいだ。
そんな苦労をして定位置につき、向こう側正面の梯子の上に新貝先生を確認したところ、彼は体育館前方の下を見るように指をさしてきた。私がおとなしくそれに従うと、そこには
「……。分かりました」
こうして内田は三分ほどかけて夏の制服に着替え、私たち三人は私の運転で東中へと向かった。ここも先ほど同様五分とかからず、西門から入って教職員用の駐車場に駐車した時、時刻は午前八時二十五分。ここまで会話は一言もなかった。
小暮は学ランを脱いで夏服に戻りながら武道場正面の出入り口からほかのメンバーと合流し、私は内田にシューズを持って体育館に行くように伝えてから先にそこに向かった。
舞台が北向きに作られた体育館には、すでに吹奏楽部員を除いた一、二年生の生徒約三百人がいた。全員西川先生をはじめとした先生たちの指示で、緞帳が下りている壇上に向かって体育座りをしており、学校祭開始を宣言する校長先生の話を待っている様子だった。
三年生の先生たちは、一応いつ来るか分からないけやきのきのために指示された場所で待機していると称して、事前に私たちで話し合った所定の待機場所でスタンバイしていた。舞台から見て左右上方にある、窓ガラスやライトが設置されているキャットウォークと呼ばれる通路には、そこへ上がるための白い梯子が体育館の前後にある。合わせて四つあるそれらの最上部に、新貝、佐藤、三島先生に私を含めた、計四人の若手の先生が座っていることになっている。体育館内の放送室には深沢先生が待機し、山田先生と小林先生、下級生の吹奏楽部員を連れてあとから来る天草先生は、舞台左右にある壇上に上がるための出入り口と壇上正面に立つ予定だ。
私は体育館に入るなり、事前に打ち合わせておいた体育館西側後方の梯子をのぼり、どうにかして上へと上がろうとする。これが普段文化部を顧問している身としては、事前に思っていたよりずっと腰が引けてしまう。下で見ていた大野先生が、「樋口先生、大丈夫ですか?」と声をかけてきたくらいだ。
そんな苦労をして定位置につき、向こう側正面の梯子の上に新貝先生を確認したところ、彼は体育館前方の下を見るように指をさしてきた。私がおとなしくそれに従うと、そこには
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
神木さんちのお兄ちゃん!
雪桜 あやめ
キャラ文芸
✨ キャラ文芸ランキング週間・月間1位&累計250万pt突破、ありがとうございます!
神木家の双子の妹弟・華と蓮には"絶世の美男子"と言われるほどの金髪碧眼な『兄』がいる。
美人でカッコよくて、その上優しいお兄ちゃんは、常にみんなの人気者!
だけど、そんな兄には、何故か彼女がいなかった。
幼い頃に母を亡くし、いつも母親代わりだったお兄ちゃん。もしかして、お兄ちゃんが彼女が作らないのは自分達のせい?!
そう思った華と蓮は、兄のためにも自立することを決意する。
だけど、このお兄ちゃん。実は、家族しか愛せない超拗らせた兄だった!
これは、モテまくってるくせに家族しか愛せない美人すぎるお兄ちゃんと、兄離れしたいけど、なかなか出来ない双子の妹弟が繰り広げる、甘くて優しくて、ちょっぴり切ない愛と絆のハートフルラブ(家族愛)コメディ。
果たして、家族しか愛せないお兄ちゃんに、恋人ができる日はくるのか?
これは、美人すぎるお兄ちゃんがいる神木一家の、波乱万丈な日々を綴った物語である。
***
イラストは、全て自作です。
カクヨムにて、先行連載中。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる