イレブン

九十九光

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♯19ー12

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った友との再会の願望。石井はこの曲を、スタンドにはめ込まれたマイクを両手でしっかりと握りながら歌いきった。その間誰も合いの手を入れなかった。

 五分ほどの演奏が終了し、数秒の余韻を残してギターの音が会場から消える。体育館全体から拍手が起こり、どこからか賞賛の指笛が聞こえてきた。

「空介君、とってもいい曲ありがとう! この調子で後続のみんなもドンドン盛り上げていこうぜ! お次は野球部三年男子プレゼンツ! AKB48の『ヘビーローテーション』!」

 ちょっと湿っぽさすら感じられる空気が、中沢雄二をはじめとしたセーラー服姿の男子たちによってぶち壊しになった。

 午後二時を経過しても、体育館内の盛り上がりはまるで冷めることはなかった。「今年の東中の学校祭はいつもと違う」という話だけが学区内に広まったのか知らないが、お年寄りや小学生、OBらしき高校生くらいの集団まで入ってくるようになったのだ。

 そんなOBの中に、あの内田庵が混じっていたことには驚かされた。

 立川に引っ張られて壇上にあげられた彼は、いつもと同じようなだらしのない私服姿のまま周囲を見渡し、「何すればいいの?」と、横にいる立川に質問する。その後会場内で笑いが起こると、立川は「一緒にデュエットしましょう! コブクロ&絢香で『WINDING ROAD』!」と、後ろの浜崎たちをよそにマイクに向かって宣言する。そこから一分ほどしてから曲がスピーカーから流れ、予定にない演目が始まった。つまはじきにされそうになった浜崎たちも強引に二人に合流し、この曲もしっかり盛り上がってくれた。

 言わずもがな、これほどのにぎわいは当初の私たちの想像の範囲外である。こちらも直前まで部外者に知られないようにということだけで手一杯であり、例年の倍以上の外部からのお客さんのことなど考えていなかった。

 しかしこれで、会場全体が混乱してライブが中止になるという事態には発展しなかった。西川先生率いる他学年の教員たちが、急きょ入場整理を開始し始めたのだ。ここまで盛り上がったライブをここで中止にするほうが危険と判断したのか、それとも生徒のやりたいようにさせてやるという方針に賛同してくれたのかは知らないが、これは私たちにとって幸運だった。おかげで私たちは自分で決めた持ち場を離れることなく、ほんのわずかな隙間を残して人で埋めつくされた体育館内を見下ろすことができた。

「さあ想定以上の人たちが集まったこのライブ! そろそろここで心温まる一曲をお届けしましょう! 松田理穂プレゼンツ! アンジェラ・アキの『手紙~拝啓 十五の君へ~』!」

 NHKの『みんなのうた』にも起用されるほど有名なメッセージソングのタイトルが出て
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