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第2章 異世界攻略編

第23話 ま、また女の子ですか……?

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「冒険に?」
「うむ、見ての通り、冒険となればまるで仕事にも手が付かぬ状態。ならば、出張という名目で冒険に連れて行かせた方が寧ろ彼女の為になると思ってな」

 出張なぁ。確かに言葉だけなら理解出来る。

「だけど、実際どうするんだ。クレアは鍛冶師なんだよな」
「《荷物持ちポーター》として連れていけば良い。また、簡易的な武器の補修を迷宮内で受けられるようになる」

 そうか。完全なサポート役を一人パーティーに加えるのか。
 回復薬ポーションなんかも纏めて持ってくれていれば、非常時にも迅速に対応出来るかもしれないな。

「悪くない話だ」
「主っ!?」

 ルナが素っ頓狂な声を上げる。

「ま、また女の子ですか……? 主の身体にはデカい釣り針か何かがあるのですか?」
「ふはは、俺はモテるからな、仕方ないんだ……と言いたいところだが今回に限っては違うだろ」

 クレアが女の子だったのも偶然、ジンエイに話をもちかけられたのも、それが俺だったのも単なる偶然だ。

 俺が意図的に攻略落としに行った訳じゃない。無論、好感度を上げて鍛冶系スキルを手に入れられるかもしれないのだが。それでも俺が狙って行った訳では無いと断言しておきたい。

「女性四人に囲まれるパーティーは楽しいですか?」
「当たり前だろ」
「皮肉で言ったのですが」

 図らずもハーレム要員が揃いつつある。
 順調だァ……これでスキルを大量ゲットだな。

「引き受けた。代金は特に必要ないな」
「うむ。寧ろこちらがお願いする身じゃからな」

 クレアがぱぁぁっと目を輝かせた。
 そして、俺へとぎゅっと抱きつく。

「わぁーい、冒険冒険っ!」
「う、うぐ……苦しい、助けて」

 この活力、さては体力オバケだな?

「ご主人様、よろしくお願いしますっ!」
「おいおい……その呼び方は」

 なんで奴隷みたいな呼び方をする!?
 それだと約一名が黙っちゃいないと思うのですが!?

「クレア、さん? "私の"主を離してください」
「え~っ、でもご主人様は嬉しそうですよっ!」

 むぎゅぅぅ……と豊満な胸を押し付けるクレア。
 腕と胸の幸せな弾力に挟まれ窒息しそうになる。

 その刹那、ルナの殺意が更に勢いを増した!

「はは、ははは……主。この女は危険です。特に一部女性の敵になり得る存在、やはり排除しなくては」
「おいおい……頼むから仲良くしてくれ」

 ハーレム要員がギスギスし合うなんてどこの腐った世界線だ。俺一人じゃ御しきれないぞ……っ!

「くはは、大変そうじゃの」
「な──ッ!?」

 待てよ……俺は今大変な事実に気付いてしまった。
 ジンエイの言った、『こちらがお願いする身』って意味。あれは本当は、クレアを押し付けるって事だったのか……!?

 バイトで人となりは把握しているはず。
 本当に優秀な人材なら、手放したりしないはずだ。

 面倒な一番弟子の世話を俺に一任した。
 爺さん、図りやがったなァァァッ!!

「くはは、では頑張っての」
「頑張りましょ~う、ご主人様っ!」
「この乳牛風情が……」

 あーダメだ、俺の異世界生活、終わったかもしれねぇ!

 □■□

 両手に花という言葉があるが、あれはいつから地獄の板挟みを表す言葉になったのだろうか。本来であれば、ふわふわの弾力に包まれてQOLも爆増しそうなところだが、残念ながら今の俺が抱く感触は、『痛い』。それに尽きた。

 両腕が引き千切られんばかりに引っ張られ、真っ二つに裂かれそうになるのを寸前で堪えている状態が永遠に続く。これ以上ない拷問に俺は殆ど涙目であった。

 顔を歪ませ、全力を尽くすルナ。
 多分無意識で、にこにこ笑顔のクレア。

 この感情のギャップも更に状況を不安定化させる。
 加えて周囲からの視線、特に男性から向けられるそれは、嫉妬とかいう生温いものではなく、憎悪とか殺意とか、倫理観に触れるギリギリの感情を持たれているに違いない。

 こんな状態で迷宮に挑む暴挙。
 俺は命が幾つあったら生きて帰って来れるんだ?

「レイくん、準備できた……ってあれ?」

 迷宮の入り口で、俺を見つけたシャルロットの声が徐々に弱弱しくなる。この惨状、そして涙目の俺を見て困惑や同情が入り混じり、微妙な顔をする。

「えっと……その子は?」
「暫く預かる事になった、鍛冶師のクレアだよ」
「へ、へぇ」
「えっへへへへ~♪」

 燦燦と降る太陽の光の如き笑顔に、流石のシャルロットもたじろぐ始末。誰とでも仲良くなれるのが特技ですと言いそうなシャルロットを黙らせる逸材、それがクレアである。

「お~大変そうだ」

 抑揚なく語るのは、クールな魔術師ノエル。こんな状況にも関わらず表情一つ崩さないとは、流石ノエル。やはり頼れるのはノエルしかいない!

「おねーさんもまぜて」

 むぎゅっと、両腕がホールドされている中、ノエルが前方から抱きしめてくる。ああそうだ、忘れていた。ノエルはこういうやつだった。

 状況をもっと面白くしたい、その為の犠牲は厭わないという天才的演出家。ルナとノエルは「混ぜるな危険」だと認識したばかりじゃないか!!

「あ、あぁ!?」
「皆仲良しですねっ~♪」
「ん。そだねー」

「レイくん、ナニコレ」
「俺が聞きてぇ」

 俺のハーレム道は、何故か違った路線を走りつつあった。



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