帝国妖異対策局

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第3話 カラクリ武者

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 夜の帝都を跋扈する闇の組織『花街』。彼らは妖異を使役した違法な風俗を営んでいるだけではなく、人間を半妖に変化させてしまう恐ろしい魔薬の製造・販売を行っていることで知られています。

 帝国は『花街』を要注意妖異監視団体として指定し、常にその動向について探っていますが、未だにその全容を掴むことはできません。噂では華族や大物政治家たちが顧客となっており、捜査が阻まれているとも言われています。

 本日未明、新十九区にある歌舞伎街警察より、図体の大きな鎧武者が暴れているとの連絡が帝国妖異対策局に入りました。銃撃が効かず警察力では対応しきれないとの判断と、背中に指しているのぼり旗に『只今サービス期間中!花街』と書かれていることから、対策局に出動要請が入ってきたようです。

「わたしが行ってきますん!」

 元気よく飛び出していったおかっぱ頭の娘は、帝国妖異対策局の腕力要員『不破寺真九郎』。左右の長さが微妙に違っている角を持ったデカチチ鬼娘です。とにかくデカイです。背中にデカイ刀をしょっています。

 それではこれより、対策局の前局長にして現在はYouituberとして動画投稿で稼いでいるわたくし『モグラ大使』がドローンを使って現場の様子を生中継でお送りしたいと思います! チャンネル登録よろしくです!



~ 歌舞伎街 ~

 只今、現場に到着しました。八方から警察官がさすまたを使って抑え込もうと奮闘していますが、鎧武者は一向に気にする様子もなくゆっくり移動を続けています。

「ホンジツ、ハナビラダイカイテン、サービスキカンチュー、ネコマタムスメ、スライムムスメ、ミンナマッテルヨー」

 鎧武者はそのゴツイ容姿からは想像できない若い女性の甲高い声で、何度も意味不明な言葉を繰り返しています! (うーん、ハナビラダイカイテンとかYouitubeの規約に大丈夫か? 後で音声消しとくか)

 不破寺真九郎は警察に何やら説明を受けています。どうやら、最初に鎧武者を発見した警察官がこれを組み伏せようとして逆に負傷しているようです。移動を阻止しようとしたパトカーを押しのけたため、危険と判断した別の警察官が発砲しましたが、鎧にはじかれて跳弾。以後は、対策局が到着するまでサスマタでの抑え込みに切り替えたようです。

「確かにヤツからは妖異の臭いがプンプンしますですん」

 おっと、ここで出ました不破寺真九郎のスキル〖妖異判定〗! 対象が妖異であるかどうかを漂う妖気から判断するとされています。わたしも局長時代、何度も彼女が〖妖異判定〗するところを目撃していますが、「正直、好き嫌いで判断してるだけじゃね?」と聞いたら「そうですよん」と真顔で返答していました。なんちゃってスキルです。

「後はお任せくださいですん!」
 とサスマタを持った警察官たちを下がらせ、不破寺真九郎が鎧武者の前に立ちはだかります。

「ホンジツ、ハナビラダイカイテン、サービスキカンチュー、エフカップラミア、エスカップエルフ、ミンナマッテルヨー」
「大人しくわたしにぶっ壊されるですん!」

 ドンッ! 
 という大きな音と共に不破寺真九郎が鎧武者にがっぷりと組みつきます。 

 おっと! ここで鎧武者の進行が止まりました。流石は鬼族、半端ないパワーです。しかし、お互い様子を見ているのか、それとも力が拮抗しているのか、両者共そのまま動きません。

 ギギッ……ギッ……ガガッ……

 鎧武者の身体から奇妙な異音が響いてきました。妖異の身体に何か不具合でも起こっているのでしょうか。鎧武者が苦痛で声を上げているかのようにも聞こえます。

「間違いない! お前は妖異ですん!」
「ホンジツ、ハナビラダイカイテン、サービスキカンチュー」

 不破寺真九郎が組み付きを解いてパッと離れました。いつの間にやら背中にあった刀が抜かれて、彼女の手に握られていました。凄く速いです。気になる方は動画の再生を一時停止してご確認ください。ついでに動画の高評価もお願いします。

「ぬぉりゃぁぁ!」

 気合と共に不破寺真九郎が鎧武者に正面から切りかかりました。鎧がぱっくりと割れてその下が露わになりました! (大丈夫かこれ、妖異の中身なんて碌なもんじゃない。後で編集入れないと広告が付かない……ブツブツ)

 おっと! 大丈夫でした。中身は臓物ではなく歯車のようです。木製の歯車が無数に動いている様子が確認できました。それにしても、鎧武者の分厚い鎧を両断してしまうとは、不破寺のあのデッカイ刀、確か名前があったはずですが……なんて言ったっけ……えっと……

「岩切丸ですん!」

 そ、そう! 岩切丸! 岩切丸の切れ味の凄まじさを、今、わたしたちは目の当たりにしました。

 ギギッ……ギギッ……
「……ハナビラダ……イカイテン……」

 しかし! このお腹を割かれたカラクリ武者、先ほどから小さな歯車がいくつもはじけ飛んでいるにも関わらず、一向に歩みを止めようとしません。まさに仕事の鬼! 鬼のカラクリ武者です! 

「そいぃぃぃ!」

 不破寺真九郎の回転切りがカラクリ武者の胴体に入りました! 見事に上下真っ二つに分かれ、巨体が崩れ落ちていきます。胴体からは次々と歯車が転がり落ちています。何やら黒い液体のようなものも一緒に流れ出てきました。

「カイテン…アナタノオコシ……オマチシテ……」

 シュンッ!

「みんな! ここから離れるですん!」

 ボウゥゥゥ!

 突然、カラクリ武者が炎上しました! まさに言葉通り炎に包まれています! これは……万一の際に証拠が残らないよう、自爆装置のようなものが花街によって仕掛けられていたのでしょう。
 
 人間の欲望が渦巻くこの歌舞伎街で、今、妖異の炎が燃えています。この炎はわたしたちの欲望そのものを表しているのかもしれません。

「ちょっと何を言ってるのかわからないですん」
「うるせー、いい感じに締められれば良いんだよ!」

 し、失礼しました。これにて、帝国妖異対策局の活躍により、本日も妖異の魔の手から帝都を守ることができました。

 ありがとう不破寺真九郎! ありがとう帝国妖異対策局! それでは本日はこの辺で! ぜひ高評価ボタンと応援コメントをお願いします。チャンネル登録は画面右上のボタンから。


~ 帝国妖異対策局カフェ ~ 


「前局長! お仕事終わったですし、これから深深に行きましょうですん!」
「俺は今から編集作業で忙しいんだよ!」
「えーっ! 撮影に協力したら、新作ゲーム買ってくれるって約束でしたよねん!」
「ちっ、覚えていたか……」



~ 本日のレポート ~

〖不破寺真九郎の報告〗
 花街のものと思われる人型機械生命体っぽい妖異をやっつけましたん。倒した直後に自壊し焼失してしまったので、花街につながる手がかりは得られませんでしたん。

〖局長評価〗
 はぁ……まぁ、いつものことね。

〖前局長〗
 Youitubeの広告付かなかった……orz
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