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第一章 護衛艦フワデラ
第1話 護衛艦フワデラ
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「飛翔体10! 坂上大尉のボートに接近中!」
「全て撃ち落とせ、ボートには決して近づけさせるな」
「了! 目標、飛翔体。攻撃始め!」
艦上の白い円筒がキュィーンと音を立てて回転する。
20mmガトリング砲が、唸る音と共に火を噴くと、巨大なドラゴン一体が海へ落ちて行った。
CIWSはそのまま動きを止めることなく目標を変え、次々とドラゴンを血の海に沈めていく。
坂上大尉の乗ったボートからも、機銃掃射によってドラゴンの胴体に無数の弾丸をめり込ませていた。
帝国護衛艦フワデラの艦長である私は、艦橋からその様子を確認しようと頑張っていた。
つま先立ちで背伸びをしつつ、結果を見届けようとするのだが、今の120センチ前後の背丈では、どうにも窓の外を見ることができない。
仕方ないので、体が小さい私は、身長175cmの黒髪巨乳美人である平野副長の方を、ジィィィィっと見つめて目で訴えた。
平野副長が眉をひそめて嫌そうな顔をしたので、私はさらに親指を口に咥えてもぐもぐして訴えてみる。
「艦長、小っちゃいからお外が見えない……」
黒髪ツインテールの可愛さに折れたのであろう、平野副長はハァーッとため息をつきながらも私を抱き上げる。そのおかげで、ドラゴンが次々と撃墜されていく様子を見ることができた。
最後のドラゴンが海に落ちると、坂上大尉のボートはそのまま海岸へと向かって行った。
「ふむ。ドラゴンは全て撃ち落としたようだな。よくやった」
私は副長の大きな乳袋をポンポンと叩いて労った。
嘘である。
もみもみした。
「艦長、それセクハラですからね」
「しゅ、しゅみましぇん……」
副長が私のほっぺをキュッとつねる。
「はぁ……ふにふにで気持ちいいです。ずっと艦長のほっぺをふにふにしてていいですか?」
「ひゃ、ひゃめたまへ……」
副長が名残惜しそうに手を離して、私を指揮官の椅子に座らせる。明らかに幼女の背丈では足りず、椅子の上で立たないと外の様子を見ることができない。
「椅子にクッションを重ねましょうか」
「船が揺れたときにふっ飛んでしまいそうだな」
「椅子の高さを限界まで上げても、まだ低そうですね……」
「そりゃ設計士も、ここに幼女が座るなんて想定してなかったろうからな」
そう。
帝国護衛艦フワデラの艦長である私、高津大佐は幼女だ。
幼女なのだ。
「ときに平野くん?」
「はい。なんでしょう艦長」
「幼女である私が、君のおっぱいを揉んだとしても、これはセクハラにはならないのではないだろうか? だって幼女だし」
「そうでしょうか。そうかもしれません。帝国に戻った際に奥様に確認してみます」
「ごめんなさい」
私は指揮官椅子の上で幼女土下座した。
それにしても……
どうしてこんなことになった。
~ 数時間前 ~
ミサイル護衛艦フワデラは、帝国防衛の要となるべく建造された。最新鋭のイージスシステムを搭載しているマヤ型駆逐艦だ。現在、帝国軍の機密貨物を、陸軍預かりの帝国水陸機動隊と共に、幌筵基地に移送するための準備を進めている。
艦名の由来は、名峰として知られている不破寺山。フワデラでは年に一度、不破寺神社から神職を招いて祭祀を執り行っている。
今日のこの日、神棚が祭られている艦内食堂にて祭祀が執り行われていた。今回は神主が腰痛で動けなかったため、その娘が神職を務めている。
長い黒髪を後ろに束ねた美しい少女の額には、二本の小さな角が生えていた。赤い瞳の鬼人族だ。
不破寺神社では、帝国を守護する鬼の一族が代々神職を務めているのだが、彼女はその鬼の家系の一人である。
ちなみに平野副長を超える巨乳の持ち主だ。
「それでは皆様、お祓い致しますん。頭をお下げくださいですん」
すべての出席者が頭を下げると、彼女は大幣《おおぬさ》を左右に振った。
ふわっと心地よい風が頭上を抜けると、私は国防に全力で取り組む気持ちを新たにした。
その瞬間――
ドンッ!
大きな異音と共に艦に振動が走る。
相当大きな物体が艦を直撃したことは、艦の全員が理解したはずだ。
艦内に警報が響く。
すぐに私は艦橋に状況を確認した。
「何があった?」
「と、トラックです! 」
「トラックだと!?」
「大型トラックが突然空中に現れて艦首に被弾……じゃなくて衝突!」
「お前は何を言ってるんだ!?」
「と、とにかく艦橋にお戻りください!」
ふと目の前で呆然としている神職と目が合った。
「とりあえずここに居てください。ここは安全です」
神職がこくりと頷いたのを確認すると、私は急いで艦橋へ向かった。
「何があったんだ!」
艦橋に入った私は、平野副長に状況について問い質《ただ》す。
平野副長の表情には困惑が浮かんでいた。
「か、艦長……あ、あれを……」
平野副長が指さす方向に目を向けると、そこにはトンデモない風景が広がっていた。
護衛艦フワデラの艦首に巨大な……
10トントラックが突き刺さっていた。
「何だあれは!?」
「トラックです!」
「どうしてトラックがこんなところに!? 空から降ってきたとでも言うのか!?」
「はい。空中から突っ込んできました」
意味がわからない。
だがその意味を理解するための時間を、トラックは与えてくれなかった。突然トラックから奇妙な音が響き始めると、徐々に周囲の空間が波打ち始めたのだ。
「なっ!?」
空間の波は一気に広がって、目に映る全てのものが揺らめき始める。さらにトラックから発せられたまばゆい光が、我々の視界を完全に奪ってしまった。
「転生容量オーバー。ターゲットの数が多すぎます。ターゲットのサイズが大き過ぎます。転移モードに切り替えて再実行を試みます」
頭の中に合成ボイスのずんだもんっぽいアナウンスが流れてくる。
「3……2……1……」
私の全身を風が通り抜けていくような奇妙な感覚。
「ゼロ」
アナウンスの終了と共に光が消失。再び周囲が見えるようになった私の目の前には、見知らぬ空と海、そして見慣れぬ陸《おか》が広がっていた。
「艦長! 衛星とのリンク断絶! 艦の現在地不明です!」
「そうだろうな……」
私はここが異世界であることを確信していた。
なぜなら――
我々の世界に月は二つもないのだから……。
~ 幼女化現象 ~
護衛艦フワデラが異世界に飛ばされて二日後。
見知らぬ海を彷徨っていた我々だったが、幸運なことに水平線の先に陸の稜線を発見することができた。
私はただちに帝国水陸機動隊を率いて上陸し、内陸部の調査を行うことにした。
「何も艦長が自ら上陸なされなくても……」
そう言って不安そうな表情で私を見上げる平野副長の肩を、ポンポンと叩き、心配する必要のないことを伝える。
「見知らぬ世界の見知らぬ陸《おか》に、部下だけに行かせるというのはどうもな。まぁ、これは私の性分だ」
「それでも……」
私はぐっと腕を曲げて、大きく盛り上がった力こぶを平野副長に見せつけた。
自信たっぷりの私の表情を見上げていた平野副長は、これ以上は何を言っても無駄だと悟ったのだろう。ひとつ深いため息をついてから、私の上陸を認めてくれた。
「何事もないことが確認できれば、次からは部下に任せるさ。私が戻るまで艦のことはお前に任せる」
そうして私は、屈強な帝国水陸機動隊48名と共に陸に上陸した。
そして――
帝国護衛艦フワデラは、艦長および陸戦に秀でた屈強な48名を失うことになる。
「全て撃ち落とせ、ボートには決して近づけさせるな」
「了! 目標、飛翔体。攻撃始め!」
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20mmガトリング砲が、唸る音と共に火を噴くと、巨大なドラゴン一体が海へ落ちて行った。
CIWSはそのまま動きを止めることなく目標を変え、次々とドラゴンを血の海に沈めていく。
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つま先立ちで背伸びをしつつ、結果を見届けようとするのだが、今の120センチ前後の背丈では、どうにも窓の外を見ることができない。
仕方ないので、体が小さい私は、身長175cmの黒髪巨乳美人である平野副長の方を、ジィィィィっと見つめて目で訴えた。
平野副長が眉をひそめて嫌そうな顔をしたので、私はさらに親指を口に咥えてもぐもぐして訴えてみる。
「艦長、小っちゃいからお外が見えない……」
黒髪ツインテールの可愛さに折れたのであろう、平野副長はハァーッとため息をつきながらも私を抱き上げる。そのおかげで、ドラゴンが次々と撃墜されていく様子を見ることができた。
最後のドラゴンが海に落ちると、坂上大尉のボートはそのまま海岸へと向かって行った。
「ふむ。ドラゴンは全て撃ち落としたようだな。よくやった」
私は副長の大きな乳袋をポンポンと叩いて労った。
嘘である。
もみもみした。
「艦長、それセクハラですからね」
「しゅ、しゅみましぇん……」
副長が私のほっぺをキュッとつねる。
「はぁ……ふにふにで気持ちいいです。ずっと艦長のほっぺをふにふにしてていいですか?」
「ひゃ、ひゃめたまへ……」
副長が名残惜しそうに手を離して、私を指揮官の椅子に座らせる。明らかに幼女の背丈では足りず、椅子の上で立たないと外の様子を見ることができない。
「椅子にクッションを重ねましょうか」
「船が揺れたときにふっ飛んでしまいそうだな」
「椅子の高さを限界まで上げても、まだ低そうですね……」
「そりゃ設計士も、ここに幼女が座るなんて想定してなかったろうからな」
そう。
帝国護衛艦フワデラの艦長である私、高津大佐は幼女だ。
幼女なのだ。
「ときに平野くん?」
「はい。なんでしょう艦長」
「幼女である私が、君のおっぱいを揉んだとしても、これはセクハラにはならないのではないだろうか? だって幼女だし」
「そうでしょうか。そうかもしれません。帝国に戻った際に奥様に確認してみます」
「ごめんなさい」
私は指揮官椅子の上で幼女土下座した。
それにしても……
どうしてこんなことになった。
~ 数時間前 ~
ミサイル護衛艦フワデラは、帝国防衛の要となるべく建造された。最新鋭のイージスシステムを搭載しているマヤ型駆逐艦だ。現在、帝国軍の機密貨物を、陸軍預かりの帝国水陸機動隊と共に、幌筵基地に移送するための準備を進めている。
艦名の由来は、名峰として知られている不破寺山。フワデラでは年に一度、不破寺神社から神職を招いて祭祀を執り行っている。
今日のこの日、神棚が祭られている艦内食堂にて祭祀が執り行われていた。今回は神主が腰痛で動けなかったため、その娘が神職を務めている。
長い黒髪を後ろに束ねた美しい少女の額には、二本の小さな角が生えていた。赤い瞳の鬼人族だ。
不破寺神社では、帝国を守護する鬼の一族が代々神職を務めているのだが、彼女はその鬼の家系の一人である。
ちなみに平野副長を超える巨乳の持ち主だ。
「それでは皆様、お祓い致しますん。頭をお下げくださいですん」
すべての出席者が頭を下げると、彼女は大幣《おおぬさ》を左右に振った。
ふわっと心地よい風が頭上を抜けると、私は国防に全力で取り組む気持ちを新たにした。
その瞬間――
ドンッ!
大きな異音と共に艦に振動が走る。
相当大きな物体が艦を直撃したことは、艦の全員が理解したはずだ。
艦内に警報が響く。
すぐに私は艦橋に状況を確認した。
「何があった?」
「と、トラックです! 」
「トラックだと!?」
「大型トラックが突然空中に現れて艦首に被弾……じゃなくて衝突!」
「お前は何を言ってるんだ!?」
「と、とにかく艦橋にお戻りください!」
ふと目の前で呆然としている神職と目が合った。
「とりあえずここに居てください。ここは安全です」
神職がこくりと頷いたのを確認すると、私は急いで艦橋へ向かった。
「何があったんだ!」
艦橋に入った私は、平野副長に状況について問い質《ただ》す。
平野副長の表情には困惑が浮かんでいた。
「か、艦長……あ、あれを……」
平野副長が指さす方向に目を向けると、そこにはトンデモない風景が広がっていた。
護衛艦フワデラの艦首に巨大な……
10トントラックが突き刺さっていた。
「何だあれは!?」
「トラックです!」
「どうしてトラックがこんなところに!? 空から降ってきたとでも言うのか!?」
「はい。空中から突っ込んできました」
意味がわからない。
だがその意味を理解するための時間を、トラックは与えてくれなかった。突然トラックから奇妙な音が響き始めると、徐々に周囲の空間が波打ち始めたのだ。
「なっ!?」
空間の波は一気に広がって、目に映る全てのものが揺らめき始める。さらにトラックから発せられたまばゆい光が、我々の視界を完全に奪ってしまった。
「転生容量オーバー。ターゲットの数が多すぎます。ターゲットのサイズが大き過ぎます。転移モードに切り替えて再実行を試みます」
頭の中に合成ボイスのずんだもんっぽいアナウンスが流れてくる。
「3……2……1……」
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「ゼロ」
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「そうだろうな……」
私はここが異世界であることを確信していた。
なぜなら――
我々の世界に月は二つもないのだから……。
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そう言って不安そうな表情で私を見上げる平野副長の肩を、ポンポンと叩き、心配する必要のないことを伝える。
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「それでも……」
私はぐっと腕を曲げて、大きく盛り上がった力こぶを平野副長に見せつけた。
自信たっぷりの私の表情を見上げていた平野副長は、これ以上は何を言っても無駄だと悟ったのだろう。ひとつ深いため息をついてから、私の上陸を認めてくれた。
「何事もないことが確認できれば、次からは部下に任せるさ。私が戻るまで艦のことはお前に任せる」
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