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第一章 護衛艦フワデラ
第14話 フワーデの図鑑
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ヴィルミアーシェさんによると魔鉱石は非常に貴重で金よりも高値で取引されているということだった。
テーブルに置かれている魔鉱石は幼女の頭ほどのサイズがある。村の宝としてずっと大切に保管されてきたものらしい。
「村を救っていただいたお礼です。どうぞお受け取りください」
ヴィルミアーシェさんたちの好意を受け取った我々は、早速この魔鉱石でフワーデのスキル【魔力転換炉】を使ってみることにした。
「魔力で転換するのは軽油2号っていうのでいいんだよね?」
「ああ、頼む」
フワーデのスキル【魔力転換炉】は、魔力を消費することで燃料や電力を得ることができるという非常に便利なものだ。
「それにしても、魔石を投入する転換炉が電子レンジというのは何とかならんのか?」
「もうこのレンジで温めたものを食べる気になりませんね」
私と平野副長は、食堂に据え付けられている電子レンジの中でくるくる回転している魔鉱石を眺めながらぼやく。
「ならないよー。それに食べ物だって、レンジに入れるとわたしへのお供えになるから大丈夫だよ!」
フワーデが満面の笑顔で答える。
「まったく大丈夫じゃないな」
そう言っている間にレンジ皿に乗せられた魔鉱石がみるみると小さくなっていく。
チーン!
魔鉱石が完全に消滅したタイミングでレンジ音が鳴った。
「転換終わったよー!」
その後すぐに黒縁補給長から燃料タンクが満杯になったとの報告が入る。
「おぉ! これで燃料補給についてはどうにかなりそうだな」
「あの魔鉱石にはたくさん魔力が込められていたから、あと三回くらい満タンにできるよー」
「マジか!」
「マジダヨ!」
魔鉱石を安定的に確保することができれば胃痛の原因をひとつ取り除くことができそうだ。後でヴィルミアーシェさんに魔鉱石の入手について相談してみることにしよう。
「そういえば電力にも転換できるとか言ってたよな」
「うん。発電機を通して艦内に電気を送れるよ。あとねあとね、艦のレベルが上がれば他にも色々転換できるようになるかも!」
「他にも色々って、具体的にはどんなものに転換できるんだ?」
「うーん。レベルが上がってみないとハッキリはわからないけど……弾薬とか鋼材とか、乳酸菌飲料とか?」
「マジか!」
「マジダヨ!」
弾薬まで転換できるとは! 私は思わずガッツポーズを取った。
「ところで艦のレベルってのはどうすれば上げることができるんだ?」
「んーっとね……ちょっと待って、聞いてみる……」
そう言うとフワーデは顎に手を当てて目を閉じる。時折、頭を上下に動かしたり、まぶたがピクピクしたり、いちいち仕草がカワイイ。
「えっとね。基本的には戦闘で敵を倒すことで経験値を上げていく感じ?」
「ドラゴンなら倒したことがあるが?」
「そうだよ! それで艦のレベルが上がったから、ワタシが出現できるようになったんだよ! あと、アレはドラゴンじゃなくてワイバーンだからね?」
「そうなのか? でもどうしてそんなことが分かるんだ?」
「フワーデの図鑑に登録されてるよ? それを見ただけ」
そう言ってフワーデが私の額におでこをくっつけてくる。
「図鑑表示、魔物」
フワーデがつぶやくと、私の視界にカードがずらっと並ぶ。その中にワイバーンがのカードがあった。
~ ワイバーン ~
見た目はドラゴン、頭脳と力はドラゴンの子供。といっても生態系では強者の部類に属しているので舐めてかかてはいけません。また群れることが多いので、一匹でも見かけたら近くに仲間がいると考えた方がいいよ。長く生きている個体は人間の言葉を話すこともあったりするので、命乞いとか交渉とか可能かも?
「なるほど。竜子はワイバーンだったのか。平野、竜子はドラゴンじゃなくてワイバーンという種族のようだぞ」
「そうですか」
平野が興味なさげに答える。
「どうした? 興味ないのか? 竜子がドラゴンじゃなくて残念だったとか?」
「竜子は竜子ですから」
平野らしい回答だ。適当なことを言ってるだけのはずなのに、なんかカッコイイ感じになっているのがちょっと腹立たしい。
私が図鑑の閲覧を終えようとしたとき、ふと視界の隅に気になるアイコンが表示されていることに気が付いた。
「んっ? この表示は……乗組員一覧?」
アイコンに表示されている文字を口にすると視界のカードが入れ替わる。カードには乗組員たちが描かれていた。
「私や平野のカードもあるな」
~ 高津裕司(たかつゆうじ) ~
護衛艦フワデラの艦長。妻子持ち。むっつり。現在はむっつり幼女。元鬼曹長の奥さんの目が届かない異世界に来たことをこれ幸いと、セクハラリミッターを解除している。
保有スキル【幼女の願い】
涙目になって可愛くお願いするとたいていの紳士が聞いてくれる。
~ 平野幸奈(ひらのゆきな)~
護衛艦フワデラの副長。175cmの黒髪巨乳美人。離婚経験あり。現在独身。高津とは家族ぐるみの付き合い。私生活では高津妻の妹分。帝国へ帰還後、艦長のセクハラ行為を高津妻に報告すべくログを保存している。
保有スキル【見下し好感度UP】
冷たい感じで見下した紳士の好感度を上げる。使い過ぎ注意。
「平野ぉぉぉぉ!」
「どうかされましたか?」
図鑑を見ていない平野は私の絶叫の意味を理解できない。
それを察したフワーデが、私から離れて平野の額におでこをくっつける。
「ちょっ! 待て! 艦長以外は閲覧禁止に!」
私の制止は間に合わなかった。
「なるほど……。フワーデの図鑑を見れば、敵だけでなく私たちの情報を確認することもできるのですね」
図鑑の閲覧を終えた平野は無表情に私を見下ろした。
冷たい視線の見下ろしに、私は思わず胸がトゥンクと鼓動するのを感じる。
これが【見下し好感度UP】の効果か……。
「艦長、この情報は艦長とわたし以外は閲覧できないようにすべきかと思いますが」
「そ、そうだな。フワーデ、私たち以外にこの情報を見せないようにしてくれ」
「わかった!」
それにしても図鑑が使えるのはかなり便利だな。敵の情報はもちろんだが、乗組員のスキルについて詳細が分かるというのはありがたい。
「乗組員のスキルについては、直接本人から話を聞いておくか」
この日以降、護衛艦フワデラ乗組員の個別面談がスタートした。
テーブルに置かれている魔鉱石は幼女の頭ほどのサイズがある。村の宝としてずっと大切に保管されてきたものらしい。
「村を救っていただいたお礼です。どうぞお受け取りください」
ヴィルミアーシェさんたちの好意を受け取った我々は、早速この魔鉱石でフワーデのスキル【魔力転換炉】を使ってみることにした。
「魔力で転換するのは軽油2号っていうのでいいんだよね?」
「ああ、頼む」
フワーデのスキル【魔力転換炉】は、魔力を消費することで燃料や電力を得ることができるという非常に便利なものだ。
「それにしても、魔石を投入する転換炉が電子レンジというのは何とかならんのか?」
「もうこのレンジで温めたものを食べる気になりませんね」
私と平野副長は、食堂に据え付けられている電子レンジの中でくるくる回転している魔鉱石を眺めながらぼやく。
「ならないよー。それに食べ物だって、レンジに入れるとわたしへのお供えになるから大丈夫だよ!」
フワーデが満面の笑顔で答える。
「まったく大丈夫じゃないな」
そう言っている間にレンジ皿に乗せられた魔鉱石がみるみると小さくなっていく。
チーン!
魔鉱石が完全に消滅したタイミングでレンジ音が鳴った。
「転換終わったよー!」
その後すぐに黒縁補給長から燃料タンクが満杯になったとの報告が入る。
「おぉ! これで燃料補給についてはどうにかなりそうだな」
「あの魔鉱石にはたくさん魔力が込められていたから、あと三回くらい満タンにできるよー」
「マジか!」
「マジダヨ!」
魔鉱石を安定的に確保することができれば胃痛の原因をひとつ取り除くことができそうだ。後でヴィルミアーシェさんに魔鉱石の入手について相談してみることにしよう。
「そういえば電力にも転換できるとか言ってたよな」
「うん。発電機を通して艦内に電気を送れるよ。あとねあとね、艦のレベルが上がれば他にも色々転換できるようになるかも!」
「他にも色々って、具体的にはどんなものに転換できるんだ?」
「うーん。レベルが上がってみないとハッキリはわからないけど……弾薬とか鋼材とか、乳酸菌飲料とか?」
「マジか!」
「マジダヨ!」
弾薬まで転換できるとは! 私は思わずガッツポーズを取った。
「ところで艦のレベルってのはどうすれば上げることができるんだ?」
「んーっとね……ちょっと待って、聞いてみる……」
そう言うとフワーデは顎に手を当てて目を閉じる。時折、頭を上下に動かしたり、まぶたがピクピクしたり、いちいち仕草がカワイイ。
「えっとね。基本的には戦闘で敵を倒すことで経験値を上げていく感じ?」
「ドラゴンなら倒したことがあるが?」
「そうだよ! それで艦のレベルが上がったから、ワタシが出現できるようになったんだよ! あと、アレはドラゴンじゃなくてワイバーンだからね?」
「そうなのか? でもどうしてそんなことが分かるんだ?」
「フワーデの図鑑に登録されてるよ? それを見ただけ」
そう言ってフワーデが私の額におでこをくっつけてくる。
「図鑑表示、魔物」
フワーデがつぶやくと、私の視界にカードがずらっと並ぶ。その中にワイバーンがのカードがあった。
~ ワイバーン ~
見た目はドラゴン、頭脳と力はドラゴンの子供。といっても生態系では強者の部類に属しているので舐めてかかてはいけません。また群れることが多いので、一匹でも見かけたら近くに仲間がいると考えた方がいいよ。長く生きている個体は人間の言葉を話すこともあったりするので、命乞いとか交渉とか可能かも?
「なるほど。竜子はワイバーンだったのか。平野、竜子はドラゴンじゃなくてワイバーンという種族のようだぞ」
「そうですか」
平野が興味なさげに答える。
「どうした? 興味ないのか? 竜子がドラゴンじゃなくて残念だったとか?」
「竜子は竜子ですから」
平野らしい回答だ。適当なことを言ってるだけのはずなのに、なんかカッコイイ感じになっているのがちょっと腹立たしい。
私が図鑑の閲覧を終えようとしたとき、ふと視界の隅に気になるアイコンが表示されていることに気が付いた。
「んっ? この表示は……乗組員一覧?」
アイコンに表示されている文字を口にすると視界のカードが入れ替わる。カードには乗組員たちが描かれていた。
「私や平野のカードもあるな」
~ 高津裕司(たかつゆうじ) ~
護衛艦フワデラの艦長。妻子持ち。むっつり。現在はむっつり幼女。元鬼曹長の奥さんの目が届かない異世界に来たことをこれ幸いと、セクハラリミッターを解除している。
保有スキル【幼女の願い】
涙目になって可愛くお願いするとたいていの紳士が聞いてくれる。
~ 平野幸奈(ひらのゆきな)~
護衛艦フワデラの副長。175cmの黒髪巨乳美人。離婚経験あり。現在独身。高津とは家族ぐるみの付き合い。私生活では高津妻の妹分。帝国へ帰還後、艦長のセクハラ行為を高津妻に報告すべくログを保存している。
保有スキル【見下し好感度UP】
冷たい感じで見下した紳士の好感度を上げる。使い過ぎ注意。
「平野ぉぉぉぉ!」
「どうかされましたか?」
図鑑を見ていない平野は私の絶叫の意味を理解できない。
それを察したフワーデが、私から離れて平野の額におでこをくっつける。
「ちょっ! 待て! 艦長以外は閲覧禁止に!」
私の制止は間に合わなかった。
「なるほど……。フワーデの図鑑を見れば、敵だけでなく私たちの情報を確認することもできるのですね」
図鑑の閲覧を終えた平野は無表情に私を見下ろした。
冷たい視線の見下ろしに、私は思わず胸がトゥンクと鼓動するのを感じる。
これが【見下し好感度UP】の効果か……。
「艦長、この情報は艦長とわたし以外は閲覧できないようにすべきかと思いますが」
「そ、そうだな。フワーデ、私たち以外にこの情報を見せないようにしてくれ」
「わかった!」
それにしても図鑑が使えるのはかなり便利だな。敵の情報はもちろんだが、乗組員のスキルについて詳細が分かるというのはありがたい。
「乗組員のスキルについては、直接本人から話を聞いておくか」
この日以降、護衛艦フワデラ乗組員の個別面談がスタートした。
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