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第一章 護衛艦フワデラ
第34話 魔法使いの日誌
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私ことカラデアは元冒険者であり、現在は魔術士としてイザラス村で暮らしている。
魔術といっても魔鉱石の加工と使用済みの魔石に魔力の補充をすることくらいしかできないが、それでもこの田舎の村では魔法の使い手として重宝されている。
ここ数日、私が見聞きした奇跡的かつ摩訶不思議な出来事について、この日誌にて詳細を残しておこうと思う。
~ 聖樹485年 葉之月ラヴェンナの第1天 ~
我が家はマルラナ山の登山口に近い、村からは少し離れた場所にある。その庭に巨大な鉄の魔法鳥が大きな音を立てて降りてきた。
私が驚いて魔法鳥の下へ駆け寄ると、その横腹から五人の人影が飛び出してきた。そのうち二人は小さな幼子であった。また三人の大人のうち二人は白狼族だ。
「失礼、あなたはカラデアさんでよろしいですか!」
幼子のひとりが私の方に歩き寄って大声で私の名前を口にした。幼子が大声だった理由は、魔法鳥の羽らしき音が非常に大きかったからだ。
「あっ、あぁ、私がカラデアだが……これは一体……」
私が困惑していると幼子が大声で
「この村の冒険者のシエラさんの紹介でお伺いしました! こちらがその紹介状です!」
そう言って手渡された紹介状には幼馴染のシエラの字で、彼らが村に滞在するための便宜を図って欲しいと書かれていた。
私が紹介状の内容に目を通したのを見計らって、幼女が告げる。
「この村に数日滞在したいのですが、その間、この庭をお借りさせていただいてよろしいでしょうか? こちらどうぞ!」
私の返事を待つことなく、幼女は私に重量感のある袋を手渡した。袋の中には金貨が5枚も入っていた。たかだか数日、庭先を貸す程度のことでこれは大金過ぎる。
そのことを告げると幼女は、
「カラデアさんはとても優秀な魔法使いと伺っています! 我々は魔法についてはまったく何も知らないので、滞在中、魔法についてご教授いただければ幸いです! あっ私はタカツと言います! それではよろしくお願いします!」
「あ、あぁ……」
「ありがとうございます!」
幼子が私の手をギュッと握って上下に振ったとき、私は庭先を貸す契約がいつの間にか成立していたことに気付いた。
「よーし! 滞在許可が出たぞ! 荷物降ろせ!」
幼女が手を振ると、背後の人たちが魔法鳥の腹から荷物を下ろす。作業が終わると、幼女が魔法鳥に向って叫ぶ。
「フワーデ! ヘリを戻していいぞ! ドローンによる警戒開始、私たちの警護のだけでなく、村の周囲の警戒にも回してくれ!」
「わかったー!」
魔法鳥は女の子のような声を上げると、そのまま海のある方向へ飛び去って行った。私はその様子を呆然と見つめていた。
幼子は私に魔法について教えて欲しいと言っていたが、そもそも私は一介の魔術士であり魔法使いではない。まぁ魔術と魔法が混同されることはよくあることだ。
それよりも私からすれば――
鉄の魔法鳥と目の前に浮かんでいる鉄の精霊たちの方がよほど魔法だった。
~ イザラス村 ~
シエラが紹介状に書いていたことに従って、私は彼らをシエラの両親と引き合わせることにした。
村では魔法鳥をほとんどの村人が目撃していたらしく、シエラの家に着くころには私たちの後を多くの村人が付いて来ていた。
「あぁぁ! シエラ! シエラが魔法の箱に!」
シエラの母親に幼子が小さな箱の鏡を見せていた。そこに映し出されたシエラの姿を見て母親は絶望で顔を青ざめる。
まぁ気持ちはわかる。私も幼子から見せられたときは同じように驚いてしまった。
だがその後に幼子から説明を聞いて、実際に私の姿を映し出してもらった。原理こそわからないものの、「本人が鏡に閉じ込められているのではない」ということだけは理解できた。
「おばさん、それは魔法の水晶でシエラの姿を水晶が覚えているだけだ。シエラが鏡のに閉じ込められているわけじゃない」
「あら、そうなの? それじゃシエラは今……」
「ここに映ってるように、数日前はローエンの居酒屋で楽しく酔っぱらっていたということだよ」
「あらあら、そうなの!? まぁまぁあの娘ったら、お酒は控えなさいってあれほど注意してたのに! 元気そう、うふふ」
シエラの母親がホッと安心したことが回りに伝わったのか、様子を見に集まっていた村人たちの空気も柔らかくなる。
「あんたたち、魔法使いなのかい!? 凄いな! こんな魔法初めて見たよ!」
「こんな大魔法使い様がシエラの友人なのか! シエラも出世したもんだ!」
「あの白いおっきな鳥は魔法で呼び出したの?」
「魔法! 魔法で腰痛は治せないかい!?」
「とりあえず今日は宴会だ! 飲もう!」
その日はシエラの家で魔法使い一行の歓迎会が開かれることになった。
幼子の指示で、彼女に付き従っていた白狼族の二人が荷物から珍しいお酒と果汁の飲み物が提供された。
そのあまりの美味しさに集まった村人全員の目の色が変わった。
白狼族の男が王侯貴族でさえ手に入れることができないだろうと言っていたが、その言葉に納得しないものは誰一人としていなかった。
そして宴会は夜遅くまで続き、魔法使い一行の目的を聞いたのは翌日のことだった。
魔術といっても魔鉱石の加工と使用済みの魔石に魔力の補充をすることくらいしかできないが、それでもこの田舎の村では魔法の使い手として重宝されている。
ここ数日、私が見聞きした奇跡的かつ摩訶不思議な出来事について、この日誌にて詳細を残しておこうと思う。
~ 聖樹485年 葉之月ラヴェンナの第1天 ~
我が家はマルラナ山の登山口に近い、村からは少し離れた場所にある。その庭に巨大な鉄の魔法鳥が大きな音を立てて降りてきた。
私が驚いて魔法鳥の下へ駆け寄ると、その横腹から五人の人影が飛び出してきた。そのうち二人は小さな幼子であった。また三人の大人のうち二人は白狼族だ。
「失礼、あなたはカラデアさんでよろしいですか!」
幼子のひとりが私の方に歩き寄って大声で私の名前を口にした。幼子が大声だった理由は、魔法鳥の羽らしき音が非常に大きかったからだ。
「あっ、あぁ、私がカラデアだが……これは一体……」
私が困惑していると幼子が大声で
「この村の冒険者のシエラさんの紹介でお伺いしました! こちらがその紹介状です!」
そう言って手渡された紹介状には幼馴染のシエラの字で、彼らが村に滞在するための便宜を図って欲しいと書かれていた。
私が紹介状の内容に目を通したのを見計らって、幼女が告げる。
「この村に数日滞在したいのですが、その間、この庭をお借りさせていただいてよろしいでしょうか? こちらどうぞ!」
私の返事を待つことなく、幼女は私に重量感のある袋を手渡した。袋の中には金貨が5枚も入っていた。たかだか数日、庭先を貸す程度のことでこれは大金過ぎる。
そのことを告げると幼女は、
「カラデアさんはとても優秀な魔法使いと伺っています! 我々は魔法についてはまったく何も知らないので、滞在中、魔法についてご教授いただければ幸いです! あっ私はタカツと言います! それではよろしくお願いします!」
「あ、あぁ……」
「ありがとうございます!」
幼子が私の手をギュッと握って上下に振ったとき、私は庭先を貸す契約がいつの間にか成立していたことに気付いた。
「よーし! 滞在許可が出たぞ! 荷物降ろせ!」
幼女が手を振ると、背後の人たちが魔法鳥の腹から荷物を下ろす。作業が終わると、幼女が魔法鳥に向って叫ぶ。
「フワーデ! ヘリを戻していいぞ! ドローンによる警戒開始、私たちの警護のだけでなく、村の周囲の警戒にも回してくれ!」
「わかったー!」
魔法鳥は女の子のような声を上げると、そのまま海のある方向へ飛び去って行った。私はその様子を呆然と見つめていた。
幼子は私に魔法について教えて欲しいと言っていたが、そもそも私は一介の魔術士であり魔法使いではない。まぁ魔術と魔法が混同されることはよくあることだ。
それよりも私からすれば――
鉄の魔法鳥と目の前に浮かんでいる鉄の精霊たちの方がよほど魔法だった。
~ イザラス村 ~
シエラが紹介状に書いていたことに従って、私は彼らをシエラの両親と引き合わせることにした。
村では魔法鳥をほとんどの村人が目撃していたらしく、シエラの家に着くころには私たちの後を多くの村人が付いて来ていた。
「あぁぁ! シエラ! シエラが魔法の箱に!」
シエラの母親に幼子が小さな箱の鏡を見せていた。そこに映し出されたシエラの姿を見て母親は絶望で顔を青ざめる。
まぁ気持ちはわかる。私も幼子から見せられたときは同じように驚いてしまった。
だがその後に幼子から説明を聞いて、実際に私の姿を映し出してもらった。原理こそわからないものの、「本人が鏡に閉じ込められているのではない」ということだけは理解できた。
「おばさん、それは魔法の水晶でシエラの姿を水晶が覚えているだけだ。シエラが鏡のに閉じ込められているわけじゃない」
「あら、そうなの? それじゃシエラは今……」
「ここに映ってるように、数日前はローエンの居酒屋で楽しく酔っぱらっていたということだよ」
「あらあら、そうなの!? まぁまぁあの娘ったら、お酒は控えなさいってあれほど注意してたのに! 元気そう、うふふ」
シエラの母親がホッと安心したことが回りに伝わったのか、様子を見に集まっていた村人たちの空気も柔らかくなる。
「あんたたち、魔法使いなのかい!? 凄いな! こんな魔法初めて見たよ!」
「こんな大魔法使い様がシエラの友人なのか! シエラも出世したもんだ!」
「あの白いおっきな鳥は魔法で呼び出したの?」
「魔法! 魔法で腰痛は治せないかい!?」
「とりあえず今日は宴会だ! 飲もう!」
その日はシエラの家で魔法使い一行の歓迎会が開かれることになった。
幼子の指示で、彼女に付き従っていた白狼族の二人が荷物から珍しいお酒と果汁の飲み物が提供された。
そのあまりの美味しさに集まった村人全員の目の色が変わった。
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