ミサイル護衛艦が異世界転移!? しかも艦長が幼女になっちゃいましたけど?

帝国妖異対策局

文字の大きさ
35 / 214
第一章 護衛艦フワデラ

第34話 魔法使いの日誌

しおりを挟む
 私ことカラデアは元冒険者であり、現在は魔術士としてイザラス村で暮らしている。

 魔術といっても魔鉱石の加工と使用済みの魔石に魔力の補充をすることくらいしかできないが、それでもこの田舎の村では魔法の使い手として重宝されている。
  
 ここ数日、私が見聞きした奇跡的かつ摩訶不思議な出来事について、この日誌にて詳細を残しておこうと思う。

~  聖樹485年 葉之月ラヴェンナの第1天 ~

 我が家はマルラナ山の登山口に近い、村からは少し離れた場所にある。その庭に巨大な鉄の魔法鳥が大きな音を立てて降りてきた。

 私が驚いて魔法鳥の下へ駆け寄ると、その横腹から五人の人影が飛び出してきた。そのうち二人は小さな幼子であった。また三人の大人のうち二人は白狼族だ。

「失礼、あなたはカラデアさんでよろしいですか!」
 
 幼子のひとりが私の方に歩き寄って大声で私の名前を口にした。幼子が大声だった理由は、魔法鳥の羽らしき音が非常に大きかったからだ。

「あっ、あぁ、私がカラデアだが……これは一体……」

 私が困惑していると幼子が大声で

「この村の冒険者のシエラさんの紹介でお伺いしました! こちらがその紹介状です!」
 
 そう言って手渡された紹介状には幼馴染のシエラの字で、彼らが村に滞在するための便宜を図って欲しいと書かれていた。

 私が紹介状の内容に目を通したのを見計らって、幼女が告げる。

「この村に数日滞在したいのですが、その間、この庭をお借りさせていただいてよろしいでしょうか? こちらどうぞ!」

 私の返事を待つことなく、幼女は私に重量感のある袋を手渡した。袋の中には金貨が5枚も入っていた。たかだか数日、庭先を貸す程度のことでこれは大金過ぎる。
 
 そのことを告げると幼女は、

「カラデアさんはとても優秀な魔法使いと伺っています! 我々は魔法についてはまったく何も知らないので、滞在中、魔法についてご教授いただければ幸いです! あっ私はタカツと言います! それではよろしくお願いします!」

「あ、あぁ……」

「ありがとうございます!」

 幼子が私の手をギュッと握って上下に振ったとき、私は庭先を貸す契約がいつの間にか成立していたことに気付いた。

「よーし! 滞在許可が出たぞ! 荷物降ろせ!」

 幼女が手を振ると、背後の人たちが魔法鳥の腹から荷物を下ろす。作業が終わると、幼女が魔法鳥に向って叫ぶ。

「フワーデ! ヘリを戻していいぞ! ドローンによる警戒開始、私たちの警護のだけでなく、村の周囲の警戒にも回してくれ!」

「わかったー!」

 魔法鳥は女の子のような声を上げると、そのまま海のある方向へ飛び去って行った。私はその様子を呆然と見つめていた。

 幼子は私に魔法について教えて欲しいと言っていたが、そもそも私は一介の魔術士であり魔法使いではない。まぁ魔術と魔法が混同されることはよくあることだ。

 それよりも私からすれば――

 鉄の魔法鳥と目の前に浮かんでいる鉄の精霊たちの方がよほど魔法だった。



~ イザラス村 ~
 
  シエラが紹介状に書いていたことに従って、私は彼らをシエラの両親と引き合わせることにした。

 村では魔法鳥をほとんどの村人が目撃していたらしく、シエラの家に着くころには私たちの後を多くの村人が付いて来ていた。

「あぁぁ! シエラ! シエラが魔法の箱に!」

 シエラの母親に幼子が小さな箱の鏡を見せていた。そこに映し出されたシエラの姿を見て母親は絶望で顔を青ざめる。

 まぁ気持ちはわかる。私も幼子から見せられたときは同じように驚いてしまった。

 だがその後に幼子から説明を聞いて、実際に私の姿を映し出してもらった。原理こそわからないものの、「本人が鏡に閉じ込められているのではない」ということだけは理解できた。

「おばさん、それは魔法の水晶でシエラの姿を水晶が覚えているだけだ。シエラが鏡のに閉じ込められているわけじゃない」

「あら、そうなの? それじゃシエラは今……」

「ここに映ってるように、数日前はローエンの居酒屋で楽しく酔っぱらっていたということだよ」

「あらあら、そうなの!? まぁまぁあの娘ったら、お酒は控えなさいってあれほど注意してたのに! 元気そう、うふふ」

 シエラの母親がホッと安心したことが回りに伝わったのか、様子を見に集まっていた村人たちの空気も柔らかくなる。

「あんたたち、魔法使いなのかい!? 凄いな! こんな魔法初めて見たよ!」

「こんな大魔法使い様がシエラの友人なのか! シエラも出世したもんだ!」

「あの白いおっきな鳥は魔法で呼び出したの?」

「魔法! 魔法で腰痛は治せないかい!?」

「とりあえず今日は宴会だ! 飲もう!」

 その日はシエラの家で魔法使い一行の歓迎会が開かれることになった。

 幼子の指示で、彼女に付き従っていた白狼族の二人が荷物から珍しいお酒と果汁の飲み物が提供された。

 そのあまりの美味しさに集まった村人全員の目の色が変わった。

 白狼族の男が王侯貴族でさえ手に入れることができないだろうと言っていたが、その言葉に納得しないものは誰一人としていなかった。

 そして宴会は夜遅くまで続き、魔法使い一行の目的を聞いたのは翌日のことだった。

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。 現世で惨めなサラリーマンをしていた…… そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。 その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。 それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。 目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて…… 現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に…… 特殊な能力が当然のように存在するその世界で…… 自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。 俺は俺の出来ること…… 彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。 だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。 ※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※ ※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※

処理中です...