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第一章 護衛艦フワデラ
第36話 コボルト村の魔法使い
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古代神殿の化け物を幼女に変えたという魔法使いの話に私は飛びついた。私の反応に気を良くしたホドリスとミカエラは、彼らの知っていることをご機嫌で語り始める。
そして、私はさらに驚くべき情報を聞くことになった。
「その子どもは魔法の道具や食べ物を空中からポンポン出してきてなぁ」
「あぁ、あのとき振る舞ってもらったニポンシュという酒は大層旨かったよな!」
「俺は柔らかいパンに肉が挟まったモノノフバガというのが忘れられねぇ」
二人は目を閉じて、その時のことを思い出していた。
「ニポンシュ? モノノフバガ? それって日本酒か!?」
思わず私が叫ぶ。
「そうそう、ニホンシュ。嬢ちゃんの方が発音上手だな!」
ビンゴだった!
モノノフバガというのがよくわからないが、パンに肉を挟んだ食べ物といえばおそらくハンバーガーのことだろう。
ということは、その魔法使いの子供と言うのはおそらく帝国の人間だ! 私たち以外にもこの異世界に飛ばされた人間がいるということか!
思わぬ事態の成り行きに驚きながら、私は二人にもっと話をせがんだ。
「ねぇねぇ、どこどこ? その魔法使いはどこにいるの? ねぇねぇ教えてー!」
興奮するあまり、おねだり幼女モードがブーストしてしまい、私は二人のおっさんの膝をグイグイ押しながら詰め寄った。
「ここからずっーと南のコボルト村だ……」
「……ずーっと南だぞ」
そう答えた二人が声のトーンを落とし、急に表情を暗くする。
「コボルト村ってところにいるんだね! えっとその魔法使いの名前は何て言うの! 会ってみたい! コボルト村に行きたい!」
二人の表情がさらに暗くなった。
「その方のお名前はタヌァカと言う。会ってみたい……か……」
「もしコボルト村に行っても、おそらく会うことはできないだろう」
「どうして?」
二人は酒をぐびっと煽って一息ついてから答えた。
「もうコボルト村はないんだよ……嬢ちゃん」
「ないんだ、嬢ちゃん」
「えっ……」
「俺たちはコボルト村が焼け落ちるのをこの目で見たんだ……」
「えぇ!?」
二人の語るところでは――
古代神殿の探索を終えた二人は、そのままタヌァカと共にコボルト村まで付いていった。二人がコボルト村に住むことをタヌァカは快く受け入れてくれた。
二人はコボルト村での平和な暮らしを楽しんでいたが、その頃から、大陸各地で人と魔族との争いが勃発するようになる。そしてついに人魔大戦と呼ばれる嵐にコボルト村も巻き込まれてしまった。
ある日、コボルト村に【賢者の石】があることを嗅ぎつけた魔族軍が急襲してきた。村人たちは雄々しく応戦したが、数に押されて結果的に村は焼け落ちてしまう。
さらに村長であるタヌァカの妻が魔族軍に連れ去られてしまった。
「魔族軍は彼女を捕まえると一斉に引き上げていった。おそらくタヌァカ様の妻、目に傷持つ少女が賢者の石を持っていたんだろうと思う」
魔族軍の襲撃を生き延びた村人たちは、タヌァカの指示により近隣の村へ避難する。そしてタヌァカ自身は、攫われた妻を取り戻すために少数の仲間と共に魔族を追って行った。
その時、二人はイザラス村へ帰ることにしたらしい。
「噂ではドラン大平原に人類軍と魔族軍が決戦を前に睨み合っているらしい。その数、数十、数百万とも聞いている」
「この北方は戦火からは遠い。少なくとも今はな」
北方にはマルラナ山脈が横たわっている。これが大陸中央部との間で壁の役割を果たしていた。
古代神殿の化け物は人も魔族も関係なく襲ってくるため、魔族軍も易々とは進軍できないらしい。
「だが大陸の中央や南方じゃ、戦争の影響で人々が苦しんでいるって話を聞いてる。もうどっちが勝っても良いから、一刻も早くドラン大平原での決着を待ち望んでるってな」
話が一区切りついたらしく、二人はお酒をぐびぐびと飲み始める。ここぞとばかりに私は質問を挟んだ。
「それで、そのタヌァカ様は今ドランってとこにいるの?」
「それはわからねぇ。わからねぇが……」
「決戦に向けて、人も魔族もドランに集まっている。だからおそらくタヌァカ様もそこに向ってるんじゃねーかなって思っただけだよ」
「なるほど……」
だがこの時点で私はほぼ確信していた。タヌァカという人物は間違いなくドラン大平原の戦場にいたはずだ。なにせ、その証拠が私自身だから。
「ドラン大平原って大陸のどの辺?」
「んー、大陸の東にある広い平野だよ」
「東の海に面してる?」
「よく知ってるな嬢ちゃん! 東端は海だよ」
ビンゴ!
あとは幼女に変える魔法というのがタヌァカ固有のものか、それとも一般的なものかも知っておきたい。
「ちなみに、人や魔物を幼女に変える魔法っていうのは珍しいの?」
「珍しいどころか、古今東西、どの大陸でも、どのご先祖さまでも、あんな魔法は見たことも聞いたこともないぞ!」
「まさにタヌァカ様が大魔法使いだという証拠だろうな」
ドドビンゴ!
まず間違いないだろう。
私たちを幼女にしたのはタヌァカだ!
そして、私はさらに驚くべき情報を聞くことになった。
「その子どもは魔法の道具や食べ物を空中からポンポン出してきてなぁ」
「あぁ、あのとき振る舞ってもらったニポンシュという酒は大層旨かったよな!」
「俺は柔らかいパンに肉が挟まったモノノフバガというのが忘れられねぇ」
二人は目を閉じて、その時のことを思い出していた。
「ニポンシュ? モノノフバガ? それって日本酒か!?」
思わず私が叫ぶ。
「そうそう、ニホンシュ。嬢ちゃんの方が発音上手だな!」
ビンゴだった!
モノノフバガというのがよくわからないが、パンに肉を挟んだ食べ物といえばおそらくハンバーガーのことだろう。
ということは、その魔法使いの子供と言うのはおそらく帝国の人間だ! 私たち以外にもこの異世界に飛ばされた人間がいるということか!
思わぬ事態の成り行きに驚きながら、私は二人にもっと話をせがんだ。
「ねぇねぇ、どこどこ? その魔法使いはどこにいるの? ねぇねぇ教えてー!」
興奮するあまり、おねだり幼女モードがブーストしてしまい、私は二人のおっさんの膝をグイグイ押しながら詰め寄った。
「ここからずっーと南のコボルト村だ……」
「……ずーっと南だぞ」
そう答えた二人が声のトーンを落とし、急に表情を暗くする。
「コボルト村ってところにいるんだね! えっとその魔法使いの名前は何て言うの! 会ってみたい! コボルト村に行きたい!」
二人の表情がさらに暗くなった。
「その方のお名前はタヌァカと言う。会ってみたい……か……」
「もしコボルト村に行っても、おそらく会うことはできないだろう」
「どうして?」
二人は酒をぐびっと煽って一息ついてから答えた。
「もうコボルト村はないんだよ……嬢ちゃん」
「ないんだ、嬢ちゃん」
「えっ……」
「俺たちはコボルト村が焼け落ちるのをこの目で見たんだ……」
「えぇ!?」
二人の語るところでは――
古代神殿の探索を終えた二人は、そのままタヌァカと共にコボルト村まで付いていった。二人がコボルト村に住むことをタヌァカは快く受け入れてくれた。
二人はコボルト村での平和な暮らしを楽しんでいたが、その頃から、大陸各地で人と魔族との争いが勃発するようになる。そしてついに人魔大戦と呼ばれる嵐にコボルト村も巻き込まれてしまった。
ある日、コボルト村に【賢者の石】があることを嗅ぎつけた魔族軍が急襲してきた。村人たちは雄々しく応戦したが、数に押されて結果的に村は焼け落ちてしまう。
さらに村長であるタヌァカの妻が魔族軍に連れ去られてしまった。
「魔族軍は彼女を捕まえると一斉に引き上げていった。おそらくタヌァカ様の妻、目に傷持つ少女が賢者の石を持っていたんだろうと思う」
魔族軍の襲撃を生き延びた村人たちは、タヌァカの指示により近隣の村へ避難する。そしてタヌァカ自身は、攫われた妻を取り戻すために少数の仲間と共に魔族を追って行った。
その時、二人はイザラス村へ帰ることにしたらしい。
「噂ではドラン大平原に人類軍と魔族軍が決戦を前に睨み合っているらしい。その数、数十、数百万とも聞いている」
「この北方は戦火からは遠い。少なくとも今はな」
北方にはマルラナ山脈が横たわっている。これが大陸中央部との間で壁の役割を果たしていた。
古代神殿の化け物は人も魔族も関係なく襲ってくるため、魔族軍も易々とは進軍できないらしい。
「だが大陸の中央や南方じゃ、戦争の影響で人々が苦しんでいるって話を聞いてる。もうどっちが勝っても良いから、一刻も早くドラン大平原での決着を待ち望んでるってな」
話が一区切りついたらしく、二人はお酒をぐびぐびと飲み始める。ここぞとばかりに私は質問を挟んだ。
「それで、そのタヌァカ様は今ドランってとこにいるの?」
「それはわからねぇ。わからねぇが……」
「決戦に向けて、人も魔族もドランに集まっている。だからおそらくタヌァカ様もそこに向ってるんじゃねーかなって思っただけだよ」
「なるほど……」
だがこの時点で私はほぼ確信していた。タヌァカという人物は間違いなくドラン大平原の戦場にいたはずだ。なにせ、その証拠が私自身だから。
「ドラン大平原って大陸のどの辺?」
「んー、大陸の東にある広い平野だよ」
「東の海に面してる?」
「よく知ってるな嬢ちゃん! 東端は海だよ」
ビンゴ!
あとは幼女に変える魔法というのがタヌァカ固有のものか、それとも一般的なものかも知っておきたい。
「ちなみに、人や魔物を幼女に変える魔法っていうのは珍しいの?」
「珍しいどころか、古今東西、どの大陸でも、どのご先祖さまでも、あんな魔法は見たことも聞いたこともないぞ!」
「まさにタヌァカ様が大魔法使いだという証拠だろうな」
ドドビンゴ!
まず間違いないだろう。
私たちを幼女にしたのはタヌァカだ!
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